真のプラットフォームは「危機感」と「大義」から生まれる
八子: 四家さんから「プラットフォームをオープン化する」という話をうかがった時に、ぼくは訊いたんです。
「オープンってどういうことですか。他の企業もデータを使えるようにするということですか?」と。すると、「そうだ」と四家さんはおっしゃった。いちばん大切にしていたはずのものを外に出してしまうということですから、相当な覚悟を感じました。
オープン化を決めてから、ニュートラリティを担保するために数社で合弁会社をつくるという段階までは、ものの2か月くらいですね。よほどのぶれない意志がなければ、このようなスピード感ではできません。
四家: 「わからないからこそやる意味がある」ということが、私のモチベーションでもありますからね。
八子: 多くの企業が、コマツさんと同じことをしたいと考えます。そこで重要なのが、やはり「なぜそれをするのか」です。コマツさんの場合には、建設現場で人が激減していて、その現場の生産性を上げなければ、ビジネスそのものがなくなってしまう、という危機感があります。
その危機感がない、あるいは気づいていないのであれば、コマツさんと同じしくみを目指そうとしてもなかなか難しい。そうすると、まずは危機感を発見するところから始めるという話になり、そうするとうまくいかないんです。
ですから、危機感を感じていない企業からすると、コマツさんの事例を説明しても理解できません。
四家: 「スマートコンストラクション」を通じて、現場を見てきて気づいたことがあります。それは、意外にも現場で施工している比較的規模の小さな企業の皆さんに、必要な時に必要なお金が回っていないということです。
大きな工事を受注しても燃料や材料の支払いが先に出てしまう、そんな一定期間の資金需要があるんですが、必要な時に必要なところへお金が回っていないんです。
生産活動をすることで血が回らないことには、生産性を上げようにもできません。ですから、我々が血(お金)を回すしくみをつくらないといけないんですが、そうするとこれはもう完全に建設機械メーカーの事業からは離れていくわけです。
小泉: そうですよね。
四家: コマツが主体となることはないのでしょうが、そうしたお金を回すためのプラットフォームをつくっていこうと考えています。
八子: 大義ですよね。それを定義するでもなく、つくるものでもなく、どこまでの範囲が大義なのかということを、自らがとらえ、それに対して境目なく解決に向かっていくということ。これが四家さんや大橋社長のこだわりであり、コマツさんの企業文化なのだと思います。
小泉: このたびは貴重なお話、ありがとうございました。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。