IoTデータのマーケットプレース EverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー

IoTはセンサーで取得したデータを多く集めることが重要だが、個人や企業が取得したセンサー情報を、販売することができるサービスがある。EverySense(エブリセンス)というサービスだ。

EverySenseは、個人や企業が自分のデータの販売条件や提供先を設定することができ、センサー情報が欲しい企業などが、その条件にマッチしたデータを購入することができる。もちろん個人情報保護についてもクリアになっているサービスだ。

今回、そのEverySenseを開発したエブリセンスジャパン株式会社 代表取締役 博士(工学) 真野 浩氏に話を伺った。

 

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー
左:IoTNEWS代表 小泉耕二 / 右:エブリセンスジャパン株式会社 代表取締役 博士(工学) 真野 浩氏

 

-EverySenseについて教えてください。

僕らがつくりたいのは、情報交換のマーケットです。

まず、僕がすごくこだわっているのは、IoTの「I(インターネット)」です。今のIoTでは、例えば僕の歩数計とクラウドと僕のアプリが繋がっています。僕の体重計とクラウドとスマホが直接つながりますし、エアコンもスマホでコントロールでき便利ではあるのですが、それだけではインターネット的ではありません。

インターネットは何が革命的だったかというと、サービスとモノを分離して真ん中にインターネットという仕組みを入れることによって、エンドトゥエンドで中抜きをしたことです。

今のIoTはインターネットを活用できていなくて、さしずめ「イントラネットオブシングス」のように感じるのです。インターネットではなく、専用線でいいのではないかと思うくらいです。

もうひとつは、今のIoTはコラボレーションができません。インターネットは「作る人」と「使う人」が自由に組み合わせをできるので、色々なことができるようになりました。インターネットが革命であるとして、IoTも第四の革命と呼べるかというと、今はそこまで行っていません。

IoTプラットフォームサービスは多くありますが、それらはお客さんが持っているデバイスとクラウドと、アプリケーションを縦につなげるものです。そこで、僕らはお互いが横にも繋がって、お互いがなんでもできる場所を作りませんか?と思っています。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー
エブリセンスジャパン株式会社 代表取締役 博士(工学) 真野 浩氏

インターネットの移り変わり

ところで、インターネットは誰が勝ってきたというと、最初はYahoo!ですよね。Yahoo!はポータルサイトを作りました。ネットサーファーと呼ばれる人たちがインターネット上にある「人が作ったコンテンツ」を探して、目次を作ってたどり着けるように整えました。

ところが、情報量が増えてきたらひとつの目次はひとつのお客さんには合うけど、他には合わない。そこで、Googleはインデックスを作りました。その結果、いきなり言葉からコンテンツを検索できるようになったのです。

Yahoo!はネットサーファーの価値観、GoogleはGoogleの価値観で利用者に誰かがクリエイトしたコンテンツを提供します。もし、本当に膨大な数のモノがインターネットに繋がってきたら、次に起こることは、みんながクリエイターになることだと思います。

クリエイターになるということは、他人のコンテンツを集めるのはなく、自分のコンテンツを作るための材料を集める必要があります。材料とはまさに情報であり、データなわけで、できあがったものにリーチさせるのはなくて、ヒトの生み出す「生のデータにリーチ」できる仕組みが必要だろうと思い、僕らはそこをやろうとしています。

「生データ」の問題

しかし、それには大きな問題があります。

温度ひとつとっても、摂氏でとるのか華氏でとるのかメーカーやデバイスによって違います。

対応方法としては3つほどあります。1つは標準化です。標準化団体が多くありますが、IoTでははっきり言って無理だと思います。温度計を標準化しましょう、といっても溶鉱炉と赤ちゃんが使う体温計まで同じにするのは難しいと思います。異なるマーケットを越えて標準化は、現実的ではなありません。もし、IoTがすべてのものを繋ぐのであれば、単一の標準化はやめたほうがいいと思います。

