SDGsへの貢献に向けた、インテルの「OpenVINO」を活用したNSWのAIサービス「CityVision」によるスマートシティへの取り組み

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日本システムウエア株式会社(以下、NSW)、インテル株式会社、千葉市動物公園の三者は、千葉市動物公園での実証実験を2020年10月に開始した。同実証実験は、千葉市動物公園内に設置したカメラの映像を基に、来園者のデータを分析し、需要予測やサービス拡充を目指すものだ。

同実証実験に関して、ここまでの取り組みとわかってきた課題についてお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

実証実験の内容と取り組み

同実証実験は、需要予測システムを確立させ、人手不足や食品ロスといったようなSDGsに貢献するという枠組みでスタートしているという。

現在は、実証実験のPhase1として、動物公園への来園者の属性データの取得や見える化を行っている段階だ。その後Phase2では、レストランやカフェにおける廃棄コスト削減と来園者の属性に応じた新メニュー開発を行ったり、属性データをマーケティングデータとして活用し、需要予測に基づいた施策や来園者数の管理を行ったりする予定だ。

Phase3では、千葉市動物公園での取り組みを千葉市内の他の飲食店やホテルにも展開し、千葉市全体のSDGsに貢献することや、千葉市内の観光を面で促進することを狙っているという。

実証実験のシステム構成図。エッジPC上には、インテルの「OpenVINO」とNSWの「CityVision」が搭載されている。
実証実験のシステム構成図。エッジPC上には、インテルの「OpenVINO」とNSWの「CityVision」が搭載されている。

同実証実験のシステムのハードウェアは、カメラとエッジPC、ゲートウェイから構成されている。入り口や駐車場にカメラを設置し、どのような人がどこから来ているのかということを把握する。レストランやカフェにもカメラを設置し、どのような人がどの時間帯に来るのかということを把握を行う。

カメラで撮影した画像はエッジPCに送られる。エッジPCには、インテルの「OpenVINO」が搭載されていて、人の属性を認識することが出来る。また、NSWの「CityVision」も搭載されており、エッジPC上で人の検出が可能だ。

※「CityVision」はNSWが提供している「ToamiVision」シリーズの1つ。画像や動画から分析を行い、歩行者や車などをカウントするサービスだ。

こうして人の属性と検出結果が得られ、その属性結果のみがゲートウェイを通じてクラウド上の「Microsoft Azure」に送られる。Azure上には、NSWの分析ツールである「ToamiAnalytics」や「ToamiVision」があり、属性データから滞在時間の検出や来場者の行動分析などを行っている。

千葉市動物公園では、個人情報保護の観点で、個人の顔情報をクラウドに上げないというポリシーがあり、人の判別ができない特徴データのみをクラウドに上げているという。

Phase1の取り組みでは、来園人数の予測を行っている。天気予報などの外部データと連携させることで、状況に応じた来園人数の予測が可能になる。また、来園した人の中でどのような属性の人がどのくらいの人数でレストランやカフェに訪れるかが分かれば、来園予測に応じた材料調達が可能になるという。

これまでは、チケットなどで来園者の人数までは把握できていたかもしれないが、属性まではわかっていなかった。同実証実験では、属性を収集しているので、精度の高い予測が可能になる。

取り組みの中での発見

NSWサービスソリューション事業本部ビジネスイノベーション事業部デジタルテクノロジー部マネージャーである小河原智氏は、ここまでの取り組みの中で新たにわかったことがあると語る。

AIのモデルをエッジPC上で使用しているが、エッジPCの性能が高くなると精度の高いAIのモデルを使用できることに気付いたそうだ。現状は、ライトなエッジPCを使用しているため、精度の低いモデルしか使用できていない。エッジPCの性能を上げることで更に属性の認識精度を高め、来園人数の予測精度を上げられるのではないかとした。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により、来園者のほぼ全員がマスクをしている。その状態に更につばの大きい帽子をかぶっている人は属性データを取得できないことがあるということがわかったという。現状は、カメラを高い位置に設置しているため、帽子のつばが顔を認識するときに邪魔になってしまう。こうした設置の課題などは、ノウハウとして別の施設での設置時に活かす予定だとした。

技術的な難しさと工夫した点

また技術的に難しかった点はどこかという質問に対し、NSW小河原氏は、「各施設に設置したエッジPCをそれぞれVPNで同じネットワークに接続する必要があるということだ」と語った。

1つの屋内オフィスに機器を設置するような場合と異なり、それぞれのエッジPCが屋外の離れた場所に設置される。元々の千葉市動物公園内のネットワークを利用すると、画像が常時通信されることになり他のシステムなどに影響が及ぶ可能性があるため、同システムでは、SIMを使用してVPNに接続しているという。

