IoTのデータ利活用を加速する、インテルのFPGAアクセラレーション・ソリューション ―インテル 山崎大輔氏インタビュー

FPGAの得意、不得意は?

小泉: データの高速処理であれば、FPGAはどんな場合でも対応できるのでしょうか。FPGAにも得手なこと、不得意なことがあるのでしょうか。

山崎: 得意、不得意はあります。ですから、使い分けが大事になります。よく比較の対象になるのがGPUです。一つわかりやすい例があります。最近、筑波大学がつくった、FPGAとGPUを両方搭載したスーパーコンピュータ「Cygnus」(※)です。

Cygnus(日本語字幕)| 筑波大学計算科学研究センター

FPGAとGPUを搭載したスーパーコンピュータ「Cygnus」(筑波大学)について

GPUは、単一の命令を高い並列性で実行できることが強みだ。しかし、実は欠点もある。プログラムの中に分岐命令があると、その命令の条件を満たす部分だけが稼働し、他は停止する。その結果、全体として計算が遅れてしまう。また、他のGPUと接続する場合には通信が発生し、演算以外の負荷が大きくなってしまう。

一方、FPGAは演算回路そのものを書きかえられるため、GPUがもつこれらの欠点を補完できる。また、弊社のFPGAチップは、高速光通信のインターフェースを持っているため、FPGA間での高速通信を効率的に行うことが可能だ。

山崎: また、IoTの用途においては、「大量のデータを短い時間で処理できる」というFPGAの強みが活きてきます。FPGAは、アプリケーションに応じて専用の回路を都度構成できますから、最小のクロック数でデータ処理が可能です。たとえば、「2×3+5」という算術計算で、GPUやCPUのような汎用のマイコンを使うと、7サイクル(クロック)かかります。FPGAは1サイクルで演算が可能です。

小泉: 人工知能の用途では、クラウドで学習させたモデルを、特定のデバイスにデプロイして使用するケースがあります。そのように、学習済みのモジュールをFPGAにデプロイして処理することも可能ですか?

山崎: 可能です。弊社のソリューションの場合、クラウドでつくった学習モデルを、先ほどの「OpenVINOTM ツールキット」でダウンロードすれば、FPGA(インテル® FPGA PAC)がそのモデル用のアクセラレーターとしてコンフィグされて、動きだします。

IoTのデータ利活用を加速する、インテルのFPGAアクセラレーション・ソリューション ―インテル 山崎大輔氏インタビュー
インテル「OpenVINOTM ツールキット」の公式ページ

小泉: 製造業では、ロボットの自動化が進んでいます。産業ロボットのような微細な動きを制御することにおいても、FPGAが使えそうですね。

山崎: そうなのです。工場のように「遅延」が安全性に直結するような用途において、FPGAはとても期待されています。もともと、組み込みチップとして使われてきてはいるのですが、今後はさらに汎用的に使っていただけると思います。

産業ロボットの制御などで活きるFPGAのメリットは、演算が終わる時間が決まっていることです。専用回路ですから、何クロックで結果が出てくるかあらかじめ決まっています。

通常のプロセッサーだと、演算をそれぞれのノードに分散して処理しますから、別の計算でそのノードが使われているような場合は、完了する時間がわかりません。「大体は10ミリ秒ですが、1000回に1回は100ミリ秒かかるかもしれない」となります。それでは、安全性が求められる用途では使えません。何が起こっても必ず10ミリ秒で出力して、結果を保証できる。これがFPGAのいいところです。

小泉: FPGAが最近あらためて期待されているのは、大量のデータの処理が求められる今の時代、FPGAが武器として使えることに多くの人が気づき出したということが大きいのでしょうか。

山崎: そういうことになります。もともと組み込みの分野の方にとってFPGAはなじみのある技術ですから、驚かないかもしれません。ただ、クラウドの分野の方たちからすると、驚きがあると思います。「新しい世代のアクセラレーターが出てきたな」と感じていただけていると思いますね。

小泉: マイクロソフトのAzureやアマゾンのAWSなど、一般的なクラウドサービスにもFPGAは使われているのでしょうか。

山崎: 使われています。パブリッククラウドの中では、さきほどご紹介したマイクロソフトに加えて、アマゾン、Alibaba CloudがFPGAを利用しています。日本ではパブリッククラウドの利用に加えて、オンプレミスで自社のサーバーに使いたい、という企業さんも多いです。

小泉: 顧客からの問い合わせも増えている状況ですか。

山崎: というよりは、今はもう実装の段階に入っています。FPGAを使ったデモを見たり、説明を聞いたりする段階は終わり、各社さんはPoCの段階へ移行しています。今は水面下でPoCがどんどん進んでいますから、これからFPGAを使った新しい製品やサービスがどんどん世の中に出ていくと思います。

小泉: そうなのですね。昨今はIoT時代と言われながら、ウェブサービスに申し込みなどが殺到してページが開けない、というような事態も起きています。こうした課題も、FPGAが解決してくれそうですね。

山崎: そうなのです。ウェブサイトで遅延があると、「FPGAがあれば…」と思うときがよくあります(笑)。FPGAをさらに世の中に広めることが重要だと考えています。

小泉: これからが楽しみです。この度はありがとうございました。

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