2つ目はデータを送るときに、マークアップを使うことで、データとその表現方法を送ることです。1時間に1回少量のデータを送るのにXMLでだらだら送るのは大変です。これもやめたほうがいいです。

最後に3つ目ですが、弊社のような中立的な仲介サーバーにデータを送るのです。弊社のサービスは、データを提供するデバイスの提供者が「何を」、「どういう順番でしゃべるか」を登録しておけばよいのです。

例えば、ユーザーがあるメーカーのデバイス(温度計)を買ってきて、このデータをインターネットにあげるというときに、これは登録されているxxのデータだよということさえ送れば、仲介サーバーがそのデバイスは、「何を」、「どういう順番でしゃべるか」を知っていますから、それを利用したい人には適切な情報(例えば華氏)で返してあげることができます。

メーカーからすると今ままで作っているものを変える必要なく、ただ登録すればいいだけです。ユーザーからすると新しく買ったものも、古いものも使えます。

EverySenseの仕組み、フォームオーナーとレストランオーナーとは

 EverySenseの仕組み
EverySenseの仕組み

弊社では、データを持っている人をファームオーナーと言っています。これは、農場主がりんごやキャベツを作っているのをセンサー情報に置き換えて表現しています。「僕の温度データを使っていいよ、条件はこれです。」とファームオーナーがいいます。そして、情報を受け取る側をレストランオーナーと言っているのですが、レストランオーナーは、レストランのお客様に料理というサービスを提供するために、お店を作ってシェフが料理を作ります。

その時にどういう材料がいるかということで、「私は温度と振動と位置情報が欲しいのでくれる人いませんか?」レシピを作り、登録します。

レシピと条件がマッチングされて合えばよいわけです。その仕組みがEverySenseです。マッチングサイトなので、以前、どこかで出会い系IoTと書かれました(笑)

Pub/Subモデルは、UBER(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)などがやっていますが、これも同じです。我々は情報という無形のものを扱っているのでちょっとそこが違います。

避けては通れないプライバシーの問題

このときに大事なのがプライバシーです。アメリカでは「自動車の情報は誰のものだ?」という問題が持ち上がっています。個人の情報を守るための仕組みとして、僕らは情報を出す人と受け取る人には少なくとも法律的な縛りは受けてもらわないといけないので、約款があります。

例えば情報提供者には、嘘の情報で人に迷惑をかけてはいけないので、嘘はつきませんという宣言をしてもらいます。情報を使う方もここで得た情報を目的外に使いません、反社会的行為には使いません、ということを約束してもらっています。どちらも約束を破ったら裁判所へ訴えます、という内容も入っています。これらは最低限、法治国家である以上やらなければいけないことです。

弊社はアメリカのFTC(Federal Trade Commission)のレポートで出ているFIPS(Federal Information Processing Standardization)というセキュリティ要件に従い、情報管理の徹底を守っています。

弊社は徹底して個人情報を保護する、保護するだけでは意味がなくて、個人が自分の情報をコントロールできることが大事なのです。「私の体重をこの会社は見てもいいけど、この会社は嫌だ」、というように。

もうひとつ大事なことは、今の個人情報の扱いは、集めた人が仮に儲かったとしたときにおすそ分けがされません。それは嫌なので、僕らはこういう条件で使わせてくれたらプロフィットが出るはずだから、分け前はお支払いします、という条件でやってもらおうと思っています。

弊社は徹底してニュートラルなので、弊社が自らデータを買うことはありません。あくまでもマッチングだけです。つまり、弊社の中にストレージを持ちません。それで、世界で最初のストレージを持たないクラウドサービスになると思っています。

次に、例えば女性の体重の上限と歩数計のデータを1日1回ください、となったときに、拒否をする方もいると思います。一方で、名前を出さないのだったらいい、という人もいると思います。