屋外にエッジPCを設置することで、セキュリティ面も考慮する必要がある。なるべく屋内に設置してセキュリティワイヤーをかけることや、万が一に備えてエッジPC内を暗号化するといった取り組みも行っているという。こうした機器設置やネットワークのノウハウは、NSWがこれまでCityVisionを提供していく中で培ったものだという。AIシステムの構築だけでは得られず、ハードからソフトまで全てをサポートしてきたNSW特有のノウハウではないかと小河原氏は語る。

撮影されたくない人への対応として、映り込み範囲をソフトウェアで限定している。
撮影されたくない人への対応として、映り込み範囲をソフトウェアで限定している。

また、カメラに撮影されたくない人への対応を工夫したという。クラウド上には人物を特定できない属性データが上げられるが、カメラを向けられている事自体を嫌がる人もいることを想定しているという。

そのようなカメラで撮影されたくない人への対応として、入り口やレストランに設置したカメラには、顔部分が写り込まないように、ソフトウェアで映り込み範囲を制限し、映り込みたくない人は特定の場所を避けて移動することで、撮影を避けることが出来る。また、駐車場に設置したカメラには、運転手や通行人が映らずナンバープレートのみが映るように制限をかけている。

インテルの「OpenVINO」を使用する利点

同実証実験のシステムには、インテルのオープンなディープラーニングによる画像認識のソフトウェア開発ツールである「OpenVINO」が採用されている。

NSW小河原氏は、OpenVINOを使用した利点として、CPUとサーバー上の物理メモリを使用することが出来るため、GPUを使用するときよりも精度の高いAIモデルを使用することが出来るとした。

インテル公共・スマートシティ事業推進部事業開発部長である新堀公章氏は、OpenVINOの特徴は3つあるとした。

1つ目は、主に画像認識系のAIモデルをハードウェアに最適化するように変換できるため、エッジPCに搭載されているライトなCPUであっても最大限に推論性能を発揮することが出来るという点だ。

2つ目は、最適化されたモデルをインテルのCPUを始めとする各種チップ(GPU、FPGA、VPUなど)上で切り替えながら実行できるため、推論処理のモビリティーを向上できる点だ。この機能により、例えば、CPUから内蔵グラフィックスへ推論処理をオフロードし、CPUの負荷を低減するなどの構成が実現できるという。

3つ目は、画像認識の学習済みのモデルを豊富に持っているという点だ。これにより、利用者が新たに学習させる必要がなく画像認識モデルを使用することが出来る。今回の実証実験で用いられている人物の属性を認識するモデルも学習済みで用意されているため、開発期間を短縮することが出来る。

学習済みモデルは随時更新され、かつ、最近は自然言語認識やスピーチ認識系のモデルも追加されているという。また、新たなモデルを使用する際も互換性があるため、大きな移行作業をせずとも使用することが出来るとした。

TRONシンポジウム「2020 TRON Symposium -TRONSHOW-」

12月9日から11日までTRONSHOWが開催される。東京ミッドタウンとオンラインの同時開催だ。
12月9日から11日までTRONSHOWが開催される。東京ミッドタウンとオンラインの同時開催だ。

NSWは、こうしたスマートシティへの取り組みを、2020年12月9日から11日まで、東京ミッドタウンとオンラインで同時開催される「TRONシンポジウム「2020 TRON Symposium -TRONSHOW-」(以下、TRONSHOW)」に出展する。このTRONSHOWにNSWは、株式会社モービルアイジャパン(以下、モービルアイ)とV-net AAEON株式会社との共同出展という形で出展する。

NSWは、前段の実証実験にも使用されている「CityVision」に関する展示を行う。人物や車両の検出を行い、密の回避を行うようなソリューションや、Smart City創造に向けてAIを活用したソリューションが展示される予定だ。

同時に、遠隔ソリューションとして世界で発売6ヶ月で20,000台以上の販売実績がある「RealWear」のデモなどを行う予定だとしている。

モービルアイは、「Mobileye 8 Connect」の展示を行う。「Mobileye 8 Connect」は、単眼のカメラユニットを車両のフロントガラスに貼り付けることで、運転中に車両や人、自転車、バイクなどを認識し、追突しそうになったら運転手に警告を出すものだ。

更に、走行中の急ブレーキ率や自転車走行量など、自動車やその周辺に関わる道路上の様々なデータを収集し、地理情報システム上にマッピングすることでスマートシティへ活用している。ハードウェアの中にはAIモジュールが搭載されている。

V-net AAEONは、「Atlas」といういうインテルのCPUとVPUを内蔵したカメラを中心とした「スマート街路灯ソリューション」を出展予定だ。街路灯に設置した「Atlas」で撮影した画像を、「OpenVINO」で推論を行いクラウドに上げることで、街全体を可視化しスマートシティを行うというソリューションだ。台湾では既に複数の地区で、この「Atlas」を使用したスマートポールの実証実験が実施されている。

 

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