過疎化する地方、デジタル技術は救世主になるか

今年の4月から経済産業省と国土交通省が「スマートモビリティチャレンジ」をはじめた。

その目的は、「新しいモビリティサービスの社会実装を通じて、移動課題の解決を行うこと」と「地域活性化に挑戦する地域や企業を応援すること」の2つだ。

ところで、国土交通省によれば、地域とはその特性毎に5つに分けられるという。

  1. 大都市
  2. 大都市近郊
  3. 地方都市
  4. 地方郊外・過疎地
  5. 観光地

観光地はさておき、大きく2つのグループに分けて考えてみると、それぞれが抱えている問題の性質が異なることに気づく。

  1. 大都市および大都市近郊
  2. 地方都市および地方郊外・過疎地

大都市と大都市近郊は、過剰な移動需要をどう緩和していくか、ということがテーマだ。そのため、取り組まなければならない課題としては、交通渋滞や満員電車などが挙げられる。

後者の地方都市と地方郊外・過疎地は、少ない移動需要に対してどのように交通サービスを維持していくかということがテーマになる。そのため、取り組まなければならない課題としては、路線バスの廃止、鉄道路線(ローカル線)の廃止、もしくは廃止される交通サービスに代替する交通手段の提供などが挙げられる。

前者地域の抱える課題(交通渋滞や満員電車)が解決されるに越したことはないが、後者地域の抱える課題(路線の廃止)はその地域に暮らす人々が移動できなくなるという意味でより深刻だ。

実際、国土交通省の「地域公共交通の現状と課題」によれば、一般路線バス事業者の6割以上、地域鉄道事業者の7割以上は経常収支が赤字となっており、このまま利益を確保できない状態が続けば、廃止になる可能性のある公共交通は多い。

また、地方都市と地方郊外・過疎地を比較したときには、地方郊外・過疎地のほうが地方都市よりも地域交通の事業性悪化が深刻で、それにともなう交通空白地帯つまり公共交通のない地域も発生している。

この地方郊外・過疎地というのは国土交通省の分類になるが、このような一般的には「過疎地」と呼ばれる地域では深刻な問題がひろがっている。

例えば総務省の「平成29年度版 過疎対策の現況」によると、過疎地は全国と比較すると小児科や産婦人科医が少ない。また、2009年から2014年の5年間で無医地区は微増しているという。

このような交通の問題も医療の問題も過疎地の人口減少に由来している。実際、総務省の同調査によれば、過疎地では、転出者が転入者より多く(社会減)、かつ、死亡者が出生者より多い(自然減)という結果になっている。

一方、こうした背景を踏まえた上で、スマートモビリティチャレンジのような、過疎地の問題を解決する試みが、続々と出てきている。

そこで、本記事では過疎地の問題を解決する手立てとして、相乗り、オンライン診療、ドローン配送を取り上げる。

車に相乗りできる「notteco(ノッテコ)」

notteco

北海道の天塩町は、生活圏である稚内まで約70km離れており、かつ、直通の公共交通手段が無いという。

そこで、株式会社nottecoが運営する「notteco」が、2017年11月に同町で活用されはじめた。

このnottecoは安く移動したい人とガソリン代などの実費を節約したいドライバーをマッチングするサービスだ。

ドライバーが登録したドライブ予定を、相乗り希望者が選択することによってマッチングが完了する仕組みとなっている。

ドライバーとしては、ガソリン代や高速代などの実費を、相乗りした人数と割り勘できるメリットがある。なお、割り勘代は出発前に登録する必要があるため、料金トラブルは回避できるようだ。

北海道の天塩町では、町内高齢者(65歳以上)の約11%がnottecoを利用し、通院などの生活の足として役立ったという結果が出たようだ。

オンラインで診療を受けられる「curon(クロン)」

cron

過疎地においては、2009年から2014年の5年間で無医地区は微増しているというデータを既に述べたが、これを解決する手段としては遠隔診療がある。

そこで、株式会社MICINと株式会社ジュピターテレコムが、共同でケーブルテレビを活用してオンライン診療を行う実証実験を、2019年8月に開始すると発表した。

実験の内容は、株式会社MICINが提供するオンライン診療サービス「curon」をジュピターテレコムの顧客向けにケーブルテレビを活用して提供するというもの。

オンライン診療サービスはパソコンを用いるケースが多く、高齢者向けというには使いづらい側面があったが、ケーブルテレビを使った方法では、テレビ上で診療ができるため、そのような使い勝手の悪さが解消されると期待されている。

なおオンライン診療サービスのcuronはオンラインで予約・問診・診療・決済・医薬品の配送手続きまでを完結できる。

ドローンが荷物を配送する

ドローン

岡山県の和気(わけ)町は人口1万4400人で最寄りのスーパーまで約13kmという課題を抱えている。

また、過疎地域であるため公共交通がなく、車に乗りたくても乗れない高齢者が増加している。買い物宅配サービスもあるが、宅配頻度が週2回であるため、住民のニーズに応えきれていない。

そこでレイヤーズ・コンサルティング、ファミリーマート、NTTドコモ、コニカミノルタ、エアロジーラボ、岡山県和気町の6者がドローンで荷物を配送する実証実験を2019年10月より開始した。

今回の実証実験では、65世帯146人を対象に、火・木・金の週3日で、1日1便の運行となっている。

機体はエアロジーラボの「エアロレンジ1」を改良したドローンとなっており、5kgの荷物を積むことができ、100分以上の飛行時間を可能としている。

なお、本実験は30kmの航行距離がありながら人の目が届かない範囲で補助者を置かないという点が特徴だ。

もし収益モデルとして確立できれば、買い物難民を継続的に救うことができるのでは、と期待できる。

本格的な活用はこれから

ここ数年で登場した、新しいデジタル技術や、コンピュータの処理性能、通信性能の向上などにより、コンセプトレベルであった地方への取り組みが現実味を帯びてきている。

しかし、いくらこうった手段を講じても、人口減少問題の解決や、地域産業の発展が実現しない限り根本的な解決にはならない。

また、新しい取り組みが登場したところで、利用者側のリテラシーも向上していかないと、宝の持ち腐れになる可能性もある。

まだまだ解決しなければならない問題は多い。

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