「ポストスマホ時代」を見すえた、LINEのAI開発の現在 ―LINE AIカンパニーCEO 砂金信一郎氏インタビュー【前編】

企業:

CLOVAで培ったAI技術を、LINEのさまざまなアプリに実装する

小泉: その砂金さんが率いるAIカンパニーでは、現在どのような活動が進行しているのでしょうか。

砂金: LINEが有するAI技術の中で代表的なものは、音声認識です。「CLOVA Desk」などのデバイスとの対話がわかりやすい例だと思いますが、現在ではLINEアプリ内にも音声検索などの機能が実装されています(「LINE Labs」というお試し機能をONにすることで利用可能)。

CLOVAがユーザーから期待される役割というのは、結局は「検索」です。ただ、求められるUXについては、Google検索のような画面を用いるタイプとは異なります。ボイスUIは、選択肢を並べる画面検索と違い、一度に一つしかユーザーに回答できないからです。

ですからボイスUIの場合は、「あなたが求めているのはこれですね」ときちんと理解したうえで回答する、パーソナライズされたUXが求められます。たとえば、天気を尋ねられた場合にも、自分が住んでいる場所に合わせた天気を教えないといけないわけです。

ただ逆に考えると、そうしたしくみさえできれば、さまざまな課題を解決できることになります。そこで、AIカンパニーの一つ目のミッションは、優れたボイスUIを社内のさまざまなアプリケーションに提供するということになります。

小泉: 音声による検索は自然なものさえできれば、いっきに広がるような気がします。

砂金: はい。とても大きな可能性があると考えています。それに関して、私がMicrosoftにいた頃と違うなと思っていることがあります。それは、日本のマーケットへの期待と、それに伴う日本語対応の重要性です。

たとえば、Windows7がリリースされたときは、日本語はMicrosoftにとって注力すべき重要な言語でした。日本にはPCメーカーがたくさんあり、市場も大きかったからです。そのため、英語版のサービスと同等のクオリティを、ほぼ同時期に日本でも使うことができました。

ところが、最近では英語版のサービスが出ても、日本語版のリリースはもう少し時間がかかる、ということが多いです。特にクラウドソリューション系です。同様に音声認識に関しても、日本語に特化してその性能を上げるということに、USの巨大IT企業はそれほど熱心ではありません。

LINEにとっては、これはむしろチャンスです。日本のみならず、台湾や韓国、タイ、インドネシアなどでは、普段使われているのは英語ではありません。こうした国々の独自の言語に合わせた音声認識や自然言語処理のモデルができれば、GoogleやAmazonにも勝てるはずです。

小泉: そうした音声認識の技術などは、スマートフォンに実装されていくことになるのでしょうか。

砂金: まずはそうです。ただ、LINEにとって重要なテーマは、「スマートフォンはいつまで利用されるだろうか」ということにあります。かつては、新しい機種のiPhone(スマートフォン)が発売されるといったら大騒ぎになったものですが、最近では正直なところ、これまでのユーザー体験の常識を覆すような進化は見られません。

では、いつかスマートフォンが使われなくなる時代が来たとき、LINEも同様に使われないサービスになってしまうのか、ということが問題です。そこで、私は思うのです。LINEにとっての課題は、「人々のコミュニケーションをより円滑にする」ということです。これは、道具としてのテクノロジーは色々変わりつつも、人間にとってはずっと変わらない普遍的な価値です。ですから、コミュニケーションの道具がスマートフォンではなくなったからといって、LINEも使われなくなるというのは違います。

そうした背景も踏まえ、ポストスマートフォンの第一弾としてリリースしたのが、CLOVAを搭載したスマートスピーカーの製品群です。そして、そのときに開発した音声認識などの技術を、さまざまな場面、用途に実装していこうというのが現在の課題です。

次ページ:人間らしく、与えられた業務をほぼ完璧に応対する「LINE AiCall」

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