IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー(2/2)

株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 先進技術ソリューション本部長 関 孝則氏へのインタビュー後半。

セールスフォース・ドットコム IoT事例

Honeywell 契約業者と住宅オーナーを新しいカタチでつなぐ

Honeywell 契約業者と住宅オーナーを新しいカタチでつなぐ

米国の事例もご紹介しましょう。コネクテッドホームを標榜したサーモスタットのベンチャーのNestがGoogleに買収されたころ、大企業のHoneywell様もWi-Fiのサーモスタットを販売していました。しかし、ホームセンターなどで買ってきて、つけて自分のスマホで確認して「ああ、おもしろい」で終わってしまうのですね。コネクテッドホームの分野でNestにデータを全部握られたりしてしまうのではないか?といったような危機感を 持って、Honeywell様のCEOが弊社のCEOに相談に来られたと聞いています。

そして、弊社のデザインシンキングのチームとお客さま、契約業者(工務店)など、関係者の方々でワークショップを実施しました。デザインシンキングを通して、それぞれの関係者にとっての新しい体験と価値といったことを考えて頂いて、Honewelly様のWi-Fiのサーモスタットを中心にしたモデルをステップアップしながら実装されています。そのためだけではないですがソフトウェアの開発者を百人単位で採用してアプリなどをどんどん作っています。

今まで社内にいなかったようなプログラマを採用し、かつデザインシンキングで考えながら、一歩一歩進化させていき、今までにないIoTでしかできないサービスを作れるという例です。

 
-家からアラームが上がってきたら、工務店の人がSalesforceを確認し家に駆けつけたり、ほかのサービスくっつけたりする事例ですよね。

そうです。そういう意味ではその先に、サーモスタットに限らず工務店の人はもっとビジネスを広げられる可能性もありますし、Honeywell様はビッグデータ分析で何か広がるかもしれないし、Nestとは違う切り口でサーモスタットを拠点にした何かを作っていくようです。

 
-Nestは自律的に全部自分で対応して、特に人を呼ばないので賢いですけどね。

やはりGoogleなので、できるだけ何でも自動的にやりたいと思っているかもしれませんね。逆に弊社は人をつなぐところ、いろんな関係者をつないで新しい体験を生み出すことを大事にするところから始めています。

 

IoTで新しい体験、新しいサービスへ

最初にお話ししたように、IoTで「つながって何をするか」に私どもは価値を見出し、重点を置いています。サトーの事例ではIoTで遠隔からサポートなどができたり、セルフサポートもできるように変わりました。東急建設の事例では、IoTで建設現場の建機などの場所や稼働が見えて最適化ができるだけでなく、CO2の排出量まで見えてCSRが変わります。Honeywell様もサポート的なことで始めていらっしゃいますが、工務店とお客さまとの関係性が変わっていきます。それぞれのIoTで新しい体験をお客さまなどに提供しているといえます。

その他にもたくさんの事例がありますが、新しい体験を提供しているという視点でいくつか簡単にご紹介しましょう。

これは専門性の高い分野ですが、 米国を中心に研究用の酵素を製造、販売している、New England BioLabsという会社があります。彼らのお客さまであるライフサイエンス系の研究所では酵素が必要なのですが、いちいち持ってきてもらうと時間がかかってしょうがないし、実験ですからこれを使ってみたい、あれを使ってみたいというニーズがあったので、使った分だけお金も払うというシステムをIoTで作りました。BioLabsがお客さまの研究所に冷蔵庫に置いて、研究者が酵素を取るときに読み取ると、そのままチャージするという自動販売機のようなものです。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-富山の薬売りですね。

そうです、富山の薬売りです。お客さまにおいてある冷蔵庫をあっという間にIoT化して、ERPにもつないで課金をするようにしました。お客さまの研究員にとっては、研究のやり方やスピードまで変わる新しい体験だとおもいます。

私たちの視点は、IoTで新しい体験をお客さまなどに提供していく、それによって使い方、そして仕事のやり方が変わるというものですが、それをさらに高めていくと、今までにない新しいサービスをお客さまに提供できるというところに発展している事例がでてきました。

