小泉: そういうあたりが、実業をしていらっしゃる追求心なのでしょうね。経営をされていて、この生産力が、経営に直結してくるので、これを追求しようとなりますよね。
八子: KPIであれば、コンサルティングやITでも設定できるのですが、「KPIの目標値を具体的にいくつに設定するのか、ということについては、ノウハウや実現的なレベル感が必要なので、現場でしか設定することができない」のです。
小泉: iSTCでは、様々な製造業種の企業から取得したデータをクラウドで蓄積しているので、一言で製造業といわず、細分化された製造業種で絞っても、データを横並びで見ることができていると思います。
そうすると、「同業者の平均からすると、このプロセスはもうちょっと出来てもよいのでは?」といったアドバイスも可能となりそうです。
木村: そういったことは今後可能になると考えています。
八子: この点について言うと、製造業全体を細分化してみないといけません。液体を中心に製造しているプロセス製造業や、精密機械を作っている部品製造業と、金属加工業では見るべきKPIの設定が異なります。
見なければいけないポイントが業界ごとに違うのですが、それが横串しに見ることができるようになると、主な指標が比較してみることができるようになるところが良いと思います。
小泉: ところで、iSTCは、旭鉄工に端を発している会社ですが、なぜ、ITサービスを内製化するところまでいけたのですか。
木村: もともとはシグナルタワーの光センサーを付けたところから始めたということが大きいです。どうせなら、これもあれもデータを取ろうとなるところですが、それは素人には難しい。
現場の状況をきちんとわかってPDCAを回せと言われても、人を張り付けるしかなかったという現実がありました。そこで、秋葉原で買ってきたモジュールを使って可視化を始めたのです。
八子: アイデアがあっても、実現せずに終わってしまう場合がほとんどですが、実際にやってみるということが素晴らしいのです。たいていの企業ではやってみようとしません。
スマートファクトリーの今後
小泉: スマートファクトリーという言葉に関して、中小工場ではどうなっていくべきだと考えられていますか?
木村: 基軸はKPIです。単位時間当たりの生産数、トータル時間、停止時間、サイクルタイム・・・それに加えて、人のデータを取りたいと思っています。歩数や脈拍から、疲れ具合、作業のやりやすさ、集中なども見ていければと思っています。
というのも、急激に機械の性能が変わるということはないと思うのです。機械を設置するのに、高くつくこともあるのですが、人に着目すれば、そこの生産性改善であれば相当いろんなことができます。
現象とデータをセットで持っていて、レポートを書いているので、特徴的なデータの形と現象が紐づけられます。そうすると、こういうデータの時は、こういう可能性があるというアラートを発報することができます。
まず、問題が起きた時の原因の予測がつきやすくなるはずです。
八子: 「シミュレーションできる環境を作りましょう」というのが、将来目指す姿だと思います。ただ、シミュレーションといっても飛躍があるので、その前段階としては、いろんなデータがたまっていって、どういうことをすれば、どういう部品の加工状態になるかが確実に見えるようになると思っています。
労働人口が減っていく流れで、今の人間ができない以上、極力自動化していくことが重要です。
小泉: 中小製造業のM&Aという話題も出てきました。設備は古く、熟練工が数名で動いているという工場が多いと思うのですが、まずは見える化、そして、自動化に進んでいくということが必要になっていくと思います。

木村: 実際にやっている例があります。西尾工場に鍛造という工程があります。1200度くらいに鉄を熱して、1.5トンくらいの型でたたく工程ですが、実は、人間が足でコントロールしています。
当然、熟練工と新人では出来が違うのですが、これを可視化しようとする取り組みを行っています。
この工程を、データと画像を使って、機械学習すると、機械でも熟練工と同じことができるようになると思うのです。
さらに、フィードバックをしていくと、どんどん賢くなります。人を育てていて、途中でやめられれば困るけれども、機械でやってくれれば良いとなれば、こういう考え方は増えると思います。
まだ、うまくいっていないのですが、技もある程度コピーができると考えています。
八子: 他社の例で言うと、コンプレッサーの異常検知をするために、振動や電流センサーで測定することがあるのですが、その異常がわかるのは、1か月先です。一方、熟練工だとコンプレッサー室に入ると即座に異常が認識できると聞いたことがあります。
この現象から、人の感性や感覚は素晴らしいといえるのですが、今後は人が減ってくるので、こういったことは、なんらかの処理で機械による対応ができる必要があるのだと思います。
小泉: 日本は生産技術が優れているといわれていますが、これを海外に持っていくと日本の技術が空洞化されてしまうという懸念があります。
しかし、機械による処理を実現してブラックボックス化すれば、輸出をしても空洞化が防げるかつ、日本でないとそういう生産技術ができないとなりますね。
木村: そうですね。
八子: ある程度の品質を担保しようとすると人がたくさん必要なのですが、そうするとコストがかかるので、コストをかけずにブラックボックスすかされたノウハウを海外に輸出すれば、まだまだ海外にも対抗できるのではないかと思います。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。