先日、M-SOLUTIONS本社で「Pepperのビジネス活用徹底研究」が開催された。発表された内容をレポートする。
AIがロボットを進化させる AI×ロボット 最新事例
まずはソフトバンクロボティクス株式会社 首席エヴァンジェリスト 中山 五輪男氏よりPepperの国内最新導入事例の発表があった。
三井住友海上火災保険ではPepperが社内向け動画にキャスターとして出演、メイテツコムでは繁忙期のお歳暮の販売員を担当、ケアルプラスでは中国語でドラッグストア店員を担当、うきは市ではご当地Pepperが方言で観光案内、日産自動車では自動追尾技術を応用したインテリジェントクルーズ接客をレディーファーストショップにて実施している。
さらに、Microsoft AzureにPepperがとらえた顔を蓄積していく顔認証をヘッドウォータース社が開発した。1回写真を撮ると顔を覚えるため次回来社して顔を見ると「鈴木さんこんにちは、○○日ぶりです」とすぐに反応するようになるという。
コスタクルーズでは英語、イタリア語、ドイツ語でクルーズ船の客室乗務員を担当(まだ日本語以外では雑談はできない)、京浜急行電鉄では羽田国際線ターミナルで英語のできる駅係員としては配属されている(ウェルカムメッセージは韓国語、中国語、ポルトガル語など)。
ガリバーインターナショナルでは買い取りの査定時間を30分ほど大幅短縮し、ソプラでは採用面接官として求職者の本音を引き出しているそうだ。エクシングでは疲れ知らずの介護トレーナーとなり、ホテルオークラJRハウステンボスでは、ホテルマンとしてインバウンドに対応している。
イサナドットネットではQRコードをPepperに見せるだけで担当者のスマホに通知でお知らせ、エクスウェアでは大画面を使ってプレゼンテーションを実施しPepperが読み上げたりページをめくることができる。Pepperは感情認識エンジンがあるので、つまらなそうな人が多いと何か対応できるという。リクルートライフスタイルではプリンターと連動し、受付登録から待ち札発券まで実施しているなど、多くの企業がPepperを導入している事例をあげた。
IBM Watsonとの融合
ソフトバンクと日本アイ・ビー・エムは、昨年2月に日本語版の共同開発と日本市場の拡大に向けて戦略的に提携し、独占販売契約も結んでいる。それから1年たって今年、IBM Watson日本語版の正式リリースを発表した。IBM Watsonは決して安いものではないが、現在150を超える案件が発生しているという。
IBM Watsonには色々なAPIが用意されている。Natural Language Classlfier(NLC)は、日本語を理解できるAPIで、文法がでたらめでも内容を理解し、ときには行間までも理解するという。
Retriave and RankというAPIでは、人の質問に対し様々な回答を出してくれ、ランク付けも考えてくれる。
Dialogは、シナリオベースで会話を生成していく機能だ。
Speech to Text、日本語の音声データをテキストデータに変換するもの、またその逆のText to Speechもある。
これらのAPIによってファーストバージョンがリリースされたが、いずれは画像認識も含めバージョンアップしていくという。
ソフトバンクブレーン
現在、ソフトバンク社内ではIBM Watsonを活用した「ソフトバンクブレーン」を構築中だという。
ソフトバンクのコールセンターでは何千人というスタッフがいて、顧客からの電話やメールでくる質問に答えているが、コストがかかるうえに社員が辞めてしまうことも多いという課題あるため、この部分にIBM Watsonをを活用するという。みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJなどもIBM Watsonを導入する予定だ。その他ソフトバンクショップでの連携も検討しているとのこと。
そして中山氏は、一番期待されているのは法人営業だと力を込めて話した。
約6,000人いるソフトバンクの法人営業をサポートするWatsonのアプリケーションを現在開発中で、その名がソフトバンクブレーン。営業支援システムだ。
ソフトバンクの営業が取り扱う製品の数が2,500以上なので、とても人間の脳では覚えられないという。社内での手続きも煩雑で残業も多い営業をなんとかするために開発中のソフトバンクブレーンの使い方は、スマホにアプリをいれ自然言語で質問すれば、瞬時に回答の候補を提示してくれるというもの。インターネットにある情報だけではなくて自社独自の情報も分析して回答してくれる。
例えば、「ねえ、ブレーン。明日セブンイレブンにスマートフォンの提案に行くんだけど、何かいい資料ないかな?」と質問すると、セブンイレブンという会社名から判断し、日本のコンビニエンスストアの1社だと理解したうえで、過去ソフトバンクの法人営業部隊でローソンやファミリーマートに提案した資料がさっと出てくる。
それ以外にも、日本の小売業の1社であると理解し、東急ハンズ・ビックカメラなどの提案資料も出てくる。さらに、スマートフォンというキーワードから、iPhone・iPadだけではなく最近企業に人気の高いSurfaceの資料もどうですか?という形で資料が出てくるという。
非常に便利だがもちろん簡単には作れない。ソフトバンクの中には市場分析、経費精算、社員名簿、勤怠、顧客管理、SFA、企業分析データベース、業務申請データベースなど様々な既存のシステムがあり、それらとWatsonが連携しソフトバンクブレーンは作られている。これを作るためには全てのシステムがわかる人、時間とお金が必要だが、完成した日にはそれからの業務効率は計り知れないものがあると述べた(中山氏)。
これらのノウハウはいずれ社外にも提供していくそうだ。
PepperとIBM Watson
中山氏は「IBM WatsonとPepperが連携すれば店舗が変わるでしょう」という。
ホテル、レストラン、病院、学校、老人ホーム、駅、市役所など、自治体から一般企業まで幅広く面白いソリューションができあがるのでは?ということだが、すでにヤマダ電機で実証実験をはじめている。
このPepperの頭脳は完全にIBM Watsonとなっており、そのWatsonの中には国内のテレビメーカーの製品情報や様々な情報を入れておき、テレビに関する質問をされたら答えられるというPepperに仕上がっている。
Watsonは多言語解析技術を持っているため、人間が何語を話しているか理解し、日本語で話しかけられたら日本語で応対し、英語で話しかけられた英語で応対することができる。
【関連リンク】
・Pepperのビジネス活用徹底研究
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