ロボットOSの最新動向と技術課題 ―eSOL Technology Forum 2019レポート②

ROSの概要と最新動向

ROSの概要

次にイーソル・佃氏が語ったのはROS(Robot Operating System)の概要についてだ。佃氏によれば「ROSはロボット開発でデファクトスタンダートといっていいオープンソースソフトウェアであり、四つの要素で語ることができる」という。

1つは分散処理に適したPub/Sub型の通信。「データをパブリッシュする側は、相手がどこにいて誰が受信しているかということは考えずに書き出して、受信する側はそのデータがどこからやってきたのかということを意識せずにつながる。つまり、データの受信側と送信側がゆるくつながっていることによって、分散処理を実現するためのプロトコルになる」と佃氏は説明した。

2つ目はロボット開発を効率化するツール。佃氏によれば「ロボットのセンサーや姿勢、シミュレーション環境といったものを可視化する便利なツールが揃っている」という。

3つ目は3000を超えるパッケージで「自分のロボットにオープンソースでいろいろなアルゴリズムを導入することができる」だと佃氏は語る。

そして4つ目には「世界中にユーザーがついていて、それらのユーザーが作ったエコシステムであること」を佃氏は挙げた。

2024年に出荷される商用ロボットの55%以上に、ROSのパッケージが使われる予測があることも佃氏は説明に付け加えた。

ROSの開発イメージ

続いてイーソル・佃氏はROSの開発イメージについて、下記のような図を用いて説明を始めた。

イーソル、ROSの最新動向と技術課題について講演 ―eSOL Technology Forum 2019レポート③
ROSの開発イメージ

ROSは小さな分散処理ノード(1つのプログラム単位)を集合させることで大きなシステムを実現させるそうだ。「ノード間のインターフェイスにはトピックと呼ばれるものがあり、このトピックを使ってノードを繋げるというのがROSのコンセプトになる」と佃氏は語る。

「例えば自立走行する車を作りたい時に、まず遠隔操作についてはキーボードでvelocityを送って車を動かす。その次に車両センサーや地図を与えてあげると、その情報をもとに事故位置を推定して経路計画を行う」といった具合に、ノードのインターフェイスを全てトピックと呼ばれるデータの名前と型に集約するそうだ。

「それぞれのプログラムの単位であるノードは広汎可能で、ネットワークのどこに位置しても構わない。この柔軟性がロボット開発の現場でROSが重宝される理由になる」と佃氏は開発イメージの説明を締めくくった。

ROS2の概要

ROSは研究開発に広く使われるようになったパッケージだが、いま次期バージョンのROS2開発が進んでいるという。佃氏によれば「ROS2のコンセプトは研究開発だけでなく、製品開発の適用を目指しているというところにある」そうだ。

以下は佃氏が挙げたROS2の特長である。

(1)研究室のようなハイエンドなネットワークだけでなく、実環境に近いWifiなどを使った環境でも複数ロボットに対応
(2)製品開発への適用
(3)組み込みマイコン対応
(4)リアルタイム制御
(5)クロスプラットフォーム

佃氏によれば、上記5つにおいて現時点で実現できるものは(1)と(5)だそうだ。

(1)については「ノード間の通信にOMG規格のDDSというものを使っている。従来のROSはTCPIPを使って独自の実装でPub/Sub通信を実現していたが、OMG規格になっているDDSを使うことで、QoSやセキュリティといった機能も搭載できるようになった。さらに規格化されたDDSを使うことで、商用化されたスタックを使うこともできるようになった」と佃氏は説明する。

(5)については「Linuxだけではなく、WindowsやMacにも既に標準対応している」とのこと。

佃氏は他の3点についても、現在の取り組みを紹介する。

(2)の製品開発への適用については「オープンソースを製品開発に適用するためには、コードの質の向上が必要になる。ROSのプロジェクトでは従来からCIによるコード品質の検査が行われていて、静的解析・動的解析、いろんな観点でCIによってオープンソースコードの品質を保とうとする」とした上で、「このほかにもソフトウェアの品質特性を向上させるためのワーキンググループ活動があり、ソフトウェアの質を上げることに注力している」と語った。

(3)の組み込みマイコン対応ついては、EUでOFERAというプロジェクトが立ち上がっており、そちらでmicro-ROSというマイコン向けのROSアーキテクチャが提案されているという

佃氏は「プロジェクトのメンバーが中心となってEmbedded WGというワーキンググループが開催されている。ワーキンググループでは組み込み環境でのROS2適用を目指して、組込環境でのメモリサイズ調査やパフォーマンス改善、micro-ROSを使ったデモなどを行っていく」と語った。

(4)のリアルタイム制御については「今年からリアルタイムワーキンググループというのが立ち上がり、ROS2のノード内処理、ROS2の内部実装のリアルタイム化が検討されている。各種ツールを導入し、ROS2の内部実装をメモリの使い方やスレッドのレスポン氏ビリティやリアルタイム性の検査も行う予定」とのこと。

次ページは、「技術課題へのアプローチ

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