IoT&インダストリアル・インターネット・セミナー レポート ー一般社団法人日本OMG

先日、一般社団法人日本OMGが主宰する、IoT&インダストリアル・インターネットに関するセミナーが行われた。
途中参加となったので、前半の講演を聞くことができなかったが、中盤以降の内容についてレポートする。

OMGはObject Management Groupの略で、コンピューターアプリケーションのアーキテクチャー​テクノロジーに関する標準を推進する世界的な団体で、日本OMGはその日本における拠点となる。

さらに、日本OMGはIIC(Industrial Internet Consortium)の日本支部としても活動している。

インダストリアル・インターネット・コンソーシアムといえば、GEやCiscoなどの北米を中心とした団体で、IoTの世界では知っている人も多いだろう。

GEのガスタービンなど、IoTの事例は技術的なことにとどまらず、ビジネスモデルも含めたエコシステムの構築にまで言及されることが多い。こういった世界の先進事例を取り込み、日本からも発信・支援することが日本OMGの目的だ。

また、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムの参画企業は、製造業だけでなく、ヘルスケアなど他業界も視野に入れているため、様々な情報があつまり、具体的な施策実施や仲間作りが行われているというのだ。

そんな中、日本OMGでは、下部組織として、i-3(Industrial Internet Initiative)を作り、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムへ様々なテストベット(試験用プラットフォーム)の事例を発信するという。

現状のIoTを知るということで、ウフル社のIoTイノベーションセンター所長、八子知礼氏からIoTの取り組みについてお話があった。

IoTは「生産性の改革」ではなく、「イノベーション」を目指すべき

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株式会社ウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長 兼 エグゼクティブコンサルタント 八子知礼氏

航空事業ではもともとジェットエンジンを製造し、航空機メーカーに対して販売していたGEの例をあげ、IoTのインパクトについて説明した。

具体的には、ジェットエンジンについている数百のセンサーが様々なエンジンの状態を把握し、予防保全のメンテナンスを始めているということだ。ここまでは有名な事例なので、IoTNEWSの読者にとってはおなじみかもしれない。

八子氏によると、さらなる発展性として現在「空港」に対して航空機材を最適化しているというのだ。予防保全ができるということは、必要な機材の見通しもたつからだ。そして今後は、「フライトプラン」も最適化したり「社会全体のフライトをエコ化」することもできるようになるというのだ。

これは、GEが単なる製造会社から脱却し、最終的には「ノウハウ」を売るようになっているという「新しい価値」が生まれているという事実が垣間見れる。

ウフル社の事例

またウフル社の事例としては、大規模な風車において、広大な土地で問題が起きているかどうかもわからない風車を人力で監視していたことから脱却し、デジタルなセンシングをしているという事例が紹介された。

この事例では、インテグレーションの期間が2ヶ月もかからず、現在では1,000台もの風車を管理しているというのだ。

世界に設置された1,000台もの風車に、グローバルのどの拠点のどの風車がどのくらいの摩耗状況なのかなどがリアルタイムでわかるので、監視もかなり楽になる。

他にも、ポンプ10万台について、年間87億件のビッグデータを処理し、メンテナンスのタイミングを現場の担当者の持つスマートフォンにフィードバックし、アクションも促しているという事例もあるということだ。

マーケティングの世界でも利用されるIoT

現在ウフルでは、購買動向についてソーシャルのデータを活用したテキストマイニングを元にPOSデータとも結ぶことで、「いつのタイミング」で、「どういうレスポンス」があったのか、「どういうタイミングで購買」されているのか、ということを結び付けているということだ。

ポイントは、「どの施策をやったことが、どういう結果に結びついたのかがわかる」ということだ。

今後マーケティング分野においてもIoTが活用されていくながれといえよう。

インダストリアル・インターネット・コンソーシアムとi-3の可能性

最近よく、「インダストリー4.0」という言葉を聞く人も多いのではないだろうか。2012年頃から進んでいるドイツの国策で、最近になって日本でも騒がれだしている。

製造業にインダストリー4.0の話題を持ちかけても、FA(ファクトリー・オートメーション:工場の自動化)の世界では以前からやっているのでいまさらどうしたの?という話になる。しかし、「FAの世界では、過去5年の最新技術(クラウドやモバイル、アナリティクスなど)を使いこなせていないし、海外ではこれらの最新技術を使いこなしているというのが現状だ」と八子氏は言う。

一方で、先ほど説明したインダストリアル・インターネット・コンソーシアムは、フルデジタルを活用したデータの流通といったことまでとらえたビジネスモデルまで言及しているということだ。

