自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

2015年10月、クルマの情報を取得する「あとづけIoTデバイス」で自動車保険料が安くなる というインタビューを実施した。

それから約1年後、サービスがアップデートし、保険だけではなくIoT時代のコネクテッドカーサービスが実現可能になるサービスの展開が始まった。今回も、株式会社スマートドライブCEOの北川烈氏にお話を伺った。

 
-お久しぶりです。今回アップデートした点を教えていただけますか。

はい、まず1点目ですが、前回お話した時にはOBD‐Ⅱだけでしたが、今はそれに3G回線が乘ったものや、シガーソケットとスマホでデータ補完するようなものも製品ラインナップに加わりました。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

コンセプトとしては、あまりOBD‐Ⅱや保険などに限らず、ひとつの規格に依存しない形です。デバイスは何でもいいと言うと少し語弊がありますが、いろんなものを用意してお客様のニーズに合わせて、解析のところを中心にしていくとうことをやっています。

OBD‐Ⅱがない車や、OBD‐Ⅱを使いたくないという方や、もう少し安くしたいと言うお客様でも使って頂けるようなプラットフォームにしていっております。OBD‐Ⅱはいろいろ深くデータが取れるのですが 、コスト面など制約も一部存在するため、われわれとしては「使ってもいい」というお客様はOBD‐Ⅱを使っていただいて、そうじゃない方はシガーソケットで給電するタイプで補完しています。さらに車内外のカメラなども取り組んでいます。

もう1点目は、データプラットフォームを公開しようと思っています。うちのサービスはエッジデバイスから解析して可視化するところまでを全部やっていますので、そこに機能を足しています。例えばよくあるのが、保険だとドライバーの安全運転度合いとか、距離は知りたいけど、燃費はいらないとか。リース会社やディーラーの場合、ドライバーの運転はどれくらい燃費が良いとか、従業員を管理したいとか、ニーズが業種によって異なります。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
株式会社スマートドライブCEO北川烈氏

そこで、当社のコンセプトとしては、AWSのように、デバイスも解析のメニューも、アプリケーションも自由に組み合わせて必要なものだけ使って頂くと、従量課金でチャージしていくようなモデルに移行していっております。

これまでは、「OBD‐Ⅱ ×(かける)保険」というビジネスドメインだったのですが、後ほど説明する商用車向けのソリューションや、車にまつわる広範囲なソリューションをカバーできるようになってきています。パートナーも募集していて、実際にサービスを提供されるリース会社さんとかディーラーと一緒にこのデータを活用してコンサルティングしようという話もしています。

例えば1000台くらいにスマートドライブを入れてみて、このデータを見れば、無駄な車両がどれだけあるか、といったお話ができます。さらに、地方や国のプロジェクトに強いパートナーさんと一緒に、例えば地方公共団体の車がどれくらいの無駄があるか、燃費がどのくらい良くなるかといったことを、当社のプラットフォームと一緒に使っていただくという話をしています。それが2点目です。

デバイスやクラウドサービス、いろんなモノと組み合わせて使うことを構想しておりますが、ゼロから構築すると莫大なコストが掛かってしまうので、初期投資をできるだけ抑えた形で、基盤の部分は共通化するというコンセプトでやっております。コンシューマー向けは、直接エンドユーザーに売るモデルもありますが、基本的には保険会社さんとかディーラーさんに、当社のプラットフォーム使って頂いて、ドライバーには無償で配るようなビジネスモデルが多いです。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

上記は前回取材していただいたときもありましたが、損保会社のアクサと現在提携しておりまして、いわゆる走行連動型の保険、テレマティクス保険を当社のデバイスと解析の技術を活用して頂いております。

特徴としては見て頂いて分かる通り、アプリはアクサブランドなのです。実際、当社のプラットフォームは、最終エンドユーザーに届けるところまで当社の名前を出す必要はなくて、最後の見た目だけをアクサに変える、○○ディーラーに変えるという具合にするのです。こういったホワイトレーベル製品もいろいろと提供もしているので、上手く組み合わせて使ってもらえる形になっております。

