JX金属グループ、工場作業者の安全性向上に富士通のIoTサービスを活用

富士通は、JX金属株式会社に、作業者の転倒時の位置や状態などを遠隔で把握し、作業時の安全性向上を図る実証実験に、「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(フジツウ デジタル ビジネス プラットフォーム メタアーク、以下、MetaArc)」(注1)で展開している「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(フジツウ アイオーティー ソリューション ユビキタスウェア、以下、ユビキタスウェア)」の検証用セット「パイロットパック」を提供した。JX金属は、グループ企業でめっき加工を手がけるJX金属プレシジョンテクノロジー株式会社(以下、JXPT)の館林工場で、本実証実験を9月に実施し、効果検証を行った。

JX金属グループではIoT社会をけん引する高機能金属素材(注2)を製造しており、安全管理においてもかねてよりIoTの活用を模索していた。さらにJXPTの館林工場では、作業者の安全衛生管理体制の一環として、急病など非常事態の発生時に早急な対応がとれるシステムづくりを検討していた。本実証実験では、人の転倒や転倒時の位置情報などを把握する「ロケーションバッジ」(注3)と、熱ストレスレベル(注4)など人の状態を推定し、把握することができる「バイタルセンシングバンド」(注5)を装着し、各所に配置したビーコンにより位置情報を測定した。管理者は、作業者の状態把握や転倒事故発生時のアラームによる気づきなど、作業者の安全を重視した見守りを行うことができた。

富士通は、今回の実証実験で得られた結果を同社のサービスに活かし、JXPTの作業者に対するさらなる安全管理レベルの強化、およびJXグループの他工場への展開について支援していく。

背景

JXPTの館林工場では、一人作業時の急病など、非常事態に備えた作業員の安全確保を、安全第一の考えのもと、改善のテーマと考えていた。今回、JXPTの館林工場で従来より取り組まれてきた、安全活動のさらなるレベル向上を図るべく、富士通の「ユビキタスウェア」を活用し、現場作業における安全管理の効果を検証した。本実証実験を踏まえ、事故の未然防止や万一の事故発生後の早期対処などの安全管理体制づくりに向け、実際の作業環境における操作性や使いやすさなどの運用確認を行った。

実証実験について

1.実施場所
JX金属プレシジョンテクノロジー株式会社様 館林工場 (群馬県館林市)

2.実証内容
・作業者の転倒検知と位置の把握
富士通独自のアルゴリズムによって作業者の転倒を高精度に検知し、遠隔の管理者に位置情報を含めてアラームをメールで通知。
・作業者の状態管理
管理者が作業者の熱ストレスレベルを把握し、遠隔から作業者一人ひとりを見守る。

3.提供システム

本実証実験では、「ユビキタスウェア」を簡単に事前検証できる「パイロットパック」をレンタルで提供した。そのほか、顧客の現場に必要なデータ活用クラウド基盤の提供、システム設計や機器の設置、専門家による技術相談にも対応している。

1.装着用デバイス
・転倒の検知、位置情報や動線の把握が可能な「ロケーションバッジ」
・温湿度やパルス数(注6)を計測・数値化した熱ストレスレベル、活動量など人の状態を推定し、把握することができる「バイタルセンシングバンド」

2.位置測定
・位置把握に必要なビーコン

3.通信ゲートウェイ
・IoTゲートウェイ(固定式通信ゲートウェイ)
・スマートフォン「FUJITSU Smartphone ARROWS M305/KA4」(移動式通信ゲートウェイ)

4.データ活用クラウド基盤と活用技術
・IoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」
・センサーアルゴリズム
・データ可視化アプリケーション

4.顧客の現場に合わせたカスタマイズ

顧客のニーズや現場の状況に応じた環境構築を行った。

1.作業現場に合わせ、2種類の通信ゲートウェイを組み合わせて環境を構築
特定のエリアで作業者の状態を把握する場合は固定式の通信ゲートウェイを設置、巡回などの単独作業時には移動式の通信ゲートウェイ(スマートフォン)を作業者が携行するなど、顧客の現場にあわせた環境構築を行った。

2.位置情報を取得するためのビーコンを最適に配置
構造物や機械に配慮し、一つひとつのビーコンの電波強度を調整し、見通しの悪いエリアをきちんとカバーできるよう、最適な配置を行った。

3.アラーム発生時にはメール通知を実施
顧客が現場で把握したい情報のみを通知するようアラームの通知機能を設定し、作業者の状況をデータ可視化アプリケーションで確認するだけでなく、管理者にメールで通知することで、運用を見据えた検証を行った。

5.実証結果

<転倒検知>
・階段、通路で実証試験を行い、転倒を検知し、管理者に転倒の発生と位置情報をメールで通知できた。

<作業者の安全管理>
・熱ストレスレベルが高い場合、アラームが管理者に通知され、遠隔で作業者の状態を把握することができた。
・熱ストレスレベルが、実際の作業者の状態や体感と合っていることを確認した。

 

注釈

注1 MetaArc:
クラウド、モバイル、ビッグデータ、IoT、AIなどの最先端技術と、富士通SEの知見・ノウハウを融合したデジタルビジネス・プラットフォーム。

注2 IoT社会をけん引する高機能金属素材:
スマートフォンやタブレットなどの部品に使われるスパッタリングターゲットや圧延銅箔などの素材。

注3 ロケーションバッジ:
正式名称は、「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE ロケーションバッジ」。気圧や加速度などセンシングしたデータを同社の「センサーアルゴリズム」で分析・解析することにより、転倒や転落の検知が可能。

注4 熱ストレスレベル:
日本生気象学会の「WBGTと気温、湿度との関係」を基に、温湿度にパルス数を組み合わせて算出した熱ストレス状態を「安全」「熱ストレスレベル(低)」「熱ストレスレベル(中)」「熱ストレスレベル(高)」の四段階に分けて推定。

注5 バイタルセンシングバンド:
正式名称は、「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE バイタルセンシングバンド」。単純な温湿度によるアラームでなく、同社の「センサーアルゴリズム」により装着者それぞれの環境指数や身体の状態を加味した熱ストレスレベルや活動量を推定。なお、本製品は医療機器ではなく、状態の測定・推定結果が事前に設定した通知条件に該当した場合、アラームで知らせるもので、診断するものではない。

注6 パルス数:
拍数/分を推定。

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