国土交通省、タクシーあいのりが解禁へ ー課題や可能性について考察

国土交通省は、2021年11月1日より、タクシーの「あいのり」を解禁すると発表した。

定義としては、「配車アプリ等を通じて、目的地の近い旅客同士を運送開始前にマッチングし、タクシーに相乗りさせて運送するサービス」ということで、「運送開始後に不特定の旅客が乗車できるバスとは異なる」としている。

今後、あいのりサービスを提供するタクシー事業者は、専用のアプリを乗客に提供することとなる。乗客は専用のアプリを使って、現在地と目的地設定し、あいのりを指定することで割り出された運賃を確認した上で乗車することになるのだ。

コロナ禍前の日本では、訪日外国人の増加が著しく、タクシードライバー不足が問題視されていた。アフターコロナにおいて、日常が戻った時、同じ問題が発生する可能性は高く、タクシーのあいのり解禁への期待も高まっている。

深夜や豪雨など、タクシー乗り場の乗車待ち緩和に寄与

終電が終わった後の深夜や、突然の豪雨が発生した際など、タクシー乗り場は人でごった返すことになる。

筆者は、いつ順番が回ってくるかわからない行列に並びながら「同じ方向の人がいたら、一緒に載せてもらえればな・・・」と考えたことが何度もある。しかし、行列に並ぶ人に、「同じ方向ですか?」などと聞くことは簡単ではない。こういった、どうしてもタクシーに乗りたいけど、待ち行列がひどい、といったシーンでは利用が進む可能性が高い。

というのも、あいのりタクシーの実証実験の際にでた課題の一つに「マッチング率」というものがあるからだ。マッチング率とは、同じ方向に行きたいと考える人が、どのくらい周辺にいるかを前提に、あいのりが実現する割合だ。

あいのりをしたいと思っても、他の誰かも同じ方向に行きたいと考えていなければ、マッチングは成立しない。つまり、マッチングが成立するには、同時間帯に同じ方向に行きたい人がたくさんいることが条件となるのだ。深夜の終電を逃した人が多い駅周辺のタクシー乗り場などでは、かなりマッチングがすすみそうだ。

一方で、タクシードライバーの立場であいのりタクシーを考えると、少し状況が異なってくる。

タクシードライバーは一般的には歩合制なので、ドライバー一人一人が多くの乗客を乗せないとドライバーの給料は上がらない。あいのりタクシーは、ドライバー数の減少という問題を解決する上で有効である一方、ドライバーからすれば乗客を獲得する機会が減ることにもなる。

その結果、ドライバー同士が協力してあいのりを拒否するシーンがでてくるのではないかという懸念があるのだ。

海外のライドシェアの場合、個人がドライバー登録をして、自分の車で営業をしているため、組織的な行動はあまり取れない状況といえる。しかし、日本の場合、タクシー業界を規制によって保護する政策がとられているため、あいのりタクシーもタクシー会社が運営することとなる。

ドライバーは、一人乗せるよりも二人乗せる方が、距離あたりの売り上げが上がるわけなので、そこが反映される給与制度になれば、あいのりをすすめるインセンティブが働き、あいのりサービスが肯定的に捉えられる可能性も高いはずだ。

タクシーあいのりは環境問題へも寄与

また、タクシーあいのりによって、無駄なエネルギーを減らし、CO2削減に貢献することも可能だ。

タクシー1台を1組の乗客が占有する現在のルールでは、同じ方向に向かいたいと考える2組の乗客がいても、別々の車に乗車せざるを得ない。各車両にスペースがあったとしても、空けておくと言うことになる。

しかし、あいのりが実現されると、クルマの空きスペースが有効活用されることになる。その結果、クルマ一台分が移動によって排出するCO2を削減することができ、ガソリン消費の無駄も減ることになるのだ。

こういった環境問題に配慮した動きは、今後ますます重要になる。

米国西海岸を縦断する道路などでは、エコカーもしくは二人以上で乗車する場合のみ走って良いレーン(カー・プール・レーン)が存在する。

環境への配慮をしている人を優先的に進ませることで、多くの人に行動を促すというものだ。

イギリスで開催された、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が閉幕した直後だが、環境配慮への意識の高まりの中、なるべく無駄なエネルギーを使わないための行動を行う人にメリットがある施策は重要だ。

現在、あいのり以外にも、「貨客混載」といわれる、「乗客と荷物を一緒に運ぶ」ことができるようになるための動きもある。これも、無駄なスペースをなるべく無くそうと言う考え方になる。

クルマ自体がエコカー対策がなされても、不必要なクルマがたくさん存在することは、全体としての無駄が許容された状態とも言える。こういった法整備や乗る側の意識改革も環境問題への重要な取り組みとなるのだ。

タクシーあいのりの課題と今後

ところで、こういったさまざまなメリットがある中、あいのりを進めることの課題にはどう言うものがあるのだろう。

すでに、Uberなどではあいのりサービスは実現されている。個人的にも、すでにあいのりサービスを利用した経験があるので、経験に基づく課題もあげていきたい。

マナーや犯罪抑止

私が経験したことで言うと、例えば、同乗者が大声で電話をし続けていたり、静かにしたいのに話しかけられたりするケースなど、多様な考え方の人が、狭い密閉空間に同居するということで発生するマナー問題が発生した。

昨今であれば、コロナ禍におけるマスクマナーなども考えられるだろう。

他にも、ストカー被害に対する対策や乗客同士のトラブルは考えるとキリがない。

こういった課題へも対応するために、車内にカメラを設置したり、マナー違反した乗客に対する評価を下げるような仕組みを導入することも必要になるかもしれない。

専用アプリの性能

また、タクシーあいのりを実現するには、配車のための専用アプリを作る必要がある。

同じ方向の乗客をピックアップして、2箇所に運ぶわけなので、ある人にとっては遠回りのルートを経由して目的地に向かう可能性もある。

また、同じ方向に向かう乗客が複数存在する場合、どの乗客をピックアップすべきなのか、についても高度なアルゴリズムが必要となるだろう。

筆者も以前あいのりを海外で利用した際、10分くらいで到着するはずの場所に30分くらいかかってしまった経験があり、余程余裕がある時でないと、あいのりを選びたいと考えなくなってしまった。せっかくよい仕組みなのに、乗客の気持ちを考えないアルゴリズムを構築してしまうと、逆に利用が妨げられる可能性も高いのだ。

さらに、あいのりで目的地に向かっている途中に、目的地を変更したいと、一方の乗客が言い出した乗客がいた場合、どう対応するのか、など、運用を開始した後の問題はたくさんあることが想像される。

それにしても、あいのりサービスが開始されることで、多くの乗客にとって恩恵があることは間違いない。

移動サービスのデジタル活用は、今後ますます進んでいくだろう。