もうひとつのアップデートは法人向けで、法人車両の管理・従業員の管理・配送の最適化をやっていく製品です。これは完全にSaaS型で出しておりまして、月額1,480円です。車両の稼働率や、どれくらい従業員さんが効率的に乗っているか、安全運転の度合い、そういうものが一元管理できます。

実際今大手のコンビニの会社の物流系トラックや、配送系の会社の配送車両、MRの営業車両、といったところに使い始めてもらっているような製品です。

今までのデバイスはいわゆるIoTからだいぶかけ離れていて、デジタコとかドラレコといって工事をして大きいボックスをカーナビの下にガチャっと取付けるようなものだったので、どうしても工事に半日とか数時間かかっていたのですが、当社はデバイス差し込んでアプリとペアリングするだけという簡単さに加え、低価格です。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右:株式会社スマートドライブCEO 北川烈氏

 
-すごく安いですよね。

そうですね。基礎的な機能は1,480円で安いのですけど、例えばこれで配車のルートの最適化したり、営業マンの効率見たいという具合に利用する項目を増やしていくと、プラスアルファしたメニューが出せるようになっています。

また 、 営業支援システムとも結びつけていて、営業効率最適化や、勤怠の仕組みと紐付けることで、ドライバーの勤怠を見るようなこともリアルタイムに実現できます。

こういった点が普通のところ違う、いわゆる「コネクテッド化」だと考えております。『いる』『いらない』と選んで頂くと、選んだ機能に応じて従量課金されるような、そういった仕組みになっています。

 
-なるほど。テレマティクスができる世界を説明していくとしたらこういう事だということを、まさにやられている感じですよね。それを全部やれる会社もなかなかないので、すごいなと思ってお話を伺っていました。

ありがとうございます。ようやくコンセプトモデルから、ちゃんと実利が伴うIoT化、コネクテッド化というところが実現できてきた気がしています。

 
-こうやって例えば事故が減ったとか、タクシー会社の人で休日に勝手に営業車使ったりする人がいるからそれ把握したいとか、そんな話ってよく聞くのですけど、こういうニーズはすごく高まっていますか?

高まっていますね。やっぱりひとつは、安全運転にちゃんと力入れている会社じゃないとドライバーが採用できないそうです。

大手の会社になると保険に入らないというのがあるそうです。毎年膨大な保険料を払うよりよりは、事故が起きた時に1億2億損害賠償を払ったほうがトータルコストをセーブできるという理由からです。

よって保険に入ってない会社とかも結構あるのですよ。そういうふうに考えていくと、一件事故が減ると数億円の利益というとアレですけど、コストが削減できるのでそういったところもひとつのポイントかなと思います。

 
-なるほど。しかもこのデータをクラウドにどんどん集めていって、それをオープンデータ化していくという流れもIoTですよね。そこも既にデータの仕様が決まっているのでしょうか。

はい。APIの仕様が決まっていて、簡単にデータが取れます。今はパートナーさん限定なのですけど、例えば、車の無駄やルートの無駄も全部分かるので、そういうのを一緒にコンサルティングしていきます。

先述の営業支援系のクラウドサービスとインテグレーションしようというのもあるし、パブリック向けに出そうというのもあって、危険エリアのマッピングとか、この道路は急加速が多いという情報はパブリックデータとして公開しようと思っています。

あとは、まだできてないですが、例えば赤いポルシェに乗っている人は、ほかの人と比べてどれくらい燃費が悪いんだろうとか、こういう人ってここに行く傾向が強いとか、そういうドライビングビッグデータのようなところも今研究し始めているので、そこを対外的に出せるようにやっていきたいと思っています。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-面白いですね。ここまでクラウドができてくると、完成度が高いですね。データも結構集まりだしているのですか?

