アクセンチュア テクノロジービジョン2016 主役は”ひと”

2013年以降、「全てのビジネスがデジタルになる」と言明してから毎年デジタルの進化についてビジョンを打ち出しているアクセンチュアだが、執行役員 デジタルコンサルティング本部 統括本部長 立花良範 氏より、2016年のテクノロジービジョンが打ち出された。

冒頭立花氏は、「デジタル、人工知能と言われている中、アクセンチュアの2016年ビジョンとしては、”ピープル・ファースト(People First)”」だと述べた。

デジタライゼーションが進んだ社会では、UBERやAirbnbなどのように、全く門外漢の参入で、突然既存のビジネスが揺さぶられるということが起きている。

そんな中、アクセンチュアとしては、ヒト(消費者・労働者・エコシステムパートナー)に注目する企業がイノベーションを起こせるというのだ。

実際、2020年には世界経済の25%に対してデジタルが影響すると言われている。そんな中、アクセンチュアが3,100人超の経営者に実施した調査では、「ここ数年でテクノロジーが自社のビジネスに及ぼす影響は急速に増す」「テクノロジーが自社のビジネスに及ぼす影響が想像を超えている」と86%が回答している。

アクセンチュア テクノロジービジョン2016

People Firstの要点

立花氏によると、People Firstに関しては、以下の4つの項目が主要なテーマであるということだ。
-Intelligent Automation(インテリジェントオートメーション)
-Liquid Workforce(流動化する労働力)
-Platform Economy(プラットフォーム・エコノミー)
-Predictable Disruption(破壊を予期する)
-DIgital Trust(デジタル時代の信頼)

アクセンチュア テクノロジービジョン2016

それぞれ、どういう意味か紐解いていく。

Intelligent Automation(インテリジェント・オートメーション)

人工知能(AI)に関して、如何にに自社のビジネスに取り込むか、ということが話題となっているのは周知の事実だ。

一口に人工知能といってもいろんな解釈があるが、アクセンチュアでは、人間の「知能」や「頭脳」と言われるものにはたくさんの機能があり、コンピュータはそもそも「記憶」という部分を模してやっている。その上で、運動指示、すなわち工場のロボットのようなことが生まれ、画像認識や音声認識という分野もディープラーニングなどを活用してできることが増えてきた。

しかし、人工知能でできること、できないことを見極めながら企業に取り込むべきだという。

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今後は、「機械と人間が一緒になってサービスをすることが当たり前」となる。逆に言うと「一緒に機械と働ける、シナジーを生み出す人」をどう育てるかが大事だというのだ。

オンラインコマースの分野でのインテリジェントオートメーションの活用例としては、「商品検索」から「注文」「配達」「レビュー」というプロセスにおいて、多くの人工知能を活用したサービスが使われている。

商品検索

  • Slyce:画像による商品検索
  • Walmart:リアルタイムレコメンド

注文

  • Airbnb:需要・供給に基づく動的な価格設定
  • Paypal:不正取引検知

配達

  • DHL:商品の集荷・発送の最適化
  • Fetch Robotics:商品運搬の自動化(倉庫内)

商品レビュー

  • SearchBlox:カスタマーレビュー分析レポートの自動作成

これらの例では、高負荷な仕事はAIや機械が担当し、ヒトの仕事は高付加価値な領域にシフトしているというのだ。

R&Dの分野でもインテリジェント・オートメーションは活躍していて、例えば新薬開発の分野で開発期間を半減することも実現できるといわれているのだ。

インダストリー4.0の中核企業であるシーメンスは、製造ラインを一部自動化し、数週間自走することができる。この場合の従業員1,150人のメインの業務はコンピュータによる製造工程のモニタリングだ。
このようにAI/機械とヒトとのすみわけを行った結果、99.7%の製品で注文後24時間以内に出荷が完了している。

シオノギ製薬の場合、臨床試験解析の解析設計書の読み書き・プログラミングをAIでやっているという事例がある。
このことで、大幅なコスト削減と時間短縮が実現できただけでなく、ヒトの介在に起因するヒューマンエラーが低減されたのだ。

日本における示唆

今後、少子高齢化が進む中、日本では失われていくであろう労働力を、AIで補填することができるのだという。

例えば、工業や生産ロボット、農業、観光サービスなど日本が強みを発揮できるような分野で活用する事が考えられる。
海外のものを取り込む場合、どうしてもタイムラグが発生するので、日本発のAIが今後生まれてくる事が望まれるのだ。

Liquid Workforce(流動化する労働力)

現在、全労働力の43%が2020年までにフリーランスになると考えられている。日本でも2016年で38%が非正規雇用となっており、増加傾向になっている。

そんな中、一つの会社で成長するキャリアパスはなくなったのではないかといわれているが。実際は、激しい変化を受けるために、人をトレーニングするということがコア・ケイパビリティになっていくのだという。
また、今後はあらゆる企業で社外に労働力を求めるということも重要で、コンサルティングやシステム開発のような業務手法が一般化していくだろう。

こういった流動化した労働力をうまく使うことが新たな競争優位性の源泉となるのだという。

例として、ハリウッドでは1年で400-500人の人が集まって映画を撮るが、外部のフリーランスの人もあつまって映画をとっていく。こういうやり方が今後必要なのではないかという例が挙げられた。

