産総研・NEC等、AI活用した微化石の鑑定・分取技術を開発

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)地質調査総合センター 地質情報研究部門 海洋地質研究グループ 板木 拓也 主任研究員、日本電気株式会社(以下、NEC)、株式会社マイクロサポート、三谷商事株式会社の共同開発グループは、地層を構成する堆積物に含まれる多様な粒子の中から、非常に壊れやすく複雑な形態を持つ微化石を、AIを用いて大量に鑑定し、自動的に分取するシステムを開発した。

このシステムにより、これまで膨大な時間と労力をかけて人が行ってきた微化石の選別作業を、自動的に高速で行うことができる。微化石の鑑定による地層判定と、分取された微化石から詳細な年代を推定することで、石油探鉱などで迅速で高精度な地層解析が可能となる。

地層を解析するために有効なツールのひとつが「微化石」である。微化石は、地層中に含まれる放散虫、有孔虫や珪藻など、数マイクロメートルから数ミリメートルの大きさの生物の化石だ。しかし、微化石は複雑な形態を持つため、これまでは熟練した微化石の専門技術者が長時間かけて顕微鏡下で微化石を1つずつ手作業で鑑定しており、専門技術者でも相当な時間と労力がかかっていた。

そこで、2016年から産総研は微化石を用いた地層解析技術の開発を目指し、長年AI技術を開発してきたNEC、マイクロ・マニピュレーション技術を実用化しているマイクロサポート、顕微鏡画像の精密なイメージングを行う三谷商事と共同で、大量の微化石を種レベルで鑑定・分取できるシステムの開発に着手した。

この開発は、独立行政法人 日本学術振興会の新学術領域研究(研究領域提案型)「南大洋の古海洋変動ダイナミクス」、基盤研究(B)「珪質微化石の殻に記録された海洋環境:同位体比および極微量元素の種レベル分析」による支援を受けて行われた。

今回開発されたシステムは、顕微鏡部、マイクロ・マニピュレーター部、AI部からなる(下図)。AI部の学習アルゴリズムには、畳み込みニューラルネットワークを搭載したディープラーニングのソフトウェアが採用され、これまでの機械学習では困難であった複雑な形態の微化石を迅速、正確に鑑定することが可能になったという。

産総研・NEC等、AI活用した微化石の鑑定・分取技術を開発

従来微化石の選別作業には、専門的な鑑定技術をもつ人材の育成から始めると数年、教師データとなる画像の取得と整備に数か月、単一種の微化石1,000個体の鑑定と分取に数日を要していた。一方で、今回開発されたシステムでは、数か月で教師データとなる画像の取得とAIを用いたモデルを構築し、単一種の微化石1,000個体の鑑定・分取を3時間程度で行うことができるという。

今後は、AIの学習作業による実用的なモデルを充実させるため、より多くの種類の微化石について教師データを整備する。その後、同システムにより、実際の石油探査現場や調査・研究現場などでの地層解析作業を効率的に推し進め、その有効性の確認とともに、このシステムの普及を促進するという。

また、微小な粒子の扱いに長けているというシステムの特長を活かした社会での汎用的な活用を目指し、鉱物や火山灰などの微化石以外の粒子についても、このシステムの有用性を検証していくと発表した。

【関連リンク】
産総研(AIST)
マイクロサポート(Micro Support)
三谷商事(MITANI)

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