広島県とソフトバンク、データ提供者と利用者をマッチングさせる「ひろしまサンドボックス データカタログサイト」公開

広島県は、2018年に開始したAI/IoT実証データプラットフォーム「ひろしまサンドボックス」の各実証実験プロジェクトで得たデータまたはメタデータを公開し、データ利用希望者と提供者をマッチングさせる「データカタログサイト」を2020年10月12日に開設した。

https://data.hiroshima-sandbox.jp/

産業分野を跨ったサービスやビジネスの創出には企業間のデータ共有が必要になるが、現在は国内のオープンデータは政府や自治体など公共のものが主流となっており、データの共有により企業同士がオープンイノベーション型の共創・協業を推進する機会は限られてきた。

そこで、「データカタログサイト」ではデータ利用希望者とデータ提供者のマッチングを行うほか、データの利活用に関するニーズの把握や分析を行うなど、データの流通・利活用の促進を行う予定だ。

利用者とデータ提供者をつなぐ「データカタログサイト」

広島県とソフトバンク、データ提供者と利用者をマッチングさせる「ひろしまサンドボックス データカタログサイト」公開

「ひろしまサンドボックス」は、広島県内外の企業、大学、自治体等が実証実験を行うことができる場を構築し、県外からもスタートアップ企業や専門人材を呼び込み、県内企業等とコラボレーションすることでAI/IoT等のノウハウや知見を蓄積し、広島発のソリューションを生み出す共創エコシステムの構築を目指す取り組みだ。農業、水産業、観光、交通、製造業など各産業分野のプロジェクトが進行している。

広島県とソフトバンク、データ提供者と利用者をマッチングさせる「ひろしまサンドボックス データカタログサイト」公開
「データカタログサイト」で公開されているデータ一覧

「データカタログサイト」はオープンソースソフトウェアのCKANを利用し、データの公開を行う。またデータカタログサイトのプログラム自体もオープンソースソフトウェアとして公開予定で、他の自治体にも活用してもらうことを目指しているという。

分野間のデータ連携を実現するデータ連携基盤のプロトタイプは、ひろしまサンドボックスのプロジェクトの1つである、ソフトバンク、イズミ、中国電力、広島銀行が参画している「異なるプラットフォーム間での有機的なデータ結合を行い,新しいサービス創出に取り組める,データ連携基盤の構築とその実証」において開発されたプロトタイプだ。

また、「ひろしまサンドボックスデータ連携基盤」は本年内閣府で策定さたスマートシティリファレンスアーキテクチャーホワイトペーパ(20200318版)で提唱されている都市OSに準拠した機能を持ち、用途に応じた機能拡張ができる仕組みで、今後、利用者のニーズに合わせ更新していく。

会見では広島県知事 湯﨑英彦氏、ソフトバンク株式会社 宮川潤一氏、 一般社団法人データ流通推進協議会 眞野浩氏、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 須賀千鶴氏によるトークセッションがあった。

湯﨑氏より、今回のデータカタログサイトの公開について「国内のオープンデータは公共のものが主体で企業同士がオープンイノベーション型の推進をするというのはまだ限られている。そのため、まずはひろしまサンドボックスで集めたデータ・メタデータをデータカタログサイト上で公開し、企業のそれぞれの要望に合わせたデータのマッチング、データの分析、流通など、データ利用の促進に役立てていく」とあった。

データのインターオペラビリティ(相互接続性)を保つことが重要

今回の取り組みについて、ソフトバンクの宮川氏は「私たちが目指すべきものはデジタル化された持続可能な地域経営だ。広島サンドボックスとの実証実験の中で、国が推奨しているスマートシティアーキテクチャを作り、他の都市などともデータが連携できるようにデータ連携基盤アーキテクチャを作成し、取り組みを進めている」と述べた。

また、官民一体となってオープンイノベーションをするための拠点として作られた世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの須賀氏は、各国のデータ連携の取り組みについて、「グローバルに議論をする中で、世界の各自治体が頭を悩ませているのが、どこまでインターオペラビリティ(相互運用性)を確保するかということだ。インターオペラビリティとは、さまざまなシステムや組織が連携できる状態、また連携して全体が正しく動作する状態、度合いを示している。現在センターでは調整を行いながら、その認識を広める活動をしている」と述べた。

広島県とソフトバンク、データ提供者と利用者をマッチングさせる「ひろしまサンドボックス データカタログサイト」公開
左上:ソフトバンク株式会社 宮川潤一 氏、右上:広島県知事 湯﨑英彦 氏、左下:一般社団法人データ流通推進協議会 眞野浩 氏、右下:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 須賀千鶴 氏

続いて、モデレーターを務める湯﨑氏より、今回データ連携基盤を発表したが、こういった連携基盤はソフトウェアをアップデートしていけばどんどん新しいデータも取り入れられるようになるという面がある一方で、ソフトウェアが巨大になっていってしまうという問題がある。また、ルールを裁定する際も、それぞれの主張がありうまくまとまらないという課題があるが、どう調整していったらよいのか、という議題が出された。

これに対し、DTAの眞野氏は、「これまでも様々なデータが作られてきたが、それぞれの業界・分野・エリアに閉じている、これを真ん中で誰ともコンフリクトをおこさない、流通させるための基盤が必要だ。」と述べた。

一方で、第四次産業革命日本センターの須賀氏は「現在データの世界はどんどん中央集権的に一つの大きなデータベースに全てを集約すると言う考えが減り、それぞれの基盤を持つ人がそれぞれデータを集めて管理・メンテナンスするという流れになってきている。そしてそれらのデータベースが縦横無尽につながっていくというのが唯一の解だという流れになってきている」と述べた。

また、地域によって必要なデータベースも異なるため、こういった取り組みが出来る人が出来る範囲でやっていくしかなく、最終的に別々の機関が作成したために繋がれないということだけを避けれれば、データ自体はみんなで使っていくという豊かな社会を作れるはずで、誰が作るかではなく接続性をどう保つかという論点にしていくことが重要だという。

また須賀氏は接続性についても、まず全員で同じように作ると決めることは合理的に見えて実は非合理的だと述べた。例えば、海抜3メーターの地点に道路を作ると決めたとして、都市Aでは3メーターが適地でも、都市Bではその高さに道路を作ると水没してしまうということがデータの世界でも起きる。統一するのは難しく、必ず違ったシステム、違ったルールになる。

その中で重要なのはシステムの仕様がブラックボックス化しないということだ。

ブラックボックス化せず、どういう仕様で作っているのか、どういうデータがあるのか、について周囲に共有していく、また密接に関係がある団体にはAPIの仕様などの詳細を公開していく。お互いが繋がろうと思えば繋がれる、またどちらかが投資をすればつなぐことが出来るという状態にしていくことが非常に重要なのだ。

フィンランドのMaaSの事例などを見ていても、自治体はデータをオープンにすることを各事業者に要求している。その結果、様々なプレーヤーがそのデータ活用を行い利便性の高いサービスを実現することができている。無理に誰かが取りまとめるのではなく、利害関係も無理に解決しようと考えず、公開すべきデータは公開し、使いたいデータを使いたい時に一定の条件の下、好きに使える状態にしておくことが重要なのかもしれない。

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