ロジスティクスはこれから、課題は「統合」
小泉: 製造業はつながり始めたということですが、他の分野はどうでしょう。ビルのマネジメントシステムについて言えば、シュナイダー・エレクトリックが、世界中にあるビルのデータをクラウドに集めて、稼働状態や電力消費量を分析するプラットフォームを提供しています。しかもそれは、主にビルオーナーが経営インパクトを見るためのしくみのようです。日本では、そうした取り組みはあまり見られませんね。
八子: そもそも日本の場合は、ビルが統合管理されているという事例が多くはありません。ビルにある複数のアセットに対して、その稼働状況をリアルタイムに見るという段階まで進んでいません。ただ今後は、ビル全体で統合管理を行い、コストや投資のインパクトを見ていく段階に移っていくでしょう。
小泉: ロジスティクスの分野はどうでしょうか。
八子: 大和ハウスや日立物流が、今年からプラットフォームの提供を始めていますね。ロジについては、サプライチェーンや小売流通の在庫管理など、他の領域との統合をもっと考えていかなければならないですね。
小泉: 確かに、そうした構想は昔からありましたが、なかなか難しそうな印象です。でも、なぜ難しいのでしょうか。
八子: 全体の責任を担うのが誰なのか、明確に定義されていないからでしょうね。荷主なのか、ロジ会社なのか、ウェアハウス(倉庫管理)のオペレータなのか。現実的には、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)がある程度、全体最適を主導していかざるを得ないでしょう。
最近では、Eコマースのひろがりによってラストワンマイルの物流リソースが枯渇しつつあり、タイムリーにモノを届けることが難しい現状にありますから、全体最適の流れになることは必然かとは思います。日本の物流を担う方たちは、本当に切実な思いでこの課題をとらえているはずです。

小泉: なるほど。その課題意識が後押しをすることで、サプライチェーン全体を統合しようという動きがあるんですね。
八子: そういうことですね。
小泉: 日立物流などの3PL企業が互いに連携することで、夢の日本縦断物流網のようなものが実現する可能性もありますね。
八子: ええ、自動運転の時代も見据えると、製造業がプラットフォーム連携を始めたように、物流の領域についても同じ方向へむかわざるを得ないでしょう。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。