例えば匿名と実名公開で値段が違うという条件があってもよいと思います。ですから、弊社が情報の値段を決めません。東証が自ら株を買って売らないのと同じです。

弊社のビジネスモデルは、レシピを書いて情報を集めて取材をする人が、弊社と契約をします。要するにコルクボードに売ります、買いますというチラシを張る時にピンをさしたら1回いくら、売れるか売れないかはその人の書き方によるので弊社は、情報量には課金しません。

また、この対価の支払いの時に、情報を渡す人、もらう人同士が個人情報の交換をしなくていいように、弊社のポイントを使うことができます。アプリは無料で提供し、ハードウェアはひとつのリファレンスとしてEveryStampというものを提供しています。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー
EveryStamp

 

企業がEveryStampを購入して、利用者へ販売してもいいですし、無料で提供しても問題ありません。また、体重計や歩数計等のメーカーはモノを売るわけですが、EverySense対応していると、自分の体重を見られるだけではなく、おこづかいが稼げますよというセールスもできますので、体重計の価値もあがります。

エブリポストというスマホのアプリで、自分のスマホが持つセンサーのオンオフや、自分のに関するプロフィールの公開情報範囲等を設定すれば、それにマッチした情報を欲しい人からのリクエストが届きます。そのリクエストを、自らが承認するとで、コントールされた情報の受け渡しが可能になります。

 

-去年のインターロップ時のEveryStampはモックだったのでしょうか。若干変更されていますね、蓋が開いている方がセンシングしやすいのでしょうか。

インターロップの時はワーキングサンプルの状態でした。僕は現在のモデルは、国立競技場モデルと呼んでいるのですが、温度がこもってしまうので、オープンエア―にしました。中に電池が入っていて、Wi-Fiで通信をします。

アプリではちょうど今僕の家に置いてある今朝の照度が一気にあがっていて、気温が10℃くらいという表示が出ています。

ただこれは僕から言わせると、IoTではなくイントラネットです。問題はこの情報をシェアできるかどうかです。

日本で100種類以上のセンサーを、100種類以上の地域や組織を超えて、100種類以上のユースケーススタディを作ろうということで、PIOT(Prugfesta for IoT)というプロジェクトを企業や国に提案し、実施する準備を進めています。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー
EveryStampは取り外しが可能でモジュール化されている

 


-なぜこういうフレームワークをはじめたのでしょうか。

僕自身はもともとテクノロジー分野にいて、最初のWi-Fiのアクセスポイントを作ったり、ホットスポットサービスなど色々なことをやったのですが、バズワードが嫌いでみんながやっていることはやりたくないのです。

でも今回は歳も取ったし全部のバズワードを集めてみようと思って、ビッグデータ、IoT、クラウド、SDN、など集めてみたら「なんかおかしくない?」と。なぜなら、インターネットがないのです。じゃあそれをやろうか、ということではじめました。

インターネット的にやるにはどうしたらいいかという事を、考えて、考えて、考えていったとき、最初に決めたのは「やってはいけないこと」です。何をやったらインターネットではないかというと、僕らがデータを買って売ること、いわゆる中抜きをすることです。いつでも中立でなければいけないということで、EverySenseにいきつきました。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-Googleがやっていることに近いなと思いました。Googleは特に自社で何かをやるわけではなく、プラット―フォーマ―としてやっています。

Googleはデータを保持しています。だから現在はすでに情報所有経済はできあがっているのです。そこで、次は情報流通経済が成り立つだろうと思っています。だから、EverySenseの情報流通を使って、Googleが情報を蓄積してもよいのです。

繋がるモノが天文学的に増えるのであれば、世界のGoogleといえども全ての人にリーチはできません。コンテンツを作る人は生データを集めなければいけません。Googleが拾ってきたデータは2次データです。生データにリーチする場合、それは膨大な数だから取捨選択ができる仕組みが必要ですし、そこからクリエーションされたコンテンツがGoogleに吸い上げられるのかなと思っています。

 
-情報を集める人たちからすると、情報を集まっている方がわかやりすい、という見方はないのでしょうか?

