IDC Japan株式会社は、国内5G携帯電話と5G通信サービス市場予測を発表した。
5Gは、高速大容量、低遅延、多端末接続といった特性により、産業にデジタル変革をもたらす新たな通信基盤として大きな期待を集めている。ただし、5Gが広く普及するには、エリア展開が進むとともに、5G通信を利用できる通信サービスや多様な端末が普及価格で利用できる必要がある。加えて4K、8Kなど高精細映像を高速に処理できる映像機器やAIなど、5Gが可能にする新たなアプリケーションの構築に必要な製品やサービスの市場浸透も必要となる。
IDCでは、5Gに関連するこのような製品/サービスが出揃い、これらを組み合わせたサービスやソリューションを提供する準備が整うまでの初期フェーズでは、5G市場の立ち上がりはやや緩やかになるとみている。
IDCの調査によると、国内では、5G対応携帯電話は2019年第4四半期(10月~12月)に出荷が開始されるとみている。この時点ではごく少量の対応端末が出荷されるに留まるが、2023年には約870万台の出荷となると見込まれる。2023年に、5G対応携帯電話は携帯電話市場全体の28.2%を占めるが、同携帯電話の比率が50%を超えるのはIDCが予測を提供している2023年より先になる見通しであり、5G対応携帯電話の普及速度は比較的緩やかであると見込まれる。
また、5G対応携帯電話の想定一括購入価格は、当初はハイエンド価格帯での提供となり、普及が進むにつれてスケールメリットによって価格が徐々に低下すると期待される。
5G通信を利用可能な通信サービスの契約数については、当初は5G対応携帯電話の普及と連動して増加するとIDCではみている。これに、エンターテインメント施設からの高精細映像のリアルタイム配信、AIによる工場設備の予知保全ロボットや建設機械の遠隔操作といった5Gの特性を生かした産業分野でのIoT回線としての活用などが加わることで、2023年には3,316万回線で、モバイル通信サービス全体の13.5%を占めると予測した。
IDC Japan PC, 携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストである菅原 啓氏は「現在展開されているスマートフォン向けの主要なサービスは4G/LTEで十分なユーザー体験が得られることもあり、5G対応携帯電話の普及の速度は比較的緩やかであると考えられる。一方で、少なくとも当面はスマートフォンが5Gのクライアント端末の要になることは明らかである。」と語った。
続けて「したがって、今後のサービスの展開やユースケースの拡大のための基盤を着実に整えるためにも、初期に5G対応スマートフォンを採用した開発者コミュニティや先進ユーザーと積極的に連携し、今後の5G社会の離陸に備える必要があるだろう」と分析している。
また、IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野 陽子氏は「5Gの商用化によって、エンターテインメント施設からの高精細映像のリアルタイム配信、AIによる工場設備の予知保全、ロボットや建設機械の遠隔操作など、さまざまなイノベーションの加速が期待される。5Gは初期市場においてやや緩やかに推移するものの、5Gネットワークとそのアプリケーションは進化し続け、次世代通信の主流へと成長するだろう」と述べた。
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