NECはIoTで社会ソリューションを実現する

古くは半導体や、PC、フィーチャーフォンを製造していたNEC。通信技術の根幹部分をになってきたり、各種公共事業などにもソリューションを提供してきている、ハードウエアだけでなく、ソフトウエアにも強い企業だ。

そんなNECのIoTに関する取り組みについて、コーポレートマーケティング部、山田さんと鈴木さんにお話を伺ってきた。

 

‐上図に描かれている、”Orchestrating a brighter world”というメッセージですが、どういうお考えなのかを教えてください。

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コーポレートマーケティング本部 山田さん

 

山田 NECは現在、”Orchestrating a brighter world”というメッセージを掲げてIoT時代の社会価値を創造しようとしています。いろんな人が寄り添って7つのテーマを定義して明るく、賢い社会を作っていくという価値創造をしようとしているのです。

立ち位置としては、お客様とともにIoTを使ってビジネスとして成果