「A connected world of opportunity」ARM買収後の戦略

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半導体設計資産(IP)サプライヤーのARM(アーム株式会社)は 12月2日、年次イベント「ARM Tech Symposia 2016」を都内で開いた。メディアや半導体業界を驚かせたソフトバンクによる買収発表の半年後、ARMは年次イベントをきっかけに今後の戦略と新商品を発表した。

アーム株式会社(ARMの日本法人)の代表取締役社長内海弦氏とソフトバンク株式会社代表取締役社長兼CEO宮内謙氏が挨拶し、続いてARMExecutive Vice President and Chief Commercial OfficerのRene Haas氏とSystems and Software group, VP and GM Monika Biddulph氏 がそれぞれの発表をした。

Haas(ハアス)氏は「A connected world of opportunity」 と題した発表で、買収後のARM戦略説明を行った。ARMは100%ソフトバンクの子会社になったが、以前と変わらず、ブランド名、人材、戦略、パートナーシップを注力しているビジネスモデルを維持する予定であると述べた。M&A(合併・買収)の場合によくあるリストラもなく、逆にグローバル規模で人事を増やし、イギリスだけでもスタッフを2倍に増加する方針である。

ARMはソフトバンクとのビジョンを共有することで、注力技術分野における発展と投資活動、または新市場参入の促進を期待しているという。一方、ソフトバンクは海外の技術を日本に持ち込み、日本で拡大する予定であるという。両社はIoT分野でのビジネスに集中し、ARM技術ベースのCPUをIoTで広く展開する予定だ。

2013年、ARMはIoT に関する調査を依頼し、その結果、90%の企業が3年後IoTを採用する予定だったと分かった。2016年に再度調査を依頼した結果、75%のビジネスがIoT に影響されたことが明らかになった。

しかし、同レポートによって影響された分野だけでなく、IoT拡大を妨げる要因としてはセキュリティ、コストと知識不足が取り上げられた。ハアス氏によると、IoT市場は従来の市場より複雑である。形成段階であるため、IoT市場は非常に断片化されていることに加えて、製品のライフサイクルは他より長く、効率的なIoTシステム構築に必要な知識とコストは大きいと述べた。

10月にアメリカで起きた大規模DDOS攻撃の後、IoT業界はさらにセキュリティを重視するようになった。そこで、ARMはIoTが進むため、3つのレベルでセキュリティーの重要性を訴えている。

ARMは得意としているデバイスレベルでのセキュリティのためTrustzoneと呼ばれる技術を使い、IC チップを安全モードに切り替えることでハッキング攻撃やマルウェアから守られる仕組みになっている。しかし、そのチップがネットワークにつながると、通信面でセキュリティが必要となってくる。ここでエコシステムの働きかけが不可欠である、とハアス氏が語った。今まで暗号化などが使われたが、IoT産業が一体となって、通信プロトコルに当てはまるより厳重な基準を定めるべきだと訴えた。

また、ARMが数か月前に発売したmbed Cloud IoTプラットホームはチップからクラウドまでのセキュリティを配慮し、スマホの更新と同様に、クラウドで更新繰り返しながらセキュリティを保護する仕組みだ。上記に言及されたDDoS攻撃に使われた単なるセキュリティ設定が実施されず、アップデートされなかったルーターだった。将来、ネットワークにつながる機械は何百万もあるとしたら、そのファームウェアの更新やセキュリティ管理を可能にする機能は不可欠になってくる。

また、ますます進んでいるコネクテッドカーは従来、100CPU を数える自己充足なネットワークだったが、今度インターネットにつながる際、セキュリティが完備されなかったら実現できないものだ。

ハアス氏は、オートモティブ分野で使われている大半のCPU はARM技術をもとにしたものだと述べた。また、mbed Cloudネットワーク上デバイス・ライフサイクル・セキュリティを持っているソフトバンクとARMが同分野に膨大なビジネスチャンスがあると判断している。他に遠隔ヘルスケアやスマートシティ、あるいは数十年イノベーションが少なかった建設業界や農業などの分野においても、IoTが新しい価値を生み出すと両社が確信していると述べた。

ARM社はパートナーシップやエコシステムが成功のもとであると認識し、IoT分野も成功するためのエコシステム創出を訴えてきた。現在パソコン台数を大きく上回っているスマートフォン市場の成功理由を考えると、セミコン、機体メーカーと一番重要な役割を果たしたアプリ開発者のエコシステムのおかげであろう。ガラケー市場の場合、同じメーカーはハードウェア、ソフトやアプリを開発していたため、能力と独創力に限界があった。

現在のIoT市場はまるでそのガラケー市場のように垂直統合されている。非常に幅広いIoT分野を考えると、大規模のエコシステムが設立され、IoTアプリケーション開発で市場は商機で溢れ出す。ハアス氏によると、日本はモバイル、オートモティブや一般的なコンピューティングという要素が揃っており、IoT分野が有望である。そして、日本のIoT市場の可能性をソフトバンクと一緒に開発する覚悟を示した。

しかし、ARMはIoT分野だけではなく、最近発表された日本の次期スーパーコンピュータープロジェクト「ポスト京」に富士通、理研と共同し参加している。ARMv8-Aアーキテクチャが同プロジェクトに選定された。

ハアス氏の発表の後、Monika Biddulph氏(Systems and Software group, VP and GM)が「Sustained innovation」スピーチを通して、ARMの新商品を説明した。

近い将来、、スマートフォンはパソコンの役割を果たすため、より高い機能性や効率性が求められている。将来のユースケースを実現するため、ARMはエネルギー効率性を重視し、Cortex A-73 (従来技術の1.3倍の計算能力)と Mali-71(1.5倍の性能)を2016年に発売した。

また、リアルタイムビデオ、VRやゲームによる新しいマルチメディアIPが要求されている。ARMのMaliGPUは2015年に世界中で最も売れいるGPUだったが、さらに2016年10月からMali-V61という新しいビデオプロセッサ提供が始まった。同プロセッサは全世代のコデックに比べて、50%のビットレートを削減し、4Kストリーミングを可能にする。

続いて、VRとARの普及、次世代グラフィックと計算API Vulkanの開発や急速に高まっているスマートフォンの解像度がグラフィック分野発展を後押ししている。VRや高解像度など、将来の使用事例を配慮し、ARMは1.6倍向上した効率性のMali-G52を開発と発売した。

ARMはイメージングや組み込みコンピュータービジョン技術会社Apical(アピカル)を買収し、同社の技術を使い、次世代機械が環境情報を理解し、それに基づいてインテリジェントに動作できるような技術を目指している。Apical技術はARMのMaliグラフィック、ディスプレーやビデオプロセッサ技術を補完している。その中、Assertive Display、Assertive CameraとSpirit(生センサーデータあるいはビデオを機会可読画像に転換するチップレベルでコンピュータービジョン技術)は同イベントでも紹介した。

さらに、ARMはIoT機器向けの新シリーズのCortex-Mを発表した。Cortex-M33/M23プロセッサはARMv8-Mアーキテクチャを基にしており、TrustZoneセキュリティに採用している。ネットワークに繋がっているインテリジェント機械用効率的なセキュリティを提供する目的で開発されたため、ハードウェアによる隔離され、別途CPUを求めないプロセッサである。また、マイクロコントローラ使用に最適化されている。
他に、IoTの基礎要素として使える製品Core Link SIE-200、Trust Zone CryptoCell-312(low power, low area機械用のセキュリティソリューション)、ARM Cordio(超低電力消費無線通信ソリューション)などを紹介した。

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