今は数千台くらいです。年内多分、万のオーダーはすぐ超えると思うのでメーカー横断的に古い車も合わせると、国内では一番先を走っているかなという気がしています。

とは言え、法人向けのサービスも始めたばかりです。今はクローズドベータということで、有償トライアルをやってもらっているのですけど、2016年9月から本格的にリリースしていきます。

 
-やっぱりスタートアップは動きが早いですね。

そうですね。今後より加速していきたいと考えておりまして、次に取り組んでいきたいと考えているのがロードサービスです。事故が起きたことや、盗難を検知して、高級車向けに見守りサービスを付けたりできるので、上の事例をどんどん増やしていくというところです。

最後が外部のデータソースなどの連携です。営業支援系のクラウドサービスもそうですし、今やりたいと思っているのは、家と連携して、クルマが家に近づくとクーラーが入っていたり、そういう全部がつながっていくような世界観というのを目指したいと思っています。

 
-なぜ以前やっていたサービスから、こういう方向に大きな舵をきられたのですか?

実は、もともとやりたいと思っていました。ただ直近何もない中でやっても、多分何もならないなと思っていて。まずは分かりやすい保険などに特化していたのですけど、保険がある程度見えてきて、それこそ数千とかデータ集まってきてるので、ほかの領域にも広げていったという意味合いが強いです。

こういうイメージでいくと、保険と車両管理は全然違いますけど、使ってる技術はほとんど一緒なので、ようやく手が出せるようになったというところです。

 
-ひとつのデータをいろんな見方をする事によって、価値を組み替えるという事ですよね。

はい。こっちから見たら保険料が安くなるけど、こっちから見たら安全運転のシーンになったりします。

 
-しかも公共データまで考えられているという事は、公共データに関してはどの車に付こうか関係ないですよね。別に業務用だろうがなんだろうが、フラグ付けるかどうかくらいですよね。

まさにその通りですね。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

 
-ますます面白くなってきましたね。形になってきている感触があります。

個人的にはカメラは、次のコネクテッドカーの主流になってくるかなと思っていて、車内で例えば高速道路で自動運転中に寝ていないかとか、降りた時に事故に合うということも検知したり、車外の車間距離見てみたり、信号守っているかとかそういう情報から入っています。

2020年くらいの車は、ほとんど車にこういうカメラが付いてセンサーデータをいっぱい集めて・・・とよく言われていると思うのですけど、そういうデータをどう解析するのとか、どうサービス化する事例はまだありません。うちのアプローチは、古い車にも後付けでそういうもの付けて、データ集めて先にデータのエコシステムを作っていくというところなので、カメラは特に今注力したいところです。

 
-公共的なインフラにどんどんなっていくような感じでイメージがつくので、そうなってくると車のメーカーなども御社と組みたいという会社も出てくる可能性ありますよね。クラウドをゼロから作って情報集めるって結構大変じゃないですか。

そうなのですよ。最近、少しずつメーカーさんからもお問い合わせ頂くようになって、「こういう事やりたいのだけど、クラウドの構築から運用までノウハウないので、そこだけお願いします」とか。今おっしゃられたようなところをやっていきたいですね。

 
-結構いろんなところで賞も取られたりしていますが、PR的には上手くいっている方なのですか?

多分取り上げていいただく機会は多いと思いますが、ここから先は「便利だよね」というところから、「新しい価値観」を訴えるフェーズだと考えています。

 
-いつか誰かがこれをきれいに整理していく流れがどこかであると思っていたので、本当にすごいと思います。全部のデータを一社が取ることは不可能なので、じゃあこっちのクラウドとこっちのクラウド繋いで、さらに誰かがそれをマッシュアップしていくような流れとかというのはあるのだろうなとは思っているのですが、それにしてもそれなりに巨大なクラウドがまず存在しないと、マッシュアップしたくもならないじゃないですか。

例えば、100しかないものばかりが100個あったって繋がろうとならないじゃないですか。やっぱり1万10万100万って数が増えてきて巨大なクラウドだねと。サービスとしてのIoTの系ができているという、そういうひとつの世界観ではなくて、もうちょっと大きな目で見た時に、クラウド間連携がきちんとできてくるという流れですね。本当に社会インフラになりそうな感じがしてきましたね。

ありがとうございます。早くオフィスの近くを通っている車にも全てつけられるといいなと思っています。

自動車のビッグデータを自社サービスに活用できるプラットフォームを提供 -スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

 
-本日はありがとうございました。

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