NTTデータ、NTT、消防研究センター、救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの実証実験

株式会社NTTデータ、消防庁 消防大学校 消防研究センター(以下消防研究センター)、日本電信電話株式会社(以下NTT)、は、2018年2月から約3年間で救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの共同研究を実施している。

近年、救急車の現場到着時間・病院収容時間が延伸している。

これ踏まえ、この時間短縮を目的に、救急搬送情報、およびG空間情報やモバイル空間統計(※1)等のビッグデータと、消防研究センターおよび消防機関における運用ノウハウ、NTTグループのビッグデータ分析・学習・価値化技術を活用した救急車の最適運用システムの開発をめざし研究を進めており、シミュレーションを通して有効性を確認したとのこと。

今冬以降に実証実験を予定している。

背景および目的

救急車による傷病者の搬送において、1996年から2016年の20年間に現場到着所要時間(※2)は全国平均で6.0分から8.5分へ、病院収容所要時間(※3)は全国平均で24.4分から39.3分へ延伸しており(※4)、社会的な課題となっている。

消防研究センターでは、現場到着所要時間および病院収容所要時間の短縮を目的に、ビッグデータ、G空間情報等を活用した救急車の最適運用システムの研究開発を行ってきた。

一方、NTTでは、リアルタイムに変化する気象情報、人や車の動態情報をビッグデータとして扱い、それらの分析・学習に基づいた予測技術とその予測結果の活用技術の研究開発を行ってきた。

また、NTTデータは1970年代から救急医療事業を開始し、都道府県単位に整備される救急医療情報システムのうち現在約半数の開発および運用保守を受託している。これにより、救急現場での患者の搬送先医療機関の決定に関するノウハウ等を培ってきた。

今回の共同研究では、2018年2月から2021年3月までの期間で救急需要と気象条件など関連情報との関係性を分析し、これを踏まえた、リアルタイムな救急需要予測を行い、これに合わせた救急隊の再配置等で、救急車の運用最適化を図り、救急車の搬送時間の短縮をめざす。

共同研究の概要

救急隊の基本的な業務フローにおいて、現場到着までの時間と搬送先決定に関する時間を短縮する技術と、医療機関搬送時の安全性確保の技術に関する研究開発を以下3テーマで行い、実装の可能性を検証する。

テーマ1 救急隊最適配置(協力機関:名古屋市消防局)

現場到着までの時間短縮に関しては、各種救急活動情報を解析し、傷病者発生を予測する。さらに、この予測結果に対して救急隊の情報を加えた解析を行うことで、傷病者発生確率の高い場所への救急隊の最適配置を検討し、運用効率化の可能性を検証する。

具体的には、時系列データの学習に有効なリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いて市全体の救急需要を予測し、過去の救急搬送実績に基づく地図メッシュごとの確率分布と組み合わせる事で救急需要の期待値の分布を算出し、それらの計算結果に基づいて各救急隊の最適配置を求めた。

過去の救急搬送事例のデータや天候などの環境データ、動的人口データなどを用いて予測最適化アルゴリズムを考案し、現実に即した制約条件を加味したシミュレーションにより実データと比較検証した結果、平均現場到着時間の短縮が得られた事でその有効性を確認した。

テーマ2 搬送先医療機関のリアルタイムな受入可能性を予測(協力機関:仙台市消防局)

搬送先医療機関決定に要する時間の短縮に関しては、救急隊の出動履歴や医療機関の受入履歴等の情報解析を行い、傷病者ごとに時々刻々と変化する各医療機関のリアルタイムな受入可能性を推定する。これにより、医療機関選定における運用効率化の可能性を検証する。

具体的には、受け入れ可能性が高い医療機関を推定するために、ランキング学習を用い、過去の救急搬送事例について、受入病院選定までの経緯を学習し、受入優先度の推定アルゴリズムを考案した。

過去の事例について、本アルゴリズムを用いて複数の病院の受入優先度を推定したところ、過半数の事例で最終的に受け入れた病院を、最初の選定先として示すことができたことで、その有効性を確認した。

テーマ3 安全搬送に適したルート提示(協力機関:藤沢市消防局)

医療機関搬送時の安全性確保に関しては、救急車等の走行情報や地図情報等から、道路の段差・高低差等の道路状況を推定する。これにより、救急隊に対して走行ルートおよびその道路状態の案内を行うことで、傷病者へ負担を与えないスムーズな救急車の運転や、車内での救急救命処置の安全性確保の支援が可能か検証する。

具体的には、NTTが参加している都市ビッグデータによるスマートシティの実現をめざすEUとの共同研究プロジェクトBigClouT(※5)の成果である、慶應義塾大学が測定・蓄積したごみ収集車の走行データを活用して、本共同研究の中で藤沢市内の段差データベースを作成。

そのデータベースに基づいた段差警告システムのプロトタイプを作成し、走行実験によってその警告システムの有効性を確認した。

各社の役割

消防研究センター

  • 研究統括
  • 消防現場への実用化方法の検討、実証実験消防機関とのコーディネイト、救急活動関連データの取得、基礎研究成果の提供
  • NTT

  • 救急自動車の最適運用システムに関する技術確立と、プロトタイプの構築、検証
  • NTTデータ

  • 救急自動車の最適運用システムのプロトタイプ構築支援と検証支援
  • 救急医療情報システムのノウハウ提供
  • 注釈

    ※1:モバイル空間統計 https://www.mobaku.jp(外部リンク)
    ※2:119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間
    ※3:119番通報を受けてから病院に収容するまでに要した時間
    ※4:消防庁 平成29年度版救急・救助の現況より
    ※5:BigClouT http://bigclout.eu(外部リンク)

    【関連リンク】
    NTTデータ(NTT DATA)
    日本電信電話(NTT)
    消防研究センター

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