「今後は、事例が豊富なインダストリアル・インターネット・コンソーシアム陣営との連携が重要ではないか。イノベーションを生み出すためには、大企業も中小企業も、OTもITも混ざった状態が必要であると考える。」(八子氏)

「今年は、協創の年だ。IoTのエコシステムを考えていくことが重要だ。」としめた。

標準プラットフォームの形成とビジネス・エコシステム 横浜国立大学 安本氏

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横浜国立大学 安本氏

IoTにおけるプラットフォームのカギは「標準化」だ。技術を標準化することで、有力なマーケテイングやコスト削減ツールともなりえるのだ。(安本氏)

そういう視点でインダストリー4.0の構造を見ると、複雑すぎて簡単にどこかの企業だけでは解決することはできないものとなっているという。

インダストリアル・インターネット・コンソーシアムとインダストリー4.0は、いずれも標準化を重視し、標準プラットフォームを相互補完的に提供している。インダストリー4.0はドイツ政府を中心に取り組んでおり、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムは産業だけでなくもっと広いし、決して標準化団体ではない。

また、インダストリー4.0は製造業向けであるのに対して、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムはエネルギーや交通、ヘルスケアも含まれているという点も異なる。

プラットフォームという観点でみると、インダストリー4.0の課題は、ドイツ政府が主導してやっているので、どういうふうに技術をまとめるか、利便性が異なりまとめづらいことと、使い手の顔が見えづらい、外部非公開であるため、どういう議論がされるかがわからないという点だ。(安本氏)

こういった環境の中で、「どこまでを標準化するか?」「課題はなにか?」ということを先行しては評価していくことで先行者利得が得られるのだと述べた。

パネルディスカッション

一般社団法人 日本OMG代表理事、IIC日本代表 吉野 晃生氏
一般社団法人日本OMG 専務理事 橋本琢磨
株式会社ウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長 兼 エグゼクティブコンサルタント 八子知礼氏
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) 浜野氏

橋本氏: インダストリアル・インターネット・コンソーシアムの場では、中小・ベンチャーが早いスピードでビジネスモデルを立ち上げ、商売をすすめているということに驚いた。日本国内において、IoTを推進するコンソーシアムを経済産業省はやっているが、何をしたいのか?という点が明確ではないと思う。

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一般社団法人日本OMG 専務理事 橋本琢磨

一方で、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムでは、実際に企業間でビジネスモデルを作っていくというフェーズに入っているが、日本企業はまだ情報収集の段階だと言える。

インダストリー4.0との違いは、ビジネスイノベーションであり、新しいサービスモデルをつくることで、それがテストベットとして公開されているという点だ。

日本OMGでは、この度「日本でのテストベットを世界に発信していく」という目的でi-3(インダストリアル・インターネット・イニシアティブ)を発足した。

これまでも同業者間での集まりはあったが、同じ業種間で集まっても出てくるアイデアは出尽くしている状況だと思うので、異業種間で集まって、話し合い、ワールドワイドに発信していくことが重要だと感じた。

現在の生産現場では、生産性改善・現場改善から抜け出ていない。日本の製造業は現場改善は数十年やってきていて、経費をどれだけ下げるかというところに終始してしまっていることが課題だ。

吉野氏: 具体的な施策としてどうすればよいか?

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一般社団法人 日本OMG代表理事、IIC日本代表 吉野 晃生氏

 
八子氏: 現状の顧客の反応を見ている限り、いきなり大規模なことは求められていない。PoCから始めなければならないということを実感している。一方でPoCを目的とせず将来を見るべきだとも考えている。

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株式会社ウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長 兼 エグゼクティブコンサルタント 八子知礼氏

 
浜野氏: ここにきてIoTは技術だけの話ではなくビジネスの話だと感じている。これまでTTCは通信関係だけでやってきたが、今後はいろんな業界の方と話をしながらIoTに対応していくようなサポートが重要だと考えている。

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一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) 浜野氏

IoTは一社じゃできないし、連携が重要なのでサポートしていきたい。よく、日本の対応が遅いんじゃないの?という話もでるが、日本でも少しずつ進みだしていると感じている。

先日バルセロナで行われたMWC(モバイル・ワールド・コングレス)にいって感じたこととしては、スタートアップのエネルギーがすごかったということだ。インターネットにつながるということで、スタートアップのビジネスが世界の市場に打って出られるというところが期待されていると感じた。

