「ヘルスケア・エンターテイメントをつくりたい」WINフロンティア

ウェアラブルデバイスで、心拍や睡眠の質などのデータを取得できるようになってきたが、簡単に「ココロの状態」を知ることができる技術はなかったのではないだろうか。

心拍のゆらぎで8タイプのキモチをチェックすることができるアプリ「COCOLOLO」を開発した、WINフロンティア株式会社の板生社長にインタビューを実施した。

WINフロンティア COCOLOLO
左:WINフロンティア板生社長  右:IoTNEWS小泉

 

―COCOLOLOを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

スマホのカメラを使って心拍変動解析、ココロの見える化をするのがCOCOLOLOですが、今まではウェアラブルセンサーを使ったサービスを実施していました。その使い勝手を追求していくと、スマホに+アルファではなくて、スマホだけで完結できる仕組みが一番ベストだと思い、COCOLOLOをはじめました。

ココロの状態をセンサーで測定するためにデバイスを買わないといけないというのはまだまだハードルがあったので、スマホだけでできるのであればそれが一番いいかな、と。私たちはデバイス売りというのを主戦場としていないので、スマホに行くのは自然な流れでいきつきました。

測定して見える化、定量化をしていますが、測って終わりではなくそこから何につなげていくかというところが大事だと思っています。

 

―COCOLOLOはどういう技術が使われているんですか?

WINフロンティア COCOLOLO

カメラで指をあてると赤い色が出るんですが、赤く見えているのは輝度(きど)です。

血流が動くたびにヘモグロビンが血中を動いているんですが、動くと明るさが微妙に変わるんですね。カメラでその明るさの変化をとらえて波にすると、だいたい1分間で何回の心拍なのかというのが捉えられます。

我々がやっているのは、単なる心拍数だけではなくて、さらに心拍変動解析をしています。

心拍のゆらぎを解析していて、心拍数より精度良く波をとらえないといけないんですが、そのあたりがけっこうノウハウで、心拍数だけ捉えるのであれば専門のセンサーと比べてもほぼ100%の相関を実現しています。ゆらぎというのは、もっと波形の精度を良くとらないといけないので、これに関しては今80%以上の相関というところまではきていて、心拍数も裏で取れているという原理になっています。

 

―他社とは違う技術は、心拍変動解析までできるということですね?

はい。スマートフォンのカメラで、色の変化から血液の輝度変化から解析をして出す、というところと、出した後の数値の解釈ですね。これも私どもは胸に貼る心拍センサーはだいぶ前からやってまして、すでに統計データが溜まっています。

それを東京大学医学部教授の矢作先生、順天堂大学医学部教授の小林先生、のお二方にご監修いただきながらその数値の解釈の部分をバックボーンに持ってます。測った値というのは年齢性別とかBMIなどで解釈が変わってくるので、最初の属性情報で入れてもらっているんですが、そのデータを弊社が持っている統計ロジックとぶつけて、結果を出しています。

カメラから取得する部分のユニークネスと取得したものを解釈するところのユニークネス、この2つが一番差別化されている要因です。

 

―なるほどですね。COCOLOLOは消費者にとってわかりやすいように8分類されてるんだと思うんですが、実際はもっと細かくデータが取れてるとか、実はもっとこういうことがわかるんだということはありますか?

裏で固有の数値は取れているので、将来的にもっと細かい分類ができる可能性はあると思いますが、今は、緊張してるかリラックスしてるか疲れてるかどうかの組み合わせで見ています。

あとは、自律神経のバランスをみています。自律神経は年齢と関係があり、取得したデータから自律神経年齢というのがわかるので、アンチエンジング度合などは出すことができます。

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―このアプリを使うとスマホがあるだけで、その人の心の状態、体の状態、年齢に対する良い悪いという評価ができてしまうというわけですね。この取得したデータをアプリ上で表示するだけではなくて、そこから発展的に、というお話がありましたが、どういうことを考えていらっしゃいますか?

