NEC、AIを活用したリハビリ計画作成の技術実証を北原病院グループと実施

超少子高齢社会により、医療業界において財源不足や人材不足が深刻となっている。限られた財源と人材で患者の増加と多様化するニーズに対応するためには、徹底した業務効率化と医療の質の向上が求められている。これらの課題を解決するため、日本電気株式会社(以下、NEC)と北原病院グループ(以下、KNI)は、2017年から共創を開始し、「デジタルホスピタル」の実現に取り組んでいる。

「デジタルホスピタル」とは、様々なセンサーやAI技術により自動化された病院の概念であり、AIによって適切な診断や治療の提供が支援されることで、医療の質の向上と業務の効率化が可能となる。

今回、NECは、患者の入院長期化の回避による早期の社会復帰と、リハビリテーション(以下、リハビリ)のスタッフの業務負荷軽減・医療サービスの質向上に向けて、KNI協力のもと、AI技術を活用したリハビリ計画作成の技術実証を北原リハビリテーション病院で行った。

早期の在宅復帰や介護予防は、医療の財源不足や人材不足の解決だけでなく、患者のQOL向上にもつながる。早期の在宅復帰と介護予防のためには、リハビリによる短い期間で最大限に患者の機能の回復を促す取り組みが重要だ。北原リハビリテーション病院では、入院時に綿密なリハビリ計画を立て、それを実行することで、「脳血管系」での入院による平均在院日数の約3ヶ月を約1カ月間まで縮めることに成功している。

しかし、リハビリ計画作成はスタッフのスキルや経験値に依存しており、経験の浅いスタッフが作成したリハビリ計画を経験年数5年以上でスキルの高いスタッフ(以下、ベテランスタッフ)が見直すことで計画の質を担保しているため、ベテランスタッフの業務負荷が増大するという課題があった。

リハビリ計画作成業務は、「患者の回復度の予測」「リハビリ目標の設定」「リハビリ介入プログラム作成」の3つのプロセスがある。今回の技術実証では、「患者の回復度の予測」と「リハビリ目標の設定」の2つに着目し、KNIのベテランスタッフのドメインナレッジ(※1)を組み込んだNEC独自のAI技術を活用している。

  • リハビリの回復度を予測する技術(トップ画像参照)
    NEC独自のAI技術の適用により、入院3日目ごろまでの電子カルテデータから、退院までにどの程度まで回復するかを、KNIのベテランスタッフと同程度の精度で予測した(※2)。これにより、経験の浅いスタッフでもベテランと同程度の精度での回復度予測が可能となり、患者1人あたり通常約10分かかっていた回復度予測の時間を短縮できるようになった。
  • リハビリの目標候補を表示する技術
    北原リハビリテーション病院に蓄積されているリハビリ目標の事例データベースに、NEC独自のAI技術を適用することで、入院3日目ごろまでの電子カルテデータから、患者の状態に合わせたリハビリの長期および短期目標の候補の表示を行った。リハビリスタッフは、AI技術が表示したリハビリ目標の候補を参考に目標を設定でき、従来は患者1人当たり約30分かかっていたリハビリ目標設定が、経験の浅いスタッフだけでもベテランスタッフと同程度の質のリハビリ目標設定を約10分で作成できるようになった。

同技術実証により、経験の浅いスタッフが作成したリハビリ計画をベテランスタッフが見直す従来の運用では、患者一人当たり約50分要していたリハビリ計画作成業務を約20分で行うことができ、業務時間を約60%短縮できることが確認された(※3)。

※1 患者の回復度を予測する際のFIM(機能的自立評価)の項目間の関係性(例:排泄項目と移動項目に関係がある等)や、リハビリ目標設定における長期目標と短期目標の間にある関係性(例:セルフケア項目が回復すると排泄項目の評価があがる等)をドメインナレッジとして組み込んだ。
※2 電子カルテ情報を使っての患者のFIMの回復度予測について、ベテランセラピストとAIの予測誤差を比較したところ、同程度であった。ただし、セラピストは電子カルテ情報に記載されていないより詳細な情報を使って精緻に予測しているため、今回の結果はあくまでも電子カルテ情報のみでの予測精度の比較となる。
※3 従来:回復度予測:10分、リハビリ目標設定:30分(教育含む)、リハビリ介入プログラム作成等:10分、計50分。
AI技術活用:回復度予測:ほぼ0分、リハビリ目標設定:10分、リハビリ介入プログラム作成等:10分、計20分。

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