英国を拠点にしているMedelinked様という企業ですが、個人の医療レコードを自分で管理して、モバイルなどでいつでも閲覧できるようにしているサービスをSalesforce上で提供しています。IoTでつないでFitbitなどのデバイスのデータもそこに紐付いていきます。ヨーロッパで、様々なところへ出張に行くビジネスマンが病気になったときに、近くの病院に行ってそのデータを病院に共有すると「あなたはこういう既往歴があって、Fitbitではこのようなデータが取れていて」などIoTでとったデータを含めたトータルの医療レコードで診断がされるというわけです 。日本はなかなかこう簡単にはいきませんよね。

 
-そうですね電子カルテは、厳しいですよね。

イギリスを中心に一気に数万人の会員を獲得しているおもしろいサービスで、保険屋さんとも提携していそうです。単純に個人で管理する電子カルテシステムではなく、IoT含めて自分の医療データがすべて管理され、 より適切な医療を受けられるようになる、期待の大きな新しいサービスです。

デザミス

新しいサービスの提供という意味では、ベンチャー企業でデザミス様が10月から始められる酪農のためのサービス「U-motion」があります。今まで酪農・畜産といった分野は、ベテランのノウハウや勘に頼って、牛の健康維持や生産性をあげる工夫をしていました。しかし大規模化になると、ベテランの目も行き届かなくなり、かつノウハウのある人の確保も難しくなります。そこで、畜産農家むけに、牛につけるセンサーを提供し、牛の行動、健康をリアルタイムに把握して、今までベテランに頼っていたところをIoTのシステムで、ベテランと同じようなレベルの飼育をできるようにするものです。それがないと牛が病気になり死亡したりと損失コストも大きく、このサービスはかなり期待が集まっていて、大規模な酪農のお客さまですでに最後の調整をしているとのことです。

IoTで新しい、価値あるサービス、そしてそれを生業にする企業がつぎつぎに生まれる。そんな近い未来をこの二つの事例は暗示してくれているように思います。

 

SalesfroceのIoTのエコシステムとこれから

SalesfroceのIoTのエコシステムとこれから

弊社のエコシステムにはIoTのシステムを、いかにしてお客さま視点、さきほどお話ししたInternet of Customer(IoC)の視点で、新しいつながり、プロセス、UXの観点で、新しい体験や新しいサービスに仕立てあげてくれる、IoCパートナーがいます。一方、様々なデバイス、センサー、分析、通信など、IoTの技術的な土台となるテクノロジーを持ち寄ってくれるテクノロジーパートナーがいます。これら全体をSalesforce1 IoTジャンプスタートプログラムという形でIoTのエコシステムとしています。

このエコシステムは新しいパートナー企業の組み合わせを意識していて、「こういう技術があの企業にあったな、使ってみよう」といってIoCパートナーがテクノロジーパートナーに出資してみたり、「あのIoCパートナーのIoTソリューションは横展開できるな」といってソリューションを再販したりということが起こっています。エコシステムの中で、緩いコミュニティのように時々集まって価値ある情報交換しているような場です。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

あと、これからではありますが、昨年の秋の弊社イベント「Dreamforce」で、IoTの概念をもっと広げたIoT Cloudというこれから出す製品の発表をさせていただきました。IoT Cloudは、デバイスやセンサーといったものがユーザーの使い方をつぶさに観察したり働きかけたりできるIoTの概念をさらに拡張して、ユーザーがWebなどのアプリケーションを使っているときに分かるユーザーの行動などの様々なイベントも、バーチャルなモノのように 取り込もうというものです。

発表の段階では、Microsoftとやっている実証実験を披露していました。クラウドアプリのOffice 365をユーザーが使ってる行動の様子をイベントとして全部吸い上げて、添付ファイル送信ばかりをやっている人を見つけると、「Office 365のOneDriveがおすすめですよ」というメールを差し上げたり、といった使い方です。

モノからではなくウェブから情報を取得してもいいわけです。ある意味Internet of Everythingなわけです。そういう実証実験が去年から始まっていますけれども、マーケティングにも使える、教育にも使える、そんな仕掛けを作ることができます。そういう意味では、入り口は様々な会社のテクノロジーでつないで、そのあと収集、変換、フィルター、改善、編成で、弊社の顧客データと結びつけて、その先にどんなアクション起こすか、これがIoT Cloudのアイデアです。