特に中小企業は仲間づくりが重要だと感じた。

Q&A

ー「超スマート社会」という言葉があるが、産官学での取り組みをどのように進めていくつもりかがわかれば知りたい

八子氏: 現状では、「学」というところまで取り込もうと思っていたわけではない。現状の課題はOT側のことを理解していない、理解しようとしていない、ということだと考えている。そこで、今後は「学」の手を借りて歩み寄りをしていかないといけないと考えている。

吉野氏: 経済産業省がIoT推進コンソーシアムを作った際もインダストリアル・インターネット・コンソーシアムの情報を渡したのだが、今回の流れを10年ー20年というレンジで構想を持っていない、ということが課題だと考えている。また、インダストリー4.0もインダストリアル・インターネット・コンソーシアムもリファレンスアーキテクチャのベンチマークから入っているが、日本にはそういうアーキテクチャは存在しない。

では、アーキテクチャレイヤー図を基に、自分たちの持っているプロジェクトの中でアーキテクチャフレームワークがないのであれば、なぞってもよいのではないかという提言をしているところだ。

 
ー農業分野で取り組んできたことや、見解を聞かせてほしい

橋本氏: インダストリアル・インターネット・コンソーシアムのオフィシャルになっているテストベットの中においては日本と同じ発想に基づくものが多い。例えば、ドローンを飛ばして外注を駆除する、水耕栽培で水門を自動で開けるなどは日本と同じく出ている。しかし、先方ではアイデアで終わらず、大きなビジネスモデルとして成立させワールドワイドで展開するという話になっている。

また、モデルをつくっただけでなく、出口戦略(儲ける戦略)もできている。日本では、とある大手がビルを改造して水耕栽培で野菜を作った。野菜はできたが、売り先がないという状態だ。

こういう例をみても、案はあるが売り先を見いだせていないという状態だ。そこで、i-3では出口を作っていきたい。

吉野氏: 農業分野ではオランダとデンマークが世界的には成功している。地方公共団体との連携をしてディスカッションをしたいと申し入れられているので、県や政令都市レベルでのディスカッションはやっていきたいと思っている。

農業だけでなく、製造業も含めた複合体で行う必要があると考えている。

 
ーヨーロッパでは輸出を前提として農業をやってきたということがあると思う。日本においては、農業という産業自体をかえていかないとIoTの活用ができないと思うのだが、出口が具体的にどういうことあるかを知りたい。

橋本氏: 農業においての課題は、高齢化と人材不足だ。今後はそこそこの資本をもった企業がつくった高品質な作物を食べ、多くのヒトは輸入作物を食べることになる気がする。ヨーロッパではかなりの大規模で行われており、一方で日本では手作業も多い。

IoTが入ることで、雑草を自動で刈り取るような仕組みや、虫の発生をある程度予測し事前に対策を打つ、そのことで生産性が担保されもうかる農業が実現できる。

現状の日本の農業では、もうからないという現実がある。そこで、i-3ではもうかる仕組みを作っていきたい。

 
ー農業から離れて製造の観点であるか?

八子氏: 同じような業界の方があつまって、スマートタウンが実現できないかといったことがある。
小工場をあつめて、集合体として生産することができないかといった共通インフラを作りクラウドでできないかというアイデアがあった。

単純なものは実現しやすい一方効果も小さいのかなと思う。複雑なことを共通基盤で行う方が大きいのではないか。インフラを割りカンしようということをやれば実現したい。

 
ーIoTというものが経営にどういう価値を生み出すのか?という点についての指針があるか?

橋本氏: 企業の社員、今までは事業部、課にわかれてミッションをやっていた。これからはそれぞれが経営者目線をもってあたることが重要だ。

いわれたことはできる。一方で、どうするのだという発想は思い浮かばない。社会にどう貢献するかということが思いつかない。

IoTの技術を使って何ができるのだ?という点について、それぞれの立場であっても経営者目線で打ち出さないと何も起きない。

吉野氏: まずはITを離れて事業戦略としてもうかるモデルを考えるということが重要なのではないか。

自社でIT技術者がどれくらいいるかという統計を取ると、USやヨーロッパは自社で持っている。一方日本ではない。ということはプロフェッショナルが日本企業ではすくなのだと感じている。

 
ーIoTを作ってもビジネスモデルまで考えられていないという状態だ。社会課題から入るというのが考えやすいポイントだと思う。そこで、i3の中で課題を打ち出し、解決できる企業でテストベットをやっていくという活動もいいのではないかと思うがどうか。

吉野氏: 一方的ではなく、コミュニケーションを行い、一歩一歩積み上げていくスタートとしたいと考えている。

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