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情報ネットワーク時代の相互接続性を実現するOPC UAとは

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ご存知の通り、現在、産業のIoT化、デジタル化が進んでいる。その中で、通信のあり方や、その中でのデータに対する考え方、接続性やセキュリティなど、多くの点で変化が起きている。

そんな中、OPC UAには、マルチベンダー、マルチプラットフォーム、マルチドメインで、センサーからエンタープライズまで、産業オートメーションの安全で信頼性のある「相互運用標準(Interoperability Standard)」を実現する、というビジョンがある。

運営は、OPC Foundationと呼ばれる組織で、2021年11月25日現在、会員数は856社のグローバル組織だ。

国内では、1996年に「日本OPC協議会」が発足していて、2021年12月16日現在52社だという。

本稿は、IIFES2022に登壇した、日本OPC協議会 マーケティング部会の岡実氏(オムロン株式会社)の講演をもとにOPC UAについて解説する。

OPC UAはインダストリ4.0を実現するための推奨規格

もともと、OPC UAは、2015年4月1日にでた、RAMI4.0(Reference Architecture Model Industrie 4.0)において、インダストリ4.0を実現するための推奨企画として普及が始まった。

その後、ドイツIndustrie4.0だけでなく、米国Manufacturing USAや、中国製造2025、シンガポールSiAA、韓国Smart Manufacturing Koria4.0、日本ではIVIと、多くの製造業を強みとする国で採用されている。

OPC UAの相互接続性
多くの団体を巻き込み、相互接続性を実現している。(出典:日本OPC協議会)

そして、 単にFAの世界だけでなく、I/Oやプロセスオートメーション、IT、エネルギーなど、60を超える業界団体とのコラボレーションが進んでいることが重要だ。

OPC UAの考え方

OPC UAは、

  1. データを確実に伝送する
  2. 情報を正確に伝達する
  3. データを安全に伝える

という3つの特徴によって、情報を価値に変え、装置や機器の相互運用を作業レベルで実現することを目指している。

1980年台のネットワークは、MAP(Manufacturing Automation Protocol)やCIM(Computer Integrated Manufacturing)といった純粋な接続を意識したものであったが、1994年にEthernetが登場してから、1996年にOPC ClassicがEhternetベースで登場し、2008年にOPC UAとして相互接続性を担保するものへと進化している。

簡単にいうと、OPCが登場することで、マルチベンダでの機器接続が容易になったのだ。

OPC UAにできること

技術的な面を見てみよう。

OPCが登場するまでのデバイス間通信にはさまざまな規格が存在しており、それぞれの規格を意識して接続していたわけだが、第一世代のOPC技術では、OPCサーバを仲介することで、マルチベンダ接続が容易になった。しかし、OPCサーバは、WindowsOSの技術に依存しているという課題があった。

そこで、第二世代のOPC技術では、国際標準IEC62541ができ、OSに依存しない構造化したデータや情報を交換可能な技術へと進化したのだ。

その結果、高度なセキュリティにも対応しているのだという。

OPCUAのデータ構造

何が違うのか?と思うかもしれないが、例えば、従来の通信であれば流れるデータは文字の羅列だった。(図左)

これを解読するには多大な労力が必要だし、ベンダ毎にパラメータが異なることもあり、人が理解するのには多大な努力が必要になるのだ。

一方、OPC UAでは、構造をもった情報モデルが採用されているため、データに意味を持たせることができるようになった。(図右)

つまり、OPC UAのデータ構造を理解することで、ベンダに依存せず、簡単にデータを読み解くことが可能になるため、例えば何らかのI/O機器の状態から装置のステータスを取得し、工場全体の稼働状況を把握すると言ったことが簡単に実現できるようになるのだ。

OPC UAはセンサからクラウドまでさまざまな情報伝達を担う規格となっている
OPC UAはセンサからクラウドまでさまざまな情報伝達を担う規格となっている(出典:日本OPC協議会)

