IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー(1/2)

セールスフォース・ドットコムはSFA(セールスフォースオートメーション)の分野で99年創業、その後クラウドのプラットフォームサービス、コンタクトセンター、マーケティングクラウドと発展し、業界の中ではユニークな顧客やパートナーとのコミュニティ作りもできるクラウドとして進化し、一貫して顧客との接点をクラウドで実現することに取り組んでいる。

そのセールスフォース・ドットコムが現在、さらに顧客とのつながりを深めるという位置付けでIoTに取り組んでいる。今回、そのセールスフォース・ドットコムのIoTの取り組みについて、株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 先進技術ソリューション本部長 関 孝則氏に話を伺った。

 
-御社のIoTへの取り組みについて教えてください。

デバイスも持たないクラウドベンダーの弊社が、なぜIoTに取り組んでいるかというと、顧客と更につながるための技術と考えているからです。過去、弊社はお客様と営業でつながりをもち、コンタクトセンターで お客様と対話し、マーケティングを通してお客様にリーチするなど、基本的にはお客様とのつながりをクラウドで徹底的にやってきたので、デバイスやセンサーからお客様につながるIoTという流れは実は自然な取り組みなのです。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

IoTへの取り組みという意味では、世界では、ドイツを中心としたインダストリー4.0、米国を中心としたインダストリアル・インターネットがあります。例えばこれらを、製品の企画、設計、開発、生産、マーケ、販売、活用、保守といった流れで整理してみると、インダストリー4.0は設計、開発、生産を中心に概念的にはマスカスタマイゼーションという部分でお客様と関係してきます。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

また、インダストリアル・インターネットで有名なGEはどこに位置するかというと、もちろん製造のほうに意識はありつつも、どちらかというと大きなエンジンをサブスクリプションで課金する とか、ビッグデータの分析をして最適化をインフラレベルでやるとか、大変大きいスケールでやっていらっしゃいます。

そして弊社のIoTの立ち位置というと、顧客接点です。IoTで顧客接点が変わる、それは企業から見たら「お客さまのやっていることが全部わかる」ということです。これはすぐに気付いたわけではなくて、むしろお客様に教えてもらったような気がします。ハネウェル、三菱重工、GE、フィリップスなど、さまざまな企業が顧客接点のところでデバイスなどを持ち、その情報から顧客を理解したり、働きかけようとしたとき、 「顧客とのつながりをやっている セールスフォース・ドットコムがそのつなぎに使えるのでは?」ということで、数年前から、たくさんのお客様にお話を頂くようになりました。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

そして、IoTで顧客とつながって何をするかが実はメインのテーマなのです。つながったあとに、「営業を変えたいのか?サポートを変えたいのか?サービスを変えたいのか?サブスクリプションで売りたいのか?」そういうことをちゃんと整理してすすめることでIoTの価値が出てくる、とお伝えしています。

私どもは数年前から、「Internet of Customer」というテーマで、インターネットでつながる顧客の時代に対応していかなければいけない、とメッセージングしています。そして今までにない顧客接点であるIoTがひとつの非常に重要な顧客接点だと認識しています。

下記の図がわたしどものIoTでのInternet of Customerのアーキテクチャーを描いたものです。顧客はモノを持っていて、そのデバイスがつながってきます。そこで最近では、IoTのための柔軟なMVNOのソラコムさんのアプローチもあります。そしてつながる入り口としてのクラウドがあります。さすがに最近ではオンプレで作ろうっていう話は少ないでしょう。

 
-そうですね。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

そういう意味ではデバイスをつなぐ先としてのクラウド、そのデータをためるところ、デバイスなどのアセット管理なども当然必要で、そこまでを(図の水色部分)まずはIoTシステムとして作る企業が割と多いようです。

 
-現在のIoTの主戦場はそこですよね。

弊社はHeroku(ヘロク)というスケーラブルなプラットフォームがあるので、デバイスをつなぐ先としてのクラウドを担うことができます。ただHerokuは現時点ではかなり汎用のプラットフォームなので、その部分をHerokuでやってもいいし、他にデバイスや通信によってより専用のIoTプラットフォームのサービスでやってもいいと思います。それより、デバイスから上がってきた故障情報や、故障予知情報なりを、カスタマーサービスにつなぐ、弊社でいうとコンタクトセンター向けのSaaSであるSalesforce Service Cloudというものでつないでお客様とやりとりする、といった何をするかが重要になります。ちょうどIoTシステムの下(図の緑色部分)の 部分です。

