取得した数値データをどう見るか、そして可視化の先にあるものとは -東芝デジタルソリューションズ福本氏、コアコンセプト・テクノロジー田口氏インタビュー

可視化の先にあるもの

小泉: ところで、やっと本題なのですが、可視化の先にあるものはどういうものがありますか。

福本: モノを作っているフェーズをどうにかしようという話をしているうちは見える化、改善でよいのです。一方で、モノ売りからコト売りといわれるように、製造業がサービス化を進めるとしたら、別の取り組みが必要になります。そこにどう製造業が向かっていくかを考えなければならないのだと思います。

小泉: 製造業のサービス化とはどういうイメージですか。

福本: 製造業においては、例えばリカーリングモデルがそれにあたります。お客様がどういう使い方をしているのかを知れば、1台の大きなサイズの機械を納入すれば良いのか、複数台の小さな機械を納入すべきなのかといったことまでアドバイスができるようになるのだと思います。

田口: 中小工場の話もしたいと思います。

例えば、ヒトの行為で、汚れているとわかったらタオルでふくという行為があります。油性の汚れなら油性対応の洗剤でふくということになりますよね。これをデジタルでやろうとすると、「汚れをセンシングする、汚れが油性であると判明し、そして油性対応の洗剤でふく」というアクションになります。

こういったアクションについて、ヒトがやっていること自体無駄だと感じ、習慣化した時、自動化したり、ルール化したりするようになると思うのです。その結果、アルバイトや派遣の人でもできるようになる。その後、ようやくロボットが登場するというものだと思います。

しかし、初めのうちは、アクションを起こすための見える化となっているかが重要です。いろいろ見える化してはダメで、汚れを落としたい、というアクションにつながる見える化が重要になります。
デジタル化が事業部門に広まってくると、もともと社内のコストセンターであったIT部門が積極的にプロフィットセンターに関われるようになり、小さい企業でもIT部門を抱えることができるようになるのです。

小泉: アクションにつながる定義はRAMI4.0やIVRAでも定義されていない気がします。

福本: されていないと思います。そこは非常に重要なところですが、ソフトウエアのヒトだけではそこを定義することが難しいのだと思います。

田口: デジタル制御可能な機械でも、OPC-UAやMTConnectなどデータ取得については標準化が進んできていますが、入力部分の標準化が十分ではなく、標準化した制御ができない状況だとも言えます。

小泉: セルラー通信を活用して、コントローラー部分を抽象化することも可能になってきました。DMG森精機の産業機械などをみていてもデジタルでの制御も始まっています。

福本: 中国のようにノンレガシーで、いきなり最新の産業機械が入っていく国はよいと思います。一方で、日本はレガシーの設備が多く残っていくということに危機感を感じています。

田口: ベッコフ・オートメーションなど先進的な装置企業ではコントローラーにAIを乗せることができます。さらに、AIで判断してフィードバックするというようなこともできてきています。

こういうことが強さを持つようになるとアクション部分も変わってくると感じています。

現状昔の方式の企業が勝ち組となっていて、あまり変わっていないように見えるかもしれないですが、実際の状況はかなり変わってきていると思います。

小泉: HMIもIPCも見た目以外あまり変わらない産業機械になっていて、区別している理由は現状のものの交換をするために製品ラインナップを持っているに過ぎないように感じています。これまで取り付けていたものが、設置できなくなったり、理解されなくなったりということではないかとも思います。

田口: 制御盤の中に入れられないものもある、という議論ですよね。

小泉: そうすると、高度なコンピュータの中にコントローラーを抽象化させる未来は割と近いのではないかとも思います。その結果、集めたデータに基づいてアクションができるようなことも割と現実的だと感じています。

それに向けて、オムロンなども、いろんな通信方式を吸収する仕組みを実現しています。

マウスのドライバーも初めの頃みんな作っていたものですが、今はドライバーを気にする人などいません。自動プラグアンドプレイが常識です。そういうことが起きてくるのだと思います。

田口: デバイス提供者からすれば、CNCが競争領域のように見えていますが、今後はそういうものも必要なくなるのではないかと思います。

小泉: 今回のお話を通して、未来に向かってやるべきことは見えてきているなと感じました。IoTはデータを吸い上げて可視化するだけでなく、アクションに繋げないといけないということですね。

標準化に関しては、吸い上げる時は多少の独自色があるのはいいですが、アクションを指示する方式は標準化が必要ですから、まだまだやることがありそうですね。

本日はありがとうございました。

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日10-20本の新着ニュースを公開しております。 また、デジタル社会に必要な視点を養う、DIGITIDEという特集コンテンツも毎日投稿しております。

そこで、週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • DXに関する最新ニュース
  • 曜日代わりのデジタル社会の潮流を知る『DIGITIDE』
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なDX手法などDXノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録