こういった構造を現場のセンサからクラウドネットワークに至るまで張り巡らせることで、ベンダによらない非常に柔軟な仕組みを構築することが可能になるのだ。

情報モデルの例

OPC UAで定義される情報モデルは、射出整形機、工作機、充填・放送機など、機械の特性に合わせてそれぞれ定義されている。

MESと産業機械の間をOPC UAで接続する例
MESと産業機械の間をOPC UAで接続する例

その結果、例えば、MESから作業指示がされる際も、機械に応じた指示ができ、生産を実行した後の実績取得も定義された情報モデルに値を入れて返すだけとなる。

もちろん、生産条件の変更や機械の運転状態の管理といったことも実現可能だ。

サプライチェーンでの利用

現在、偽の医薬品の流通が社会問題になっていたり、カーボンニュートラルをサプライチェーンを通して実現しようとする取り組みなど、社会全体でサプライチェーンに注目が集まっている状況だ。

実際、クラウドやサプライチェーンで情報を活用するには、フィールドにあるデータをクラウドにアップロードする道はできているが、そのデータをクラウド上でどう扱うかが大きな問題となっている。

一般的に「現在取得できているデータは3割しか使えない」、「データの変換に8割の手間が使われる」と言われる中、どうやって無駄なくデータを整えることができるのか、が課題となっているのだ。

OPC UAでは、データを整えるのに、「情報モデル」と、「産業特化のコンパニオン仕様」を準備することにより、体系化されたデータを使うようにしているのだ。

つなげる

OPC UAは、プロトコル、通信モデル、情報モデルの3層で構成されているが、プロトコルのレイヤとしては、MQTTやHTTPSなどクラウドと親和性の高い技術をサポートしている。

つまり、コンパニオン仕様があれば、現場のデータをクラウドまで届けることは容易なのだ。

つたえる

医薬品

先程の、偽医薬品の例への対策として、実際に医薬品の流通をサプライチェーンレベルで追跡監視するために、OPC30260がコンパニオン仕様として公開されているのだという。

コンパニオン仕様があることで、製造から流通にいたるまで、医薬品を追跡、管理することが実現可能となるのだ。

製造業

製造業では、CESMIIクラウドライブラリというものがある。 CESMII(Clean Energy Smart Manufacturing Innovation Institute)は、米国のスマート製造における国立の研究所で、OPC FOUNDATIONとのジョイントワーキンググループをつくり、製造現場のデータをクラウド上のアプリケーションが使いやすくするために、製造現場の情報モデル、辞書をつくるような活動をしている。

クラウドやITのアプリケーションで製造現場の情報モデルを知ることができるので、データ活用がより一層進むのだ。

産業用とのクラウド相互運用

三つ目は、ドイツで産業用クラウド相互運用を目指すDIN(Deutsches Institut für Normung)とOPC FOUNDATIONが、クラウド間の相互運用性を確保する参照モデル(DIN SPEC 92222)を作るジョイントワーキンググループを作ったのだという。

まだワーキンググループが設立されたばかりだが、今後明らかになってくるだろう。

安全に

最後に安全性についてだ。セキュリティへの対応は重要だ。認証と認可において、認められたアクセスだけがアクセス可能となる。

そして、完全性と機密性、これはデータの改竄ができない、暗号化されているということだ。

これらは、OPCの仕様として設計段階から組み込まれていて、今後サプライチェーンで使われる上でも非常に重要な要素となるだろう。

クラウド活用事例

そして、クラウドとOPC UAが組み合わされている事例を2つ紹介された。

一つが、ロボットのコンパニオン仕様をつかって、9社のロボット情報をクラウドにあつめ、リアルタイムに稼働状態を監視するものだ。

もう一つが、OPC UAの相互接続テストを、クラウドで行ったという事例もある。これにより、セッションの確立など従来会場に集まって確認していたことが、インターネット越しに確認が可能になったということだ。今後、海外企業製品とのテストが容易になるなど期待がかかる。

OPC UAで実現できる相互接続の世界は、製造業にとどまらなず、いろんな産業でも利用され、DXによって実現されるデータ中心の社会の基盤となる可能性を秘めている。

 

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