凸版印刷、VR映像視聴時の酔いや疲労を軽減するヘッドマウントディスプレイ開発

凸版印刷株式会社は、VRを活用したロボットの遠隔操作用途に向け、ライトフィールド技術(※1)を用いた新しいヘッドマウントディスプレイモジュール「TransRay(トランスレイ)」と、3Dセンサーで撮影された3次元シーンをライトフィールド情報へ、リアルタイムに変換する描画エンジンを開発した。研究開発向けモジュールと描画エンジンの提供を2019年3月より開始する予定。

近年、VRやMR(Mixed Reality、複合現実)技術を活用したゲームやアトラクションなどが普及し、ヘッドマウントディスプレイも盛んに使用され、VR関連のヘッドセットの出荷台数は、2020年に3500万台、2022年には7000万台近くになると見込まれている。普及が進む一方で、従来のヘッドマウントディスプレイは、VR映像を視聴した際に、特有の酔いや疲労を引き起こし、長時間の利用ができないという問題点が指摘されている。

人間が立体を視認する際は、両眼視差による奥行き知覚と単眼のピント調節による奥行き知覚の両方を統合して認識している。従来のヘッドマウントディスプレイでは、両眼視差による奥行き知覚のみ対応し、ピント調整による奥行き知覚には対応できていないことから、両方の視覚特性の間で差異が発生し、これが酔いや疲労の大きな要因の一つになっていた。(図1)

凸版印刷、VR映像視聴時の酔いや疲労を軽減するヘッドマウントディスプレイ開発
図1 従来のヘッドマウントディスプレイの場合

今回、凸版印刷は単眼のピント調節による奥行き知覚にも対応したヘッドマウントディスプレイモジュールを開発。

ライトフィールド技術を活用し、画像表示装置と画像処理を組み合わせ、ピント調節の情報を伝達できる特殊なディスプレイを実現する。対象空間の光線情報をリアルタイムに表示することでピント調節による奥行き知覚に対応。これにより、自然な見え方に近くなり、酔いや疲労の軽減効果が期待され、長時間使用が想定される工場や医療現場での活用の可能性を広げるという。(図2)

凸版印刷、VR映像視聴時の酔いや疲労を軽減するヘッドマウントディスプレイ開発
図2 今回開発された「TransRay」の場合

さらに大阪大学大学院医学部 感覚機能形成学教室 不二門 尚教授と凸版印刷の共同研究によって、「TransRay」を使用した場合、従来のヘッドマウントディスプレイでは反応しなかったピントの調節機能が両眼視差と連動して反応し、さらに単眼においてもピントの調節反応が出るということが医学的に証明された。(※2)

凸版印刷は、ロボットや建機メーカーをはじめとした連携先を募り協業を図りながら「TransRay」の研究開発を進める。各種センサーとの連動やセンサーからの情報の可視化、AIとの連携など、より効率的なロボット遠隔操作の実現に向けた開発を行い、2020年度の実用化を目指すという。

※1 ライトフィールド技術:ライトフィールドは光線空間とも呼ばれ、3次元空間における視覚情報を、空間中を伝わる光線の情報として再現したもの。ライトフィールド技術の応用としては、撮影後に任意の焦点画像を作り出すライトフィールドカメラや裸眼立体ディスプレイなどがある。
※2 「TransRay」は大阪大学大学院医学部 感覚機能形成学教室 不二門 尚教授との共同研究において医学的な効果が証明され、それを2018年9月に開催された第54回「日本眼光学学会」で発表した。

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