第1章-1節の要点②:データの収集はできている、2019年のテーマは活用
次に、データの利活用について調査した結果を紹介します(本文p.38)。住田氏によると、この「データの利活用」のテーマも、読者からの反響が大きいといいます。「国内工場で何らかのデータ収集を行っている」と回答した企業は、2016年は66.6%、2017年は67.6%でほとんど変化していません。この結果について住田氏は、次のように説明しています。
「7割弱という数字はとても高い水準だと認識しています。2015年の調査では40.6%でしたから、実は2016年に20%ほど向上しています。しかし、課題はその収集したデータを活用できていないことにあります」(住田氏)

データを活用している企業が少ないことは、調査データから歴然とわかります。たとえば、生産設備の「見える化」を実施しているかについて、2017年の調査では「実施している」が17.4%、「可能であれば実施したい」が39.4%でした。7割弱の企業がデータ収集を行っていながら、活用にはいたっていないのです。
また、データの収集と利活用を主導する部門を「経営者、経営戦略部門」と回答した企業は、29.6%(2016年)から55.1%(2017年)に増えています。この結果について住田氏は、「経営層主導のアクションが社内に与える影響が大きいことをあらためて実感する一方で、ではそのデータを具体的にどう活用してよいかわからないという実態も見えてきました。どうすれば集めたデータを効果的に活用できるのか、2019年版の白書ではさらに深堀をしていきたいと考えています」と説明しています。
今年の「JIMTOF」(日本国際工作機械見本市)では、70社の生産設備をつなぎ、稼働状況などを可視化するというデモが行われ、さらには「Field system」(ファナック)や「Edgecross」(エッジクロス)、「ADAMOS」(森精機)などのプラットフォーム連携も実現しました。生産設備がつながることがあたりまえになりつつあります。そんな潮流の中で、「データをいかに活用するか」が2019年の課題の焦点になると考えられます。
(後編はこちら)
【関連リンク】
・2018年版ものづくり白書
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。