今、ストレス社会、うつ病100万人時代と言われていますが、ココロの問題というのがなかなか見える化できず、対処が難しいと言われています。それを身近なところで可視化して、そのココロの状態に応じて、気分転換とか自分のちょっと息抜きするタイミングバロメータにするとか、生活を変えるきっかけにするツールにしたいと思っています。

そういう意味では、その先につなげるものとしては、COCOLOLOで測定した結果、お疲れ気味の人にはスパのクーポンが出るサービスを先日リリースしました。また、音楽とか、身近にできるリラクゼーション、にどんどん繋げていきたいと思っています。

音楽ひとつとっても自分にとってのリラックス音楽はどれなのかなど、使っていくことで最適化されていく、それこそビックデータを活用し、「あなたに似たような方が癒されている音楽はこれです」など、よりパーソナライズした世界に持っていきたいと思っています。

 

―そうすると将来、好きか嫌いかじゃなくて、その人が聞くとリラックスできるような音楽がどんどんレコメンドされていくということですよね。

そうですね。それをちょっとスピードアップしてやっていきたいです。

 

―今はこういったIoTのサービスって似たようなものがありますけど、ココロの状態に基づいてレコメンドしてくれるものってないですよね。自分の聞いた音楽の履歴とか嗜好性だったり、アクションに対するレコメンドはありますけど。

要は履歴とか好みとかというのは、自分が意識してる世界に基づいたレコメンですが、そこと違って体が実際にどう反応しているかっていうとこからのレコメンというのも十分領域としてはあるかなと思ってます。ただ、それだけになってもつまらないので、組み合わさると全然違うロジックからのレコメンができてくるかなと思います。

 

―AppleWatchみたいな時計をつけて、部屋の中にいて、生体情報を読み取って、音楽を勝手に変えてくれたりテレビにクーポンが出てきたりとか、そんな社会が見えてきますね。

パナソニックさんが出している、加速度センサーで寝返りなどの動きからエアコンに結び付けて、夏の寝苦しい時に空調を調整するアプリ(※1)が近いかなと思います。今までになかった生体データというのとソリューション、この場合ですとエアコンの調節というところですけど、そういう形で体の情報からアクションにつなげるというところをどんどん深堀りしたいと思っています。

※1 おやすみナビ

 

IoTNEWS 小泉

 

―まだまだ先があるというか、やらなければいけないことが山積みですね。

まだ1合目くらいですね。
私もともとヘルスケアとかメディカルをやってたわけではなく、ソニーで11年ほどコンテンツとかエレクトロニクスとかどちらかというと生活を豊かにする、楽しむというそういうもののビジネスに関わっていました。

生活習慣病の予防が大事だと言われてますが、メンタル疾患も同じで、なってからよりなる前の「どう防いでいくか」というところ、それを可視化できるものはなかったし、なかなか続かないという課題があります。

ログを取り続けることについても、目の前に差し迫った疾患を持ってるわけではない人たちが、ログを取っていくモチベーションって難しいと思います。私は、その辺を、ソニーでやってきたエンタメ的な要素にヘルスケアをぶつけて、「ヘルスケアエンターテイメント」というジャンルを作りたいという強い思いがあります。

ソニーで働いていたときにエンタメだけではなく、社会へのインパクトというか価値提供というところで、もう一歩深堀したいなという想いがあったので、音楽や映像といったもので、それが癒しにつながったりストレス解消につながったり、そういうのが可視化されてくると、また違った接し方ができると思っています。

実際、すでにヒーリング音楽を提供されている会社さんとお付き合いしています。ただヒーリングだけ聞いていると薬を飲んでいる感じになってしまうので、やっぱりスナックを食べたいじゃないですか。スナックを食べてるんだけど、実は健康にもいい、みたいなトクホみたいなものをメンタルの世界のソリューションの中でも繋げていきたいな、とそういう気持ちでいます。

 

―音楽を聞いてて、好きな音楽なはずだけど、今日はちょっとやだなって思う時があるんですが、そういうことですかね?

そうですね。

 

―好きだからといって、今聞きたいかどうかは一緒ではないと思います。そういう気持ちの動きとエンターテイメントが関わってくるのかもしれないですね。はじめに着想されたきっかけは何ですか?

きっかけは、今おっしゃられたようなこと同じような感じですね。音楽を聞いていて気分のコントロールみたいなものを身近なものでどうやったらできるかなと。それには定量化しないとできないじゃないですか。

そして定量化するにはこの心拍変動解析からストレスなのかリラックスなのか、バローメーターがあると定量化できるので、これをつなげたらおもしろいなというのが一番最初の発想ですね。

だから、メディカルでうつ病をどうやったら解明できるかとかそういう視点からではなかったんですけど、やってみると、そういう部分の課題の大きさというのは潜在的すごく大きいんです。

メンタル疾患に対応していくには、健康なうちから、どういう症状になってくると本当に危なくなるのかとか、健康時のデータ蓄積っていうのが必要なのですが、今までほとんどなされていないので、これからなんですよね。

ビッグデータを溜めるためには継続してもらわなければいけない、継続してもらうためには健康な人が飽きない仕掛けが必要です。それができてくると、どうなると精神疾患になっていくかとか、必然的に繋がってくると思うので、その辺の先々を見据えながらやりたいと思っています。

 

―私はいつもCOCOLOLOで測定すると、いつも、測定結果のアイコンが泣き顔になるんですが、まずいですか?笑顔なことが一度もなくて。寝起きも家でテレビみながらリラックスしてるときもダメでした。一番よかったのは、会社で仕事をしてて終わったときなのですが、これはダメですか?

