MaaSのカギを握る、「マイクロモビリティ」の現状と課題 ―八子知礼×小泉耕二【第18回】

「普及」の条件

八子: そこから推測するに、郊外に乗り捨ててあるモノは回収して市内の中心部に持っていき、中心部に乗り捨てられているモノはバッテリー交換をするだけ、というように負担をおさえていると思いますね。

盗難の恐れもありますし、アプリでカギは管理されているものの、できるだけ市内の中心部だけ使ってほしいというのは、事業者側の本音でしょうね。

小泉: 以前、シンガポールでeスクーターが早く導入されていると聞いて行ったのですが、最初はなかなか見つかりませんでした。暫くして見つけたのですが、大した数は置いてなかったんですよね。普及していくには、ある程度の数がないといけないですよね。

八子: 1年半前に、中国の成都(中国四川省の省都)にシェアバイクの現状を見に行ったことがあります。そこでは、1,400万人の人口に対して、約14万台、つまり1%の台数がありました。これはかなりの台数です。

でも、それくらいないと、使い勝手のあるサービスにならないですよね。パリは214万人の都市ですが、そこでは1万台までいきませんが、5千台を超える台数はありました。中心部に限っていえば、「どこにでもある」という状況です。

小泉: eスクーターの場合、駐輪場でなくても道端に乗り捨ててあるモノを拾って使ってもいいわけですからね。

八子: そうです。そこらへんにあり、アプリでカギを解除するだけなので。使い勝手のよいサービスになっています。

MaaSのカギを握る、「マイクロモビリティ」の現状と課題 ―八子知礼×小泉耕二【第18回】
株式会社アールジーン代表取締役/IoTNEWS代表 小泉耕二

八子: あと、もう一つポイントは、坂の多い町では難しいということですね。今回の旅ではルクセンブルクにも行ったのですが、あそこはとても坂が多いです。eスクーターは1台もありませんでした。中国で重慶に行った時もそうでした。あそこも坂の多い町ですから。

日本の事業者はこれから、坂の多い町ではうまくいかないということを前提にして、導入しなければならないでしょうね。

小泉: これまでの議論で、マイクロモビリティを事業者が運営していくうえでの問題点や改善ポイントが見えてきました。

ここで、話の焦点をMaaSまで広げてみたいと思います。日本では、東急電鉄とJRがバスやタクシーなどあらゆるモビリティ定額制にして提供するというMaaSの実証実験を、伊豆で行っていますね。これらの取り組みを欧州の現状と比較すると、何が見えてきますか?

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