企業が規制にとらわれないようにするサンドボックス制度とは

民間企業が革新的な技術を利用したビジネスモデルを思いついて、いざ挑戦しようとすると、様々な業規制によって、イノベーションが阻害されてしまう。

なぜ、そのような業規制によってイノベーションが阻まれてしまうのだろうか。

規制改革推進会議WGが、その問いによく答えている。

「イノベーションの促進は不可避的に、従来の法が想定している社会構造、前提としている時代背景とは異なる状況(社会構造、人・モノ・金の動き)を招来させることを伴う」のである。

そのため、たとえイノベーションが立法当時の法の主旨に照らせば、規制の対象にならないものであったとしても、法文上は規制の対象と解釈されてしまうといったような事態に発展する。

イノベーションが阻害される実例「みんなのUber」

タクシー

たとえば、米ライドシェア大手のUberは一般ドライバーと乗客をマッチングさせるプラットフォームを世界63カ国、700都市以上で提供しているが、東京でUberを利用してみるとタクシーしか呼ぶことができない。

しかし、Uberは「一般ドライバー」と乗客をマッチングさせるプラットフォームだったはずだ。

なのに、なぜタクシーしか呼べないのだろうか。

実は、ライドシェア事業は道路運送法第78条に抵触する可能性があるとされている。

道路運送法第78条は、業許可を受けず、白ナンバープレートの自家用車でタクシー営業をすること、いわゆる「白タク」を取り締まる主旨で、そうした白タクは有償での運送を行えないようになっている。

事実、2015年2月にUberは産学連携機構九州と提携し、福岡市で一般ドライバーと乗客をマッチする無料のライドシェアサービス「みんなのUber」をはじめたが、同サービスは道路運送法第78条に抵触する恐れがあるとして国交省による行政指導の対象となり、開始からわずか1ヶ月で中止となった。

無料のライドシェアサービスにも関わらず、有償とはどういうことかと思うかも知れないが、実はドライバーはUberを利用して乗車したユーザーからは一銭も受け取らないかわりに、Uberから報酬を受け取っていたのである。

有償であるということはわかったが、運送事業なのかどうかというのも重要だ。

そこで、Uberは、ドライバーへの報酬はあくまでも走行データに対するものであって、運送の対価ではないと説明したのである。

しかし、自家用車で稼げるといった、収入が得られることを強調してドライバーを募っていた点とその収入がタクシーの代金と同水準であったことから、実態は運送への対価であると国交省は判断、有償かつ運送を行う事業として中止を求めた。

本件はUber側がドライバーへ報酬を支払っているケースだが、報酬を支払う主体が事業者(Uber)であろうと相乗りするユーザーであろうとドライバーへお金を払ってしまえば、それは有償の運送であるとみなされると考えられる。

そのため、Uberは「一般ドライバー」と乗客をマッチングさせるプラットフォームだったはずが、日本では、業許可を受けているタクシーしか呼ぶことができないのである。

みんなのUberの規制は正しかったのか?

「みんなのUber」に対する行政指導を鑑みて、規制改革推進会議は、世界的に急速に普及するライドシェアサービスに対する道路運送法の規制のあり方は、問われるべきだという。

なぜなら同法の白タクを禁止するという主旨は、犯罪や安全性への懸念、事故補償の十分性の確保から立法されたものであって、ICT技術が発展した昨今においては、乗車履歴の記録を透明化したり、キャッシュレス化によって料金トラブルを回避したり、ドライバー評価システムによる安全性の担保を行えるようになっているためだ。

イノベーションを促進し国際競争力を強くする制度

このようなイノベーションの促進が阻まれると、Uberの事例のように国際競争力が大きく低下するおそれがある。

そこで、2018年6月6日に生産性向上特別措置法が施行され、新技術等実証制度、いわゆる規制のサンドボックス制度が創設された。

サンドボックスというのは「砂場」を意味し、もともとはインターネットセキュリティの文脈で使われている言葉だ。

砂場とは子供が失敗を恐れずに、砂で様々なモノを作っては壊すといったイメージに由来する。

具体的には、コンピューターのなかで構築された安全な仮想環境をサンドボックスといい、たとえ、そのなかで悪意のあるソフトウェアを実行したとしても隔絶された環境なので、セキュリティに全く影響が出ないというもの。

したがって、とあるプログラムがコンピューターウィルスかどうかを確認したい時に、サンドボックス上であれば「とりあえずやってみる」ことができるのだ。

もし、とある規制が撤廃あるいは緩和されたら、自社の考えている新事業をやってみることができるのに、と考える企業も多いと思われる。

そこで、そうしたニーズに応えることが、ひいては国際競争力を強くするということから、上記サンドボックスの「とりあえずやってみる」という考え方が日本の現行規制に持ち込まれ、規制のサンドボックス制度といわれる仕組みが生まれたのである。

規制のサンドボックス制度とは

規制のサンドボックス制度の総合窓口を請け負う新技術等社会実装推進チームによれば、規制のサンドボックス制度は、簡潔に次のような使われ方を想定しているという。

  1. 目指す新事業・新技術と、規制との関係が問題となっている
  2. 期間や参加者を限定し実証を行う
  3. 実証でデータを集め、それを基に規制改革につなげる

「みんなのUber」がそうであるように、規制当局からすると、実際にビジネスがはじまってからでないと、リスクがどのくらいあるのか、それは規制すべきなのか、規制すべきでないとしたらどう規制を改革していけばよいのかがはっきりしない。

そこで、規制当局は、事業者にデータや資料の提出を求めるが、事業者も実証ができないので、提出に必要なデータを取得することができず、資料の作成も出来ない。

そうすると規制当局も事業者も硬直化してしまい、見通しが立たず、日本でそのプロジェクトが進まなくなってしまう。

このような現象を回避すべく、もし新事業・新技術が規制されてしまう恐れがあるのなら、事業者は規制当局に対し実証内容、実証の期間・場所、実証に関する規制法令などを申請することができ、当局がその申請を認定した場合、事業者は実証実験を行うことができる。

そして、規制所管大臣は実証結果をうけて、規制の見直しを検討するといった流れだ。

この規制のサンドボックスに積極的に取り組んでいる都道府県として広島県が有名だ。11月6日に開催した弊社のIoTConference2019でも広島県商工労働局の金田氏が登壇し、ひろしまサンドボックスの取り組みについて紹介いただいた。

IoTNEWSでも取り上げている記事があるので、ぜひ閲覧いただきたい。

[参考記事]

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