 
-IoT Cloudはもうできているのでしょうか。

実証実験を経てこれからといったところです。一部セールスフォース・ドットコムが提供するPaaSであるHerokuに、ミドルウェアを 組み上げたりして、弊社の得意なドラッグ・アンド・ドロップの開発、設定だけでそういう仕組みが作れるようなものにいま仕上げています。

 
-では最終的にはそのデータの収集のところも御社でやろうとされているということなのでしょうか。

そこはパートナー企業 ですね。データ収集から IoT Cloud、つまりデバイスに直接つなぐところは弊社ではできませんので、ここはもう各社の得意なモノとのつなぎ込みをやっていただくわけで、ThingWorxやIntelにも手を挙げて頂いています。

できるだけ簡単につなげれば一番いいわけです。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

Ciscoが、Internet of Everythingという概念を出しています。そしてリサーチをやって、ここ10年でIoTから「一番価値をもたらすのは顧客体験の変化」だと言って、2023年には3.7T$の市場規模が顧客体験から生まれると予測しています。今は皆さん、どちらかというと資産の生産性とコスト削減という一番左に向いていますよね。

 
-モノのインターネットと訳した人が悪いのですよ(笑)。

ええ。ドラッカーの言葉が引用されていますが、要するに「すべきでないことを能率的にやってもしょうがないので、新しい体験を作りましょうよ」というのがわれわれのメッセージです。

 
-おっしゃる通りですね。これは実際に、例えばどこかの会社が「こういうことをやりたい」と思ったら、まずは御社に問い合わせてかまわなくて、問い合わせたあと適切な人と思われるかたがいらっしゃって、話をしながらPoCを回すという流れでしょうか。

そうですね。IoTジャンプスタートプログラムのパートナーさんとともにやっています。実証実験を何度も実施して止まっているところもありますけども、実証実験1回だけ実施して、「じゃあ本番にしましょう」というケースもあります。

 
-Salesforce自体の画面作りや構造作りが柔軟だというのが、すごくやりやすいですよね。モバイルにも対応されていますし。モバイル版があればフィールドサービスしている人にも、情報提供しやすいです。なんか割とこういうふうにやったらいいのではないかと思いつく人はそれなりにいると思いますが。

それはもういると思いますし、私どものクラウドサービスの一番価値が出るところです。

IoTは顧客とつながるための究極の技術 -セールスフォース・ドットコム 執行役員 関氏インタビュー

 
-実際問題、その基盤みたいなものがちゃんと存在していて、それで手早くできるのかっていう世界って、かなり簡単じゃないじゃないですか。PoCだPoCだとよくいってるけど、だいたいの人はデータ集めてきて、グラフになって終わりなのですよ、業務にならないのですよね。そうするとPoCといっても、人をつなげた業務になかなかならないかなって思っているので、セールスフォース・ドットコムさんだと画面まで作りこめちゃうから、人を巻き込んだPoCができて、業務改善になるよってことですよね。

まさに私どもの強みのところです。関係する人を巻き込み、みんながわかる形にして、リーンに実証をやっていくという話は多いですね。また大掛かりなHoneywellのような事例はデザインシンキングで、ビジネスプロセスを作り直してさらにPoCをしていく、そんなやり方です。

 
-最後に1個だけいいですか。サービスマックスさんは、たしかSalesforceにのっていますよね。似たようなサービスになりませんか。

IoTでのサポートの事例に非常に近いですね。そこでデバイスのデータなどが大幅に増えたりすると、IoT Cloudやら何かサポートが必要なイベントを事前にフィルタリングすることは必要になり、組み合わせることになるでしょう。

 

-御社が売られるのはあくまでもSalesforce自体なのですよね。コンサルティングサービスなども売られるのでしょうか。

コンサルティングも一部やっていますが、やはりSalesforceのサービスが主体です。デザインシンキングでのワークショップはプリセールスではやっていますけど。それを有料コンサルティングとしては提供していません。むしろ、コンサルファームの人たちと一緒にやっていくことになるとおもいます。

 
-本日はありがとうございました。

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