NEC、需要増加による電波混雑を見越しリアルタイムに電波利用状況を可視化するセンシングシステムを開発

NECは、IoT機器に対する無線周波数の動的割り当てや、イベント時や災害時の無線周波数の臨時割り当てなど、電波の有効活用を進めるために、実際の電波の利用状況を計測してリアルタイムに可視化する電波環境センシングシステムを開発した。

今回NECが開発したシステムは、「小型の電波センサ」と「電波状況を可視化するソフトウェア」で構成される。本センサは、テレビ放送や携帯電話など主要な無線システムに適する30MHzから3GHzの幅広い周波数の中から、計測したい周波数の電波のみを抽出し、従来比約100倍(注1)高感度で計測できる。また、計測したい電波とは異なる方向から来る電波を排除するとともに、計測したい電波を強めることで、強い電波を放射している送信局の近くでも、微弱な電波を高精度に計測を行える。また、本ソフトウェアは、今回開発した電波センサ間の電波状況を推定して補間し、計測したいエリアの電波状況を網羅的に可視化する。

これらにより、各地点の電波の強さの分布や時間変化を、周波数毎に実測し、リアルタイムに可視化することで、周波数の空き状況など実際の電波利用を確認できる。

今後、スタジアムや駅・空港などの人口密集地での電波環境のモニタリング、無線設備の最適配置や運用計画の立案、周波数管理や不法電波の監視など、様々な領域での応用を目指し、2020年に向けて実用化が進められている。

NECは「社会ソリューション事業」に注力しており、今後もIoTなど社会インフラを支える電波資源を効率的に活用するための技術開発を強化していく予定だ。

背景

近年、無線通信の大容量化、大規模化、IoTなど適用領域が拡大しており、今後さらにIoT 機器が530億個程度(注2)まで増加するなど、電波の利用需要がさらに増加すると予想されている。

需要の増加により、割り当て可能な無線周波数帯域が不足すると、膨大な数のIoTセンサからの情報収集や、イベント時や災害時に必要な無線通信が滞る可能性がある。このような周波数枯渇時の無線通信の障害を回避し、安定的な無線通信を実現するには、様々な場所で時々刻々と変化する空き無線帯域を切り替えて利用する必要が出てくる。そのためには、まず、電波が実際どのように使われているか実態を調査し、利用されていない周波数を発掘することが求められる。

今回、NECは、従来比100倍の高感度なスマートフォン大の小型電波センサで高精度に電波を計測し、30MHzから3GHzの幅広い周波数の電波利用の実態をリアルタイムに可視化する電波環境センシングシステムを開発した。

本システムの特長

1. 幅広い周波数の電波を小型センサで高感度に計測可能

NECはアンテナで受信した電波から、計測したい周波数の電波のみを抽出する「マイクロマシン(注3)応用可変フィルタ」を開発を行った。

従来、電波利用状況の測定には、計測したい無線周波数毎にフィルタを準備する必要があったが、フィルタで検知する周波数を変更可能にすることで、ひとつのフィルタで5つ分のフィルタの機能を実現できる。さらに専用の受信IC(広帯域受信CMOS IC)では、計測したい周波数を増幅し、不要な周波数を低減する機能を1チップに集積し、実装面積を1/10以下程度に縮小することで、電波センサを従来のデスクトップPC程度からスマートフォン並みのサイズに小型化を行った。

これらにより、電波センサの設置場所を専用の鉄塔に限定せず、街路灯やビル壁など様々な場所に設置できるようになり、その結果、多数のセンサの設置が可能となり、無線周波数の計測が可能になった。
 

マイクロマシン応用可変フィルタ広帯域受信CMOS IC(
図.マイクロマシン応用可変フィルタ(左)と広帯域受信CMOS IC(右)

2. 調べたい方向の電波のみをセンサが選択して高精度に計測可能

観測したい無線周波数帯の近くに複数の不要電波が存在した場合でも、ターゲットとなる無線周波数を精度よく測定するために、近傍の不要波の除去をおこなう「アナログ・ヌルステアリング技術(注4)」を開発した。
本技術により、計測したい電波とは異なる方向から来る不要電波を1/100に低減でき。これにより、強い電波を送る送信局のそばでも、微弱な電波の計測が可能となった。

3. 計測したエリアの電波利用状況を網羅的に可視化

対象とするエリア全体で周波数を活用するには、電波センサを設置した場所だけでなく、設置されていない場所の電波環境も計測する必要がある。
今回、NECは周波数や電波強度、計測時刻など多様な実測データを収集し、そのデータを用いてセンサが設置されていない場所の電波状況を自動的に推定して補間するソフトウェアを開発した。これにより、例えば十分な数のセンサが設置しにくい高層ビルが密集する都市部でも電波状況を網羅的かつ高精度に推定し、リアルタイムに可視化することが可能になる。

NECは今後、計測できる周波数帯を拡張(30MHzから6GHzまで)し、周波数共用の実現を目指した研究開発を進めていく予定としている。

今回開発された電波環境センシング技術の一部は、2015年度からNECが参画している、総務省の「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発~」の一環として進められてきた研究成果である。

(注1)2012年当社発表に対する相対値。

(注2)IoT機器が530億個程度:
2020年までにインターネットにつながるIoTデバイスの数。総務省「平成27年版情報通信白書」より。

(注3)マイクロマシン:
Mmオーダーからμmオーダーの超小型の機械構造のこと。MEMS(Micro Electro Mechanical System)とも呼ばれる。

(注4)アナログ・ヌルステアリング:
アナログ回路によって、アンテナの指向性のゼロ点を形成し、その方向を走査する技術。

【関連リンク】
日本電気(NEC)

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