IoT時代のデジタル広告はどうなっていくのか -電通アイソバー nowlab インタビュー

IoTの波は広告業界にも波及している。

これまでは企画書で提案していたことも、例えばVRやホログラムとなると体験してみないとわからないことも多いため、電通アイソバーでは、大小様々なプロトタイプを作っては発表し、クライアントへ提案しているという。

今回IoTNEWSは、いくつかのデモを体験させていただき、電通アイソバー クリエイティブ部 アートディレクター/UXデザイナー 川村 健一氏、インタラクションデザイナー 柴田 耕次氏、シニアデザイナー 瀬尾 智昭氏に話を伺った。

BELLS RING

BELLS RING

これは、Kinectによるインタラクティブなプロジェクションと天井の照明(フィリップス社のHue)が組み合わさって表現されるクリエイティブで、女性向けファッションブランドANNA SUIの新ネイルカラー「BELLS RING」という商品向けに電通アイソバーが自主提案した企画だ。

Kinectの前に立つと、壁面にマニキュアのラメのようなキラキラした球体が投影され、エントランスが一瞬にして幻想的な空間へと生まれ変わった。

BELLS RING

iPhoneがコントローラーとなり、壁や天井の色が切り替わったり、スマホを振るとベルが鳴ったりする。様々なクリエイティブを連動させ、ANNA SUIの世界観を表現したという。

 

Dior Addict

https://www.youtube.com/watch?v=H6uDxtHsDUw

つづいて、体験させていただいたのは、去年の9月にDiorのイベントで使用したクリエイティブだ。

もともとイベント自体にフォトブースで撮影し、インスタグラムに投稿してもらうというスキームがあったため、そこにインスタグラムの写真を大型プロジェクターで投影させるというアイデアを付与した形だ。

SNSに投稿すると自分の写真をプリントでき、さらに会場に漂う艶やかな雰囲気の中に自分の写真が投影されることから、参加者にとても喜んでもらえたそうだ。

 

キャデラック新型車プロモーションでOculus Riftを活用

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キャデラックのCTS-VとATS-Vという新型車のプロモーションで、全国で2台しかない試乗車とともにOculus Riftも全国の販売店をキャラバンしていった。

GM : CTS-V VIRTUAL DRIVING

Oculus Riftには富士スピードウェイのショートコースを2周する映像が表示される。
実際に体験してみると、特に急カーブのとき「曲がりきれるのか?!」と不安になる臨場感だった。

 

パナソニック BtoB事例

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パナソニックがLED照明器具をガンバ⼤阪のホームスタジアムである市⽴吹⽥サッカースタジアムに納入し、その事例を今後LED照明導入を検討している企業に紹介するための映像をOculus Riftで見ることができた。

もともとは、Youtubeにアップしたものを、ハコスコで手軽に体験できるクリエイティブとして制作したものだという。「どうせなら、より没入感を感じられるOculus Riftでも体験したいよね」と自主的にOculus Rift版も制作したという。

360°動画で見る 市立吹田サッカースタジアム 納入事例

ドローンで撮影している映像が見えるため宙に浮いたような感覚になり、下を見たり障害物を乗り越えたりする時は少し怖いと感じた。他にも、スタジアムの天井を超えるところで「ぶつかることはないのか?」と感じてしまうほどの臨場感を持って、スタジアムを様々な角度からみることができた。

 

Boost Booth

Boost Booth

ブースでの撮影データをリアルタイムに2つのクリエイティブに加工。撮影を終えた後にNFCカードを配り、コンテンツの前にあるNFCリーダーにカードをかざすと撮影したデータが表示されるという仕組みだ。クリエイティブの1つ目は、撮影した自分の姿がピラミッド内にホログラムとなって現れるもの。

2つ目は、ストッキングのように伸縮する布に対して自分の姿が表示されるプロジェクションだ。伸縮する投影面を触るとサウンドが奏でられ、同時にグラフィックが変化する、インタラクティブな体験コンテンツになっている。

この手の内容は実際に体験してもらわないとわからないということで、得意客にも参加してもらったそうだ。やっていることは一見シンプルそうに見えるが、様々な開発環境、プログラム言語、端末が複雑に絡み合っており、デバイスは22台使用している。

 

インタビュー

 
-nowlabというのは、そもそもどういう位置づけでスタートしているのでしょうか。

川村氏(以下、川村): もともと、アイソバーのグローバルネットワークとして取り組んでいるものです。現在、日本を含めて13か国のアイソバーがnowlabを展開しています。最初はNFCが話題になり始めた頃、リアルなコミュニケーションにデジタルを拡大していこうというところからスタートしました。ジャパンとしては去年が種まき期間で、今年から本格的に取り組んでいくフェーズになっています。