これを簡単にできる仕掛け、そういったサポートを変えたいか、セールスやマーケティングを変えたいか、はたまたもちろんビッグデータを分析して何をするか。こういった全体とともにIoTのリファレンスアーキテクチャーと言っています。

「ただつなげば答えが出る」という世界ではないので、顧客にとって何がいいかという視点などで仮説が立てられる人が必要で、それを元にシステムのモデルを作ってみたり、「いや違うね」と作りかえたりといった 試行錯誤のアプローチが大事になってきます。

デバイスからサービスまでなど、さまざまな技術、それらを試行錯誤で作り上げる手法を持った人たちが連携しなければいけないのです。そういう意味では、いままでのIT部門のやり方ではなく、いままでのSIerのやり方ではなく、いままでのベンチャーのやり方でもない、それらを統合できるようなエコシステムを作らなければいけないと思っています。

 
-なるほどですね。

 

セールスフォース・ドットコム IoT事例

サトー お客様の現場にバーチャルカスタマーエンジニアが常駐

サトー お客様の現場にバーチャルカスタマーエンジニアが常駐

事例をご紹介したいと思います。まず一つ目の事例は 、IoTに戦略的に取り組んだサトー様のラベルプリンタです。SOS(SATO Online Services)という名前で昨年から発売したプリンタと組み合わせたIoTでのサービスになっています。出発点は、お客さまの「お困り事」だったそうです。サポートの人間は現場に出ているので様々なお客さまのお困り事を知っていて、かつ呼ばれればすぐ行かなければいけませんでした。しかし実はお客さまは、来て欲しいのではなくて、その場ですぐ直ればいい、直したいということがわかりました。

 
-それは、そうですよね(笑)。

サポートの人間が来てくれることは必須ではなかったのです。まして、サトー様からすると、グローバルにもっと出ていきたいと思っていて、例えばアメリカで日本と同じような、きめ細やかな保守網を作れますかといったときに、「それは作れません」となります。

まして砂漠の近くにあるような工場に、1時間以内に行くことは物理的に無理なのです。そういう意味で「本当にお客さまのお困り事を解く」というのは、いま目の前に見えることとグローバル戦略、テクノロジーの進化を考えると、プリンタをIoT化してセルフで直せるような仕掛けができなければいけないのでは?という答えが出てきました。

そしてお客さまのお困りごとを知っているサポートのトップがプロジェクトを主導しています。自分たちの部門の中でお客さまから電話がかかってくる前に連絡して、「その消耗品は早く替えたほうがいいですよ」とか、「これ調子が悪いようなので調節してください」というのを先に連絡できます。

それで、やり方がわからなかったらオンデマンドでプリンタのディスプレイにビデオを流してやり方をご説明します、巻き戻しもできるのですが、これは非常に便利ですね。

結果、サポートの人が、「これってわれわれの仕事変わるってことですね」とおっしゃっていました。クレームが出て動くのではなく、プロアクティブに行動するわけです。さらにはその先では、サポートの人間の仕事の性質が変わって、 むしろ積極的にガイドするような役割を担っていくと思います。サポートの人からは「私たちの仕事がなくなるのですか?」というまでの質問が出たそうです。そういう意味では、すごく会社の中の業務プロセスが変わっていく、役割が変化していくっていうことを 、本人たちは気付き始めたということです。

 
-守りから攻めに転じてますよね。

よく「ビッグデータで分析すれば故障などの予兆がわかります」という議論がありますが、その前にやれることはたくさんあります。サトー様はそれが戦略の枠組みになると考えたわけです。

工場の中でサトー様のプリンタを使ってくれていたら、もっと増やしたくなる、しかも長く使ってくれる、壊れにくくなる、そうするとロイヤリティが上がるため、「これは無料に出すべきだと考え」、新しい機種にはできるだけ全部入れて、IoTの仕組みは無料という形で出しました。この結論は、サポート責任者、開発責任者、CMO、社長と、エグゼクティブが 、喧々諤々と議論して最終的に決めていったとのことです。

サトー様のIoTは、サポートの役割が 、セリング的、コンサルタント的であるような仕事に行くという、つまりIoTが会社の中のロールの変化、おおげさに言えば変革する部分があるだろうということを感じさせる、良い事例だなと思います。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー
株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 先進技術ソリューション本部長 関 孝則氏