それは仕事人間の証明ですね(笑)仕事しているときが一番バランスがいいってことなので、仕事してた方がいいかもしれないですね。

 

―わかりました。では、この生き方を貫きます(笑)。ココロの状態が良くない時の対処法は、どういったことがあるのでしょうか?

対処法というのはそんなにいくつもなくて、呼吸法が一番大事なんです。COCOLOLOが見てるのは自律神経のバランスなので、呼吸で吐く息を長くするというのはリラックス効果をあげるのにすごくいいんです。1対2の割合で呼吸するのがいいですよ。1の長さで吸って2の長さで吐く。吐く方を長くする。呼吸が整うとバランスがよくなってくるので、ヨガやウォーキングもいいですね。

 

―案外簡単ですね(笑)

はい。一番使い方として推奨したいのは、このカレンダー機能です。私の場合、日曜がストレスが高いんですが、トータルパワーが低くなっていて睡眠が足りていないとこうなりますね。

WINフロンティア COCOLOLO
日曜にストレスが多いというカレンダーになっている

 

ちなみに、先日TV番組で郷ひろみさんが測定をしたときに、彼は実年齢より20歳くらい若いトータルパワーでした。相当ケアされているみたいですし、ボイストレーニングもやってらっしゃって呼吸に関係するところも相当意識されてると番組で明らかになっていました。

私の場合は6月は64%(理想)、5月64%、4月は63%、3月も63%、日々の変動はあるんですけど、月単位でみてここから大きく外れる月がある時はよくないと見てます。

生活振り返ると思い当たることがあると思うので、そういうものを気づきにしていく、というのがぜひセルフケアとしては価値を出せると思うので、見せ方をもっと色々増やしていこうと思っています。

 

―直近で何かアップデートはありますか?

今、次のバージョンを準備してるんですけど、もうすぐ電子書籍が加わります。朝測った状態に対して、今日のおすすめの一冊というのがレコメンドされる機能が増えます。

 

―私は玄関マットが体重計にならないかと常々考えているんです。玄関を必ず通るし、スマホも必ず持ってるじゃないですか。勝手にビーコンか何かで認識してはかってくれればいいのになーと思っています。わざわざはかるのが面倒で。

おっしゃられた通り、何かのついでに取れちゃってたというのが世界が究極だと思います。

COCOLOLOは特別なデバイスは必要ありませんが、スマホのカメラで撮るというのはついでの動作ではないので、そのへんがもう一段課題だと思っています。我々の強みは解析ロジックで、デバイスにとらわれる必要がないというのが自由な部分なので、今後様々なデバイスに乗せて連携していくというのを目指しています。

 

―私は、スマホに雨雲レーダーを入れてるんですが、いつもはそのアプリを入れていることを気にしていないんですが、ぴょこっと通知してくれるのは助かっています。そんな感じで「ストレスやばいんじゃない?」といってくれるとちょっと休憩するか、という感じですよね。

そうなんですよ、気分転換のきっかけみたいなそういう価値が重要かと思っていて、おっしゃっていただいたように、「今ストレスチェックしてみようよ」という通知が、ビッグデータに基づいてパーソナライズしてくるとかなり面白いかなと思っています。

WINフロンティア COCOLOLO

―将来が面白そうなお話が色々聞けて面白かったです。ありがとうございました。

 

ウェアラブルデバイスで管理するヘルスケアというと、数値の上がり下がりをチェックして体の状態を知るというところでとどまっているものが多く、「楽しいから」というよりは体調や体重を管理・維持したいという理由で、比較的健康への意識が高い方が継続している場合が多いと思う。

しかし、板生社長が言うように「ヘルスケア・エンターテイメント」というジャンルが確立してくれば、無理なく楽しく健康維持ができてくるだろう。そうすれば、多くの方が毎日の暮らしに取り入れやすくなり、未然に防げる病気が増えるのではないだろうか。

IoTで実現されるヘルスケア・エンターテイメントが待ち遠しい。

 

【関連リンク】
WINフロンティア株式会社
COCOLOLO

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