キャディ、受発注プラットフォームで製造業の商流に入り込み取引コストを削減する

国内製造業の総生産額180兆円のうち、120兆円を調達や購買の部分が占めていると言われている。これだけ大きな割合を占めているにも関わらず、調達市場では100年以上大きなイノベーションが起きていないとされている。

キャディ株式会社は、加工品全般の受発注プラットフォームを提供している。調達市場における取り組みに関してお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

製造業の調達を取り巻く現状

下請けピラミット構造から強みに基づくフラット構造への変革を目指している。
下請けピラミット構造から強みに基づくフラット構造への変革を目指している。

国内の製造業は下請けピラミット構造になっていて、サプライヤーは、顧客からの要望を何でも聞き、幅広く対応するということが求められている。

金属加工だと、サプライヤー側は、8割近くが従業員数20名以下の中小零細企業だ。1社ごと強みや得意分野が異なっていて、発注を受けても自社の強みでない発注は、さらにその下請け企業に発注するという構造になっている。

下請けピラミット構造を存続させる高い取引コスト

構造改革を行うためには、取引コストを削減する必要がある。
構造改革を行うためには、取引コストを削減する必要がある。

こうした構造が存続している背景には、取引コストが高すぎるという問題がある。

キャディでは、取引コストを

  • 探索コスト
  • 交渉コスト
  • 監督コスト

という大きく3つに分けて定義している。

探索コスト

探索コストとは、最適な加工会社を見つけるためのコストだ。

国内の板金加工会社だけで約2万社が存在していて、この中で品質や納期の条件を満たす最適な加工会社を探そうとすることは、現状の調達の方法では難しい。

加工を発注しようと考えたときに、いくつかの企業に対し見積もりを取り、価格の安いところに発注を行うことで原価を削減する相見積もりという方法を行う。この相見積もりを取る場合、物理的に距離の近い企業5社くらいに見積り依頼をするのが現実的なところだろう。

キャディの創業者である加藤勇志郎氏は、創業前に大企業の調達の部分に入り込んで原価改善を行なっていた際に、加工会社100社に対し相見積もりを取るという実験を行なった。その結果、最も安い見積もりと最も高い見積もりでは、19.2倍の価格差が出たという。

つまり、いかに最適な加工会社を探せていないかということになる。相見積もりを社内の人員で行うだけでは、加工会社を見つけるのも難しいし、そこまでの工数をかけることも出来ない。

交渉コスト

交渉コストとは、加工会社との間で、品質の条件や価格のすり合わせを行うためのコストである。

既存の取引先との間では、図面に起こさなくてもやりとり出来ていたような曖昧な指示でも、新規の取引先とは明文化しなければならない。

監督コスト

監督コストとは、納品まで製品の管理をしていくためのコストだ。

通常、発注者は、加工会社に依頼してからも細かな案件のやり取りが発生し、条件通りに製品ができあがるかを監視・監督する必要がある。

金属加工部品の特注品という分野で取引コストを削減する

取引コストは、製造業だけではなく、様々な分野に存在しており、業界を問わずサービスを提供しているプレイヤーがいる。

キャディは、金属加工部品の特注品という分野において、この取引コストを削減するという挑戦を行なっている。金属加工部品は、少量多品種であるため、調達担当者1人が担当する部品種類が多く、それぞれに対し個別最適化してコストダウンをすることが難しい。

少量多品種部品の最適化をキャディが担うことで、取引コストを限りなくゼロに近づけ、業界全体を強みに基づくフラット構造に作り変えていくことを目指しているという。

発注者と全国の加工会社をつなげる受発注プラットフォーム

装置1台全てをキャディが担当できるようになったことで、企業の計画に合わせた装置の提供が可能になった。
装置1台全てをキャディが担当できるようになったことで、企業の計画に合わせた装置の提供が可能になった。

調達での取引コストが高すぎるという課題を解決するために、キャディは金属加工品の受発注プラットフォームを提供している。

発注者と加工会社の間に立ち、最適な加工会社を選定し、製造原価計算と見積を提示するということをしている。まず発注者から図面データがアップロード・送付され、キャディで独自開発している自動原価システムを通して精査、見積提示をしていくという流れになっている。図面の不具合は、ある程度の部分まではシステムで対応が可能で、案件ごと個別の事象に対しては、キャディ社内のメンバーが確認することで対応している。