 
-それは上げてくるデータをどうセールスフォース・ドットコムとして受け取るか、それをどのような業務に組み込むかという、業務プロセスの設計というところまで一緒に考えられたということなのでしょうか。

そういう意味では実証実験(PoC)をしました。アメリカのIoTパートナー企業とセールスフォース・ドットコムで考えて、スマートグラスを使ったサポートといったプロトタイプを作ってビデオで見せて、顧客体験をデザインして、まずはプリンタのディスプレイを使おうといったアイデアに集約され、そういう意味では、UXを考えつつ走っていたのだなと思います。

 
-現実的ですよね。スマホで見るということもできたりしますが、プリンタについているディスプレイを使うというのがいいですよね。工場などはスマホを持ち込んだら怒られるでしょうし。

スマホですとアプリを入れなければいけないので、面倒といった話になります。サトー様のIoTは、なかなか味わい深い事例で、考えれば考えるほど、組織の話もできているし、UXの適切なところ、PoCを回して、サポートの人たちの気持ち、お客さんがどういうふうに喜んでくれるか、全てがここにあるのです。

 
-ぐるっとまわって、御社的にはまさにCRMですよね。

私のほうも大変勉強になりました。単純にモノにつないで何ができる、その先の話がふんだんにあるのですよ。コストを考えて有料にしなければいけないのではないかという事などですが、原価計算は基本的に生産コストですよね。サポートのことは考えていないのです。

コストの考えかたも変えなきゃいけない。人の働き方も、サポートから積極的な役割に変えなければいけないという、ある意味これまでの縦割りの組織を壊す議論なのです。

 
-でもそうしないと、ビジネスプロセスの一環で利益が出ないですからね。

私は、IoTはビジネスプロセスなどを、みんなもう一度見直す、非常にいい道具だなと思っています。悪く言えば、これまでのビジネスプロセスを壊してしまうという危険性もはらんでいますけど、それがユーザーの望んでいることなのです。

 
-これまで90年代中旬から後半にかけてから、ビジネスプロセスは一気通貫で見ようとさんざん言ってきましたが、全然そうはなりません。皆さん、20年かけてやっとつながったとかと言っていて、非常に感慨深いですよね。

そういう意味ではまたIoTでもう一度チャレンジだと思いますよね。それができるかできないか違いが出てくるのではないでしょうか。

 
-やっぱりやらないと次に進めないという気がしています。御社がこのクラウドの世界の中に踏み込んで一気に大きくなったのと同じような感じですよね。

弊社は薄皮とよく言っています。CRMって広い意味で、お客様のこと全部なので、セリングのところから最後まで全部一気通貫なはずなのですよ、つまり薄皮で全部かぶせる。ERPの薄皮にもなったりするのですね。薄皮でいまいちどお客さまからみたプロセス全体を見直すといった感覚です。

 
-なるほど。おもしろい例ですね。

 

東急建設 建設現場のスマート化

東急建設 建設現場のスマート化

次に、国内の事例でいうと、特に短期間で仕上げた東急建設様のIoTの事例をご紹介したいと思います。現場で建機やシャベルカー、ブルドーザーなどがどこにあるか、またCO2をどのぐらい出しているかなどが見える化できるシステムを正味3ヶ月くらいで立ち上げました。東急建設様に初めてお会いしたのが 去年の3月で、その後7月に弊社のイベントで登壇頂いた時は、もう実証実験の開発を終えて利用が始まっていました。

汎用のセンサーの活用をご提案差し上げて、建機や発電機につけたりしたのですが、それらは弊社のIoTのパートナーシップで探してきて、弊社のクラウドですぐに仕組みと画面を作りました。実証実験で「いける」ということがわかり、今はさらに拡大しています。

ゼネコンでは現場を作るときに建機などの銘柄を指定せず、レンタル屋さんに「ショベルカーを何台持ってきてくれ」と依頼したりするそうです。今、汎用のセンサーが安価で性能よくできているので、「機械を持たないゼネコンでもIoTでできることはたくさんあるのではないか?」というところから取り組んだ事例です。このように短期間で、かつ汎用のセンサーで安価に価値を出せたので、現在はその先に進んで現場の様々なIoT化に取り組んでいらっしゃいます。

 

 

後半は週明け火曜日にアップされます。

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