SORACOM Discovery2021二日目に行われた「社会を変えるIoT ー今こそアイディアを形にー」のセッションでは、ビジネスアイディアをIoTの技術で形にした事例として、株式会社ウェザーニューズが提供するIoT気象センサー「ソラテナ2」と、ヤマト運輸株式会社とハローライト株式会社が提供しているIoT電球を使った見守りサービス「あんしんハローライトプラン」の2つのサービスについて、それぞれのサービスが形になった経緯、ビジネスモデルや要素技術、プロジェクトの進め方、パートナーリングといった観点にスポットを当てたトークが行われた。
気象データをビジネスに活用する、ウェザーニューズ「ソラテナ2」
ウェザーニューズ「ソラテナ2」のセッションでは株式会社ウェザーニューズ 常務取締役 石橋 知博氏(トップ画像右)、モデレーターとして株式会社ソラコムから二神 敬輔氏(トップ画像左)が登壇した。
従来より、気象の観測は気象庁が設置している観測機「AMeDAS(アメダス)」によって行われている。AMeDASは日本全国に1200ヵ所、およそ20㎞四方に1機配置されており、降水量、気温、日照時間、風向風速、積雪深などを観測している。
しかし、これらの機器は高価で、また設置されている箇所も少ないことから、ウェザーニューズではより現場の気象を見える化するために多くの場所へ設置することのできる小型で安価なIoTセンサー機器、「ソラテナ2」の開発に至った。
ソラテナ2の特徴としては、1分毎に8つの要素(気温/湿度/気圧/雨量/風速/風向/照度/紫外線)を収集することができ、また小型で軽量なため簡単に設置することができるといった特徴に加え、ソラコムのIoT SIMを取り入れることで機器単体で通信まで行えるため、電源を挿すだけで観測を開始できることが挙げられる。
同社はIoTセンサーを使った気象情報サービスをWxTech(ウェザーテック)と呼称している。
WxTechには2つのレイヤーが存在する。
1つ目のレイヤーは既存の観測データ(AMeDAS、レーダー、衛星)からなる気象レイヤー、2つ目のレイヤーは売り上げや客足、電力量などのビジネスデータを持つビジネスレイヤーだ。
WxTechはこれら2つのレイヤーの過去データの相関を解析することで、気象予測から未来のビジネスデータをイメージするという構造になっている。
しかし、既存のAMeDASなどのデータでは一つの機器の観測範囲が広く、細かい範囲でのデータの取得は難しい。
そこで同社ではIoTセンサー機器「ソラテナ2」で計測したデータを加えることで、2つのレイヤーの関連性を強化し、より正確な予測を行っているという。
そしてさらに、予測結果に対して検証フィードバック、強化学習を行うことで予測のモデルを強化していく。このような一連の流れからWxTechは構成されている。
導入事例
ドローン実証実験
ドローンの実証実験では、より詳細な天候の変化、突風の情報などが必要となる。
広範囲で観測しているAMeDASのデータでは観測しきれない部分があるため、「ソラテナ2」をドローンを飛ばす実験場所まで持っていき、その場で天候情報を収集、運航管理システムと連動することで、実証実験を支援している。
スマート農業
九条ネギは強風が吹くと折れてしまうため、保護する必要がある。農家の畑の範囲を観測することで強風を予測し、ビニール保護の実施の判断に活用している。
スマートライティング
環境省の取り組みで、スマートライトに取り付けられた太陽光発電の発電量に関わる日射量予測の改善に活用している。
高速道路の保全管理
高速道路電光パネルへ「ソラテナ2」を設置することで、高速道路の保全管理に活用している。
建設現場
現場の細かい風速・風向のモニタリングに活用している。
ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで顧客のニーズに答える
元々データを扱う会社であった同社は、プロダクトの開発までは行っていなかった。しかし顧客から届いた様々な要望に対応するには、AMeDASなどの既存のデータだけでは範囲が広すぎてしまうことから正確な相関を出すことが難しかったという。そのため、既存の機器やデータに加えて、ピンポイントで必要なデータを取るためにソラテナの開発に至った。
石橋氏はソラテナ2の開発について、「ハードウェアを作るにあたってネックだったのはネットワークだった。試行錯誤をする中でソラテナのIoT SIMが登場し、それを入れるだけでネットワークにつなげることができたのが大きかった。テクノロジーが変わることによってソリューションのクオリティが上がってくる。気象の予測についてもテクノロジーが変わることによって精度が上がっていく時代だ」と述べた。
また、石橋氏はソラテナと既存の気象観測機との違いについて、ソラテナ2の大きな特徴は既存のAMeDASのデータとソラテナ2のデータをソフトウェア上で同化させることができる点だと述べた。
AMeDASとソラテナ2の過去のデータを紐づけ学習させることで、AMeDASならこの値を出すだろうという予測をソラテナ2のデータから導くことができるという。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで顧客の求めるデータを出していくことが顧客の獲得につながっている。
石橋氏は今後の展望として「グローバルに気象観測機を設置し、気象予測の精度を高めていきたい」と述べた。
後編はこちら:IoT機器でアイデアを形に、ヤマト運輸「あんしんハローライトプラン」 ーSORACOM Discovery2021レポート
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