エディ・ジョーンズは、ラグビー日本代表の監督だが、体重・体温などの客観データだけでなく、疲労度・睡眠の質などの主観データも活用してひとりひとりにあわせた個の強化とチーム工場を図ったことは有名だ。

人材に関しては、日本ではまだデータより勘や経験に依存している。デジタルカルチャーに、いかにマッチするか、アクティブシニアなどもどう活用していくかが社会としても重要だと言える。

Platform Economy(プラットフォームエコノミー)

世界では様々なプラットフォームエコノミーができていて、2018年には、インダストリープラットフォームが500以上になるといわれている。

「プラットフォーム」とは、まずはテクノロジーのプラットフォーム。かつてはテクノロジー企業ではでいなかったが、今の時代オープンソースやクラウドを活用すれば、安価にテクノロジーのプラットフォームを立ち上げることができるのだ。

プラットフォームとは、新しいビジネスモデルで、繋がって、ともに作り上げる。例えば、アマゾンは本屋から初めて、赤字になりながらも顧客ベースを広げ続けた。マーケットプレースを作り、自社のプラットフォームの周りにエコシステムをつくったことが大きいといわれている。

プラットフォームによるビジネスモデルの変化は、これまでの一直線につながるバリューチェーンから、巡回するプラットフォームによるエコシステムという変化となるのだ。

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アマゾンやグーグルがこのモデルで進化してきたのはご存知の通りだが、フィリップスはヘルスケアの分野でこのプラットフォームを作っている。

Salesforce, Amazon IoT, Alibaba Cloudと3つのテクノロジーパートナーと組むことで、モノづくりビジネスだけでなく、医者のケア、ホーム・ヘルスケア、パーソナル・ヘルスケアの分野のプラットフォームビジネスでも成長を加速しているというのだ。

トヨタもいろんなプレーヤーと新たなエコシステムを作ろうとしている。米国でテレマティクス自動車保険サービスをつくり、人工知能では3大学と提起する。コネクテッドカーの分野ではマイクロソフトと組んでいる。このように様々な企業と手を組みながらプラットフォームによるエコシステムを形成しようとしちえるのだ。また、本業のクルマ作りにおいても、新しいクルマ作りのプラットフォームを構築し、世界の様々な企業を巻き込んで行こうとしている。

Predictable Diruption(破壊を予測する)

アクセンチュアの調査によると、3,100人中、82%の経営者がすでに「業界の垣根」は消失しており、「新しいパラダイムの出現」と「既存企業へのインパクト」を認めている。

例えば、コネクテッドカーの分野では、カーシェア、保険、情報や娯楽とつながっているし、スマートホームの分野ではオンライン小売、家電、エネルギーが関連している。こうやって業界の垣根がどんどんなくなってきている。

デジタル・エコシステムによる急激な変化は、これまで想像もつかなかったようなパートナーとの協業を促進させているという状況だ。

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上の図であるように、プラットフォームを高める要素となる「ハードウエア」「プロセス」「データ&アナリティクス」「顧客ベース」の4つのうち、強みを持つ領域を拡大していく企業が成長しているという事実があるのだ。

実際に、コマツはGEと提携し、物流や発電に関するデータを取得することで、エコシステムを作っている。
UBERは顧客基盤を武器に、医療市場に参入し、スマートフォンからインフルエンザの予防接種の往診サービスを提供している。

Digital Trust(デジタル時代の信頼)

現代は、技術的にはあらゆるデータが取得できるので、取得したデータに対する姿勢として企業の倫理が問われる時代だと言える。
83%の経営者がが「信頼はデジタルエコのみーの基本だ」と答えている。

UBERは、もともと需給変動型の料金設定を行っていたが、ある時、ある事件が発生した時に、現場周辺から脱出するためにタクシーに殺到した人々に対して4倍の値段を提示したというのだ。
また、FBIは犯人捜査のために、アップルから個人情報を取得しようとしたが拒否された。国内でも様々なソーシャルネット上での投稿が問題になったことは記憶に新しいだろう。

これらのことから、デジタル社会においては、信頼の獲得には、強い倫理に加えて堅牢なセキュリティが必要であることがわかる。

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現在はセキュリティのかけ方が、データ中心、仕組み中心のアプローチから、ユーザ中心のアプローチへと変化してきている。技術的にはAIをつかった高度なアプローチもでてきている。

一方で、スマートフォン向け認証では、スマホ操作の「癖」を学習してスクリーンロックを解除するという、その人の肉体的な属性や癖をとらえるというやり方もでてきている。

これまでのシステムセキュリティ対策というと、問題が起きると「パッチ」を誰かが作成し、これに対応しているものに対応してきた。しかし現在では、未知の危機が起きた時、最新のやり方を「外部から学び解決策を見つける」というようなアプローチも出てきているのだという。

日本においては、倫理に関してはモラルが高い方だが、一方で石橋を叩いても「あえて渡らない」というヒトも多い。

しかし、そういう考え方は、デジタルのイノベーションにおいては利用者にとってセキュリティに対する不安が「壁」になってしまう可能性もあるので、セキュリティ対策を万全にすることが重要ではないかと考えると述べた。

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