東大発ベンチャーのソナス、無線通信の新技術「UNISONet」でIoTの普及を目指す ―ソナスCEO大原氏・CTO鈴木氏インタビュー

「同時送信フラッディング」はなぜ可能なのか?

ソナス取締役/CTO 鈴木誠氏(以下、鈴木): 実は、私たちが利用している「IEEE802.15.4」という無線通信の規格において、同じデータをまったくの同一時刻(約0.5マイクロ秒程度の差)に受信すると、深刻なコリジョンが起きないのです。

複数のノードから同一の電波が送られてくると、信号が強くなったり弱くなったりする「うなり」(干渉)が発生しますが、情報は壊れません。

うなりは微妙に周波数が異なる波が重ね合わさることで発生します。同じ2.4GHzといっても、実際には微妙に周波数が違いますから、複数ノードが同一データを送信すると、うなりが発生します。

IEEE802.15.4では、振幅に情報をのせておらず、周波数にのみ情報をのせているため、うなりが発生しても情報が壊れることはありません。むしろ、うなりが発生することによって、信号が弱くなり続けることがなくなるため、ロバストな通信が可能になります。

歴史を振り返ると、ポケベルも同じ原理です。今でも「複局同時送信」とGoogle検索すると、NTTドコモのページがトップにきて、複局同時送信についての簡単な解説を読むことができます(当該ページ)。

東大発ベンチャーのソナス、無線通信の新技術「UNISONet」でIoTの普及を推進 ―ソナスCEO大原氏・CTO鈴木氏インタビュー
ソナス株式会社 取締役/CTO 鈴木誠氏:博士(科学)。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程修了。10年以上に渡り無線センサネットワークの研究に従事した後、2017年4月よりソナス株式会社を共同創業し、最高技術責任者(CTO)就任。2008年〜2010年日本学術振興会特別研究員。2010年電子情報通信学会論文賞。

ポケベルの場合は、コリジョンしないように厳密に周波数を調整していたのですが、IEEE802.15.4で通信を行う場合は、そうした調整をせずとも、通信品質を損なわないという点が、新たな発見です。

ソフトウェアで同時送信フラッディングを実現することは、割り込み遅延などを考慮した実装が必要となり、簡単ではありません。この点を考慮して、最新のチップに実装していることが、私たちの強みになります。

小泉: 説明を聞いても、そんな簡単にバケツリレーできるようには思えません(笑)。

鈴木: 私も最初は眉唾だと思いました(笑)。

小泉: そうなんですか(笑)。そもそも、なぜこの研究をやろうと思われたんですか?

鈴木: 私は大学で、センサノードの時刻を合わせる技術の研究をしていたんです。「同時送信フラッディング」のコア技術そのものは、海外の研究グループが論文で発表したものです。私はその論文を読み、眉唾だなと思いながら試してみたところ、きちんと動いたんですね。

私は、数年に1件ほど出てくる人騒がせな(笑)新しい無線技術のことを、「眉唾系ワイヤレス」と呼んでいます。そうした論文のほとんどが、論文通りに動かすためには、非常に厳密な環境の調整が必要です。

ただ、「同時送信フラッディング」に関しては、何も調整を行わなくても、本当にロバストに動く。すごいなと思いました。

小泉: うーん、信じられない(笑)。

大原: 鈴木とこの技術でベンチャーを立ち上げようという話をしてからまる3年が経つのですが、私もここにきてようやくわかってきたくらいです(笑)。

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