発注者と加工会社のマッチングのみを行なっているわけではなく、商流の中に入り込み、納期や品質まで責任を持つ。発注者は、キャディに発注することで、あとは納品を待つだけという状態になる。

1つの図面から工程分解を行い、それぞれの加工工程ごとに、最適な加工会社に発注する。抜き曲げは会社A、塗装は会社B、組み立ては会社Cというイメージだ。どの会社がどの加工に強みを持っているかは、キャディでデータベース化されているので、それを基にシステムで最適な加工会社を選択することができる。

品質に関しては、基準書を細かく作成している。例えば、「キズ無きこと」という図面上の指示があった時に、爪がかからない程度の傷であれば良品とするのか、表面の擦り傷でも不良品と判断するのかでは、求められている品質は大きく異なる。元々仕事を受けていた顧客の基準に合わせて加工してしまうと、新しい顧客の基準とは合わずに不良品になってしまう可能性がある。

こうしたことがないように、テキストと写真がセットになった外観基準書を作成し、都度見直しをかけることで、品質不良が発生しないようにしているという。

主に取り扱っている業界は、産業機械や装置メーカーが多い。最初は部品単位での発注を受けていたが、最近では装置1台に必要な全ての部品の発注が増えてきており、後工程である組み立ても対応してほしいという案件も増えてきている。

発注企業の年間生産台数や中長期的な生産性改善といったような計画に合わせて、装置の製作を行なっていくということが出来るようになっている。

今後の可能性

キャディは今後3つの軸で業務を拡大していくとしている。
キャディは今後3つの軸で業務を拡大していくとしている。

キャディでは、3つの軸での拡大と展開を考えているという。

業界や製品の広がり

現在は、板金加工や製缶、機械加工、組み立てまでを行なっているが、今後は鋳造や射出成形というカテゴリまで網羅していきたいと考えているという。

また、業界に関しても、現状は産業機械やプラントの業界に拡大し始めたところであるが、航空宇宙や医療機械といったような、より精密さが求められるような業界にも拡大していきたいとしている。

地域・グローバルの広がり

現時点では、国内のみのサービスになっているが、今後グローバルに展開を考えているという。キャディの強みは、現状国内で取引をしている顧客とパートナーのどちらも、そのまま海外展開時のアセットになる点だとしている。

日本国内の製造業において、グローバルで価値を発揮できる加工会社は、水面下にたくさんいるとキャディでは考えているという。

その地域の慣習や、加工会社に何を伝えれば顧客が求めているものを納品できるかということを、地域ごとにカスタマイズする必要がある。しかし、キャディがこれまで行なってきた、加工会社と顧客の間に立ち、情報をそれぞれがわかるように翻訳するということは、市場がグローバルになっても変わることはない。

サービス・アプリケーションの広がり

現状は、受発注を盤石にしていくというところを取り組んでいるが、今後はその周辺領域のアプリケーションも視野に入れて取り組んでいるという。

現在、キャディ社内で現在生産管理システムを作成している。受発注を管理するために、生産管理を行う必要があるが、元々はEXCELやSlackなどの様々なシステムを連携しながら行なっていて、人手でチェックしなければならない項目があったり、図面の差し替えが頻繁に発生する際にヒューマンエラーが起きてしまったりなど、煩雑な状態になっていたという。

そうした煩雑さを、キャディの案件に特化した形の生産管理システムを作成することで解消しようとしている。実際に社内ではリリースされ、構築・改善を行なっているところだ。

こうした社内の問題を解決するために作成したサービスやアプリケーションを、顧客とパートナーのどちらにも展開していくことを考えているという。

キャディでは今後も、テクノロジーありきではなく、自ら商流に入り込みオペレーションを肩代わりすることで、その商流での問題を社内で経験し、何から解消していかなければならないかを判断し、その問題を解決していくということを行なっていくとした。