親子の歯磨きの時間を楽しくする「Possi」 ―京セラ・ライオン・ソニー インタビュー

仕上げ専用歯磨きに合わせた素材選び

IoTNEWS 吉田:ライオンさんのお名前が出たところで、今度は萩森さんにお話を伺います。このハブラシ部分の素材というのは、一般的なハブラシ製品と同じものを使用しているのでしょうか。

ライオン 萩森敬一氏(以下、萩森):はい、弊社で販売している通常の子ども用ハブラシ製品と同じ系統の素材を使っていますが、新たな「振動して音を伝える」という機能に合わせて、より適した素材を改めて選び、開発しました。

親子の歯磨きの時間を楽しくする「Possi」 ―京セラ・ライオン・ソニー インタビュー
ライオン・研究開発本部・イノベーションラボの萩森敬一氏

IoTNEWS 吉田:素材によって音の伝わり方が違うなどといった検証はかなり行われたのでしょうね。

ライオン 萩森:そうです。やはり音の伝わり方というのが今回の商品の最重要ポイントでしたので、検証は何度も行いました。

IoTNEWS 吉田:厚さや大きさを決める際も、苦労される点が多かったと思います。

ライオン 萩森:そうですね。商品に京セラさんの振動アクチュエータが組み込まれることが前提なので、その大きさを考慮しつつ可能な限りコンパクトにできるよう設計しました。

IoTNEWS 吉田:なるほど、大きさなども全て子どもの仕上げ歯磨き専用を前提に設計したのですね。

ライオン 萩森:はい。そもそもの商品開発の動機である親子のコミュニケーションを充実させたいという思い、そして子ども達に歯磨きを嫌がらずに楽しんでもらいたいという思いを込めて「Possi」の開発を進めました。

暮らしになじむ優しいデザインを

IoTNEWS 吉田:「Possi」のデザインについては、どのような視点から開発を進めたのでしょうか。

ソニー 宮崎雅氏(以下、宮崎):デザインは「Sony Startup Acceleration Program」による事業支援の一環として、ソニーのデザイナーにより支援させていただきました。そこでデザイナーが意識したコンセプトというのが「暮らしになじむ優しいかたち」というものです。

親子の歯磨きの時間を楽しくする「Possi」 ―京セラ・ライオン・ソニー インタビュー
ソニー・Startup Acceleration部の宮崎雅氏

特長としては、グリップの部分が卵型になっていて力が入り過ぎないようにする点がまず1つ。もう1つがテーブルに置いてもブラシ部分が床に触れないようにすることです。

IoTNEWS 吉田:それは衛生面において大事な点ですよね。

ソニー 宮崎:あとは丸みのある、生き物のようなデザインにもこだわりました。それによって子どもに親しみを持ってもらい、「Possi」を友達のような存在に思ってもらえれば嬉しいです。

実は「Possi」はデザイナーがキャラクター化しており、プロモーション映像用にぬいぐるみも製作しています。

親子の歯磨きの時間を楽しくする「Possi」 ―京セラ・ライオン・ソニー インタビュー
ぬいぐるみになった「Possi」

その他にもプロモーション用の楽曲をアーティストであるDJみそしるとMCごはんさんに作成してもらうなど、子どもに親しんでもらう工夫をしています。

アーティストについては、子どもに人気があるということ、そして「Possi」の世界観にあうという観点からお願いをしました。DJみそしるとMCごはんさんは料理にまつわる歌を歌っているのですが、提案した際に「すごく面白いですね」と言ってくださり、楽曲提供だけでなくミュージックビデオにも出演していただきました。

もちろんソニーのデザイナーだけではなく、京セラさん、ライオンさんと一緒に「このデザインで本当にブラッシングがやり易いのか」など何度も議論も重ねましたし、実際にお客様に使用していただいてご意見をいただきました。

京セラさん、ライオンさん、ソニーの3社で集まった際に最初に考えたことは、とにかく「お客様のために何ができるのか」ということです。

開発における3社の役割

IoTNEWS 吉田:そもそも3社それぞれの役割というのは決まっていたのでしょうか。

ソニー 宮崎:まず3社が協業するまでに至った背景から説明します。

昨年8月に京セラさんの方から「Sony Startup Acceleration Program」にお声がけがありました。さらにその2か月後、稲垣さんから音の鳴るハブラシというアイディアを持ってきていただき、当社においてプロジェクトがスタートしました。

その中で稲垣さんにはプロジェクトのリーダーとして開発を進めていただき、ソニーはプログラムの提供を通じてものづくりからセールスマーケティングに至るまでの総合的な事業支援を行いました。

そしてライオンさんにはオーラルケアのリーディングカンパニーとして、今年の1月よりハブラシ部分の設計に加わってもらいました。

IoTNEWS 吉田:「Sony Startup Acceleration Program」は、足りないリソースを出す、という役割なのでしょうか。

ソニー 宮崎:そうですね。コンシューマー向け商品のノウハウについてアドバイスを行うなど、足りない部分について支援した、という形です。

京セラ 稲垣:今回のプロジェクトは委託ではなく共同開発ですので、ハブラシ部分のリソースについてはライオンさんにも持っていただいて進めました。

IoTNEWS 吉田:そこがこのプロジェクトの面白いところですよね。3社でそれぞれの思いを共有することができた、良い例だと思います。

ソニー 宮崎:はい、その通りだと思います。稲垣さんの「親子の時間を大切にする」という思いにあらゆる人が共感した結果、実現できたプロジェクトでした。最初は限られた人数で進めていましたが、次第にその思いに共感して参加する人が増えていくのが嬉しかったです。

次ページは、「6か月というプロジェクトの期限

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