「2019年はエッジインテリジェンス元年になる」 ―IoTNEWS主催セミナー 八子知礼講演

エッジコンピューティング元年(2017年)を振り返る

八子は以前、2017年は「エッジコンピューティング元年」だと提唱した。「エッジコンピューティング」とは、ネットワークの手前側(エッジ)にあるコンピューティングリソースでローカルに処理をするという考えだ。

八子によると、IoTという概念が提唱された頃にはすべてのデータをクラウドに上げた方が簡単に実装できるという考え方により、クラウドの集中処理にトレンドが移行した。しかし、「IoTが進むとデータ量が膨大になり、リアルタイム処理のニーズが高まる。そうするとすべてのデータをクラウド側で集中処理することはできないため、エッジ側のローカルなコンピューティング環境を併用する重要性が高まってくる」(八子)。

こうしたIoT時代のアーキテクチャの大変革が今、起きているという。

「2019年はエッジインテリジェンス元年になる」 ―IoTNEWS主催セミナー 八子知礼氏講演
IoT時代のアーキテクチャの変化を示した概念図

IoT時代の「エッジコンピューティング」に求められるのは、「エッジ側のデバイスでも情報処理をすること」(八子)だという。「エッジが何らかのインテリジェンスを持ち、データを圧縮したり暗号化したりする機能がないといけない。そうでなければ、高まるリアルタイム処理のニーズに対応できない」と八子は説明する。

では、「エッジコンピューティング」は今、どれくらい実装されているのだろうか。資料によると(出典:Business Insider July 2016)、エッジコンピューティングで実装されたIoTデバイス数は2015年の5.7億台から2018年には24.8億台に増えた。これはすべてのIoTデバイスのうち約10%の割合となる。そして、2020年には18.9%(56億台)まで増加すると予測されるという。

そして八子は、自身がプロジェクトに関わった「船舶のテレマティクス」の事例をもとに、「エッジコンピューティング」について説明した。このしくみでは、船のステアリングやエンジンの稼働状態のデータは、各設備に搭載されたマイコン(ECU)によって収集される。さらに、そこから上位のマイコン(DCM)にデータを蓄積し、データ量を圧縮・暗号化したうえで、モバイル回線の負荷をかけずにクラウドに送る。

エッジを用いずクラウドだけで運用すると、投資運用コストのうち通信コストは86%。しかし、エッジ分散型のしくみを使った場合には通信コストは36%まで縮小できるという。

一方で、エッジを使った場合には通信モジュール費用が高くなるため、コストは端末の台数や通信費用のバランスによって変わってくる。そのため、「単純にエッジコンピューティングを使えばいいというわけではなく、最適なアーキテクチャを選定していくことが重要だ」と八子は指摘する。

「2019年はエッジインテリジェンス元年になる」 ―IoTNEWS主催セミナー 八子知礼氏講演
業界別プラットフォームの実現像

以上が、八子が提唱した「エッジコンピューティング元年」の背景だ。一方、昨年は「業界別プラットフォーム元年」を提唱。「業界別プラットフォームとは、自社の強みとなる設備や機械の現場データを蓄積し、それを外部パートナーとのエコシステムに開放して新たなサービスやアプリ創出機会を提供するものだ」と説明する。

実際に、昨年は建設現場向けのプラットフォーム「LANDLOG」などが登場した。八子がCIOをつとめるウフルでも合計約10社の業界別プラットフォーム構築を支援している。

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