情報のユーザーにとっては、そのとおりで、クリエイターでなければ間違いなくそうです。

 
-EverySenseは情報を持たずエクスチェンジだけしていくという、一番手間がかかるノーマライズ(正規化)のところを担当されていて、すごく大変だと思います。データを蓄積していれば過去の情報にもタッチできるというメリットがあると思います。そういうメリットを捨ててまで情報の交換だけにこだわるというのはなぜですか?

そこはニュートラリティだと思います。僕らが価値に決定権を持ったら、儲かる情報しか集めたくなくなります。ちなみに、過去のデータも弊社で集めることが可能です。蓄積するかどうかはユーザーが決めればよいと思います。

 
-なるほど。マーケットプレイスですね。

そうですね。しかし大きな危険性が2つあります。例えば情報そのものにお金を払う行為になりますから、売った人には所得が入ります。マイルやTポイントは景品扱いですが、これは所得そのものになりますので、いずれ課税の問題等が将来出てくるかもしれません。

僕ら自身がデータの売買をしてしまうと市場が崩れてしまいます。マウントゴックスの事件がそうだったように、ビットコインのトレーダーだと言いながら自分のところで買って売ってしまうと良くありません。僕らは自分らを律する意味でも売買をしません。

もうひとつは、僕らはデータを抽象化しているので、センサー以外からのデータでもいいのです。JSONのフォーマットを登録してもらえばいいだけです。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー

 
-為替のデータなどでもいいわけですよね。

情報そのものを価値化するというのは、これまで散々言われながらなかなかできませんでした。メタな情報を価値化していきたいと思っています。

例えば、クリスマスイブの日に渋谷にいる20代の子は、そのあとどういう比率でどこに流れるかを調査したいとするとします。Suicaのデータが集められるとしても、タクシーに乗って移動した人や歩いて移動した人からは集められません。弊社の仕組みはSuicaでもいいし、個人のケータイからもいいのです。個々の情報ではなく、移動した人の情報が集まれば価値になります。

 
-法人利用のイメージはつくのですが、個人がEverySenseのサービスを買うことがあるのでしょうか。

個人は買わないと思います。例えば化粧品メーカーが、「顧客の睡眠パターンに合わせてオリジナルの化粧水を作ります」というサービスを展開する際に、EveryStampを配ることなどを想定しています。

もっと乱暴な言い方をすると、エブリポストというアプリは単なるアプリではありません。ユーザーがアプリを入れて情報を提供して、月末になったら企業からお金をもらうということもできます。サービス設計は企業が自由にできます。

一方アメリカでは、月数十円~数百円もらえるなどのマイクロペイメントに興味はありません。しかし、地域住人が全員でEveryStampを使ってCO2を監視したり、自分たちの街のクオリティオブライフをキープしよう、社会に貢献しよう、ということには興味がありますので、弊社はアメリカに進出する準備もしています。

 
-EveryStampのモノ自体はどのように作られているのでしょうか?

インダストリーデザインはNest Camなどをデザインしたシリコンバレーの有名なデザイン会社で作っており、製造は日本でやっています。中のファームや回路は自社でやっています。アプリはベトナムやインドでも開発しています。

 
-ワールドワイドですね、見えるところに置くモノはおしゃれな方がいいですよね。多くの人がEveryStampを持つきっかけになる施策は、何か考えられていますか。

まずはEveryStampをたくさん売るのがメインの商売ではないので、アカデミックで実験をしようとしています。これから、情報流通経済ができるかどうかチャレンジしていきます。

自分が取得したセンサーデータを販売できるサービスEverySense、エブリセンスCEO真野氏インタビュー

 
-本日はありがとうございました。

Previous

セコム、侵入したドローンを自動的に検知・追跡・異常通知する「セコム・ドローン検知システム」を発売

[第19回]2016年のスマートホームはどうなるか? CES2016総括編(1)

Next