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電通アイソバー クリエイティブ部 アートディレクター/UXデザイナー 川村 健一氏

柴田氏(以下、柴田): 一番最初は韓国のアイソバーからはじまって、世界中に展開していきました。

 
-ここに集まっている皆さんは有志なのでしょうか。

瀬尾氏(以下、瀬尾): そうですね。やりたいメンバーが集まっています。ちゃんとしたチームというよりは、nowlabという取り組みです。

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電通アイソバー クリエイティブ部 シニアデザイナー 瀬尾 智昭氏

川村: 案件をやりつつもこういうラボ活動もやっています。あたらしい デバイスはさわっている過程で生まれてくるアイデアがあるので、こうして実際に試行錯誤しつつエントランスで提案しています。

 
-実際は案件があって作ろうという着想が多いのか、試行錯誤したものが仕事になるのか、どちらが多いのでしょうか。

川村: 両方あります。

柴田: 両方ないといけないと思っています。試行錯誤の段階では、最終的なクオリティよりも可能性を探ることを大切にしているので、荒削りでもOKという認識で取り組んでいます。案件では、きちんとユーザーと広告主とのコミュニケーションを描き、全員がハッピーになれるところまで昇華させる必要があります。KPIを量に置くか、質に置くかの違いと言いましょうか。つまり、両者が混じってちょうどいいかと思います。

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電通アイソバー クリエイティブ部 インタラクションデザイナー 柴田 耕次氏

 
-発表されている場はウェブサイトだけでしょうか。面白いものを作ってらっしゃるので出していかないともったいないですね。

川村: そうですね。今年から色々出展していきたいと思っていて、まず、7月に販促EXPOへの出展を予定しています。

柴田: ミナトホールディングス(株)というタッチパネルセンサーを作ってらっしゃる会社さんと組んで一緒に出します。外部の技術を持っている人たちとも協調しながら、一緒に新しいことをやっていきたいと思っています。

 
-どんどん新しい技術が出てくるので取り込むのが大変ですが、Oculus Riftもついに出ますし、今年は楽しみな年なのかもしれませんね。360°カメラも手に入るようになってきましたし、それを扱う人も増えてきました。

川村: ひと昔前のデジタルといえば、イコール、ブラウザ中心のコミュニケーションでした。今はそういう範疇ではなくなっていて様々なデバイスの組み合わせになっています。デバイス自体も新しいものが生まれていますし、SiriやLINEのように言葉や文字だけで完結するシーンも今やあたりまえですよね。

ユーザーとのインターフェースという概念自体がダイナミックに変わってきているので、弊社としてもR&Dで、まず試してみる事。自分たちでも手を動かしつつお客様に提案するという過程を重要視しています。

世の中には色々なラボがありますが、企画からクリエイティブディレクションまでということも多くあります。弊社は実際に手を動かすところにまでコミットしているのがポイントかなと思います。

手を動かすところは、最後のステップと捉えられがちですが、むしろ、手を動かすところからコトが始まっている状態です。そして、アートに留まらず、実際に使ってもらうストーリーを描き、ものを生み出すというのがミッションです。

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手前:IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-IoTという視点で見ると、今回お見せいただいたようなインタラクティブなクリエイティブは、インターフェースになります。インターフェースの部分がリッチにならないと、いくらクラウド上で面白いことを考えても、人に対するインタラクションが面白くないと何も伝わらないと思います。

柴田: 基本的にはテクノロジーによって体験を豊かにする、というところを狙っていて、そのためには最新のテクノロジーだけではなく昔からあるホログラムでも、それがベストな回答であることもあります。古いものでも新しいものでも作る時の大変さは変わりません。

 
-実際そうですよね。技術の人は昔からあるとかないとかおっしゃいますが、見たことない人からすると全て新しいのです。ホログラムもなかなか見る機会はありません。先ほどの、自分の姿がピラミッド内にホログラムで現れるダンスがまたいいですよね。

川村: 映画では当たり前に見るホログラムですが、撮影した瞬間に自分がホログラムになる体験って、ありそうで無かったかなと思います。こういう体験を通じて、自分ゴト化を提供していきたいと思っています。

 
-あのホログラムは360°カメラで撮るのでしょうか?

川村: 普通のウェブカメラで撮りました。4面同じ絵を投影させて立体的にしています。

柴田: アウトプットとしてはホログラムなのですが、そこに対して様々な最新技術を使って、そのホログラムが有効に見えるようにしています。

 
-色々他にも使えるイメージがつきました。アパレルやインテリア、フラワーショップなど、アナログとデジタルの融合として活用するのも良さそうですね。

柴田: やっぱりそこですね。デジタルだけを作りたいわけではなくて、アナログの中にデジタルをどう放り込んで面白くするか、というのを一番やりたいです。要は普段の生活の中に、デジタルと思わずにデジタルが入っているみたいな。

川村: 以前まではデジタルの主戦場はOnline to Offline、もしくはOnline to Onlineだったのかなと思いますが、今はオフラインの体験をデジタルでより豊かにすることで、結果、ファンになってもらい、オフライン、オンライン問わず継続的な繋がりを作るという提案が増えています。

僕個人としての体験なのですが、学生時代、ボーイスカウトをやってまして、毎年の恒例行事として「日の出ハイク」というのがありました。深夜に出発して、日の出スポットまで25キロほど歩き、明け方に初日の出を見るというイベントです。現地に到着し、みんなで日の出を見ているときにカップラーメンが配給されたのですが、それはもう信じられないくらい美味しく感じました。

今後の人生で、あれほど美味しいラーメンには二度と出会えないかもしれません。いまだにスーパーなどでカップラーメンを見るとその銘柄を探してしまいます。体験は最大の広告になりえると、その時に実感しました。 今は、デジタルとリアルとの境が限りなくなくなってきています。デジタルを活用したユーザー体験を最大化させるところにやりがいを感じています。

柴田: 未来というは結局のところ、ありとあらゆるものがオンライン上で全部繋がっちゃうので、「 人が触れる全ての機器は、全てデジタル機器である」という状態になるわけじゃないですか。そしたらデジタル的な見せ方がどうのこうのというレベルではなく、もう少し生活に根差したものに変化していくだろうという気がしています。

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-例えば、監視カメラはいたるところにありますが、監視カメラは画像解析が可能なので、監視カメラで撮られた瞬間の映像をスクリーンに出して、そこに何か加工して自分の姿自体を何かのブランドなどと重ねあったりして投影すると、きっと自分が表示されるので興味を持つと思います。

監視カメラだから本当は監視が目的なのですが、さらに楽しめるというのがあると面白いのではないかと思いました。例えばアーケード街を歩いていると、どんどん自分が出てくるわけですよ。今までは監視カメラというと監視されて嫌なものという感覚でしたが、遊びに変えていくと面白そうだなと思いました。

柴田: 監視カメラで見られてるのではなく、見守られているということですね。

 
-日常の中にエンターテイメントが潜んでいるというのが今はあまりないので、そこにブランドのイメージが重なったりするとそれ自体が広告になりそうです。

川村: 犯罪も減りそうですね。

 
-今後どういうタイミングで発表していかれるのでしょうか。

柴田: 忘れられないように(笑)、2か月に1回は出していきたいなと思っています。

川村: 例えば、この「COLOR BALL」は、ビニールハウスの素材でつくったスクリーンにプロジェクターを投影すると、映像が空中に浮いているように見えるので、それを試してみたくて作りました。人の動きをモーションキャプチャして、実際にボールを投げるポーズをすると、COLOR BALLが飛び、空中に着色されるような体験を味わえるようにしています。

COLOR BALL

こういう小さいデモも躊躇なくどんどん出していって、結果作品に繋げていくサイクルを作りたいと思っています。どんなに凄いクリエイティブも、結局は小さいものの積み重ねです。このように、やりたいと思ったことを、すぐに試してみて、体験することで初めて気づくことがある。その気づきを企画に生かし、あらたな体験として業務に還元する。こういうサイクルがあれば、変化が早い今にも、いち早く対応できます。

柴田: 小さいこともやっておかないと「何かアイデア出して」と言われても発想が出てこないですし、基礎技術も上がらないので、このような腕立て腹筋を繰り返しています。

川村: 今まで、デジタルのクリエイティブは構成やラフデザインに多くの時間を割いていました。もちろん、それらは今でも重要なのですが、体験を重視するプロジェクトの場合には、プロトタイプこそが最大のツールになります。広告が変わってきているので、僕らもあたらしい形にフィットする取り組みをしています。

 
-もはや口で説明してもわからないものが多いですよね。

柴田: 例えばOculus Riftの体験案を企画書で出して「360°見えるんです」と言っても、「うん」で終わりじゃないですか。そうなると、もう体験してもらうしかないと思います。

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そうですね。本日はありがとうございました。

 
【関連リンク】
電通アイソバー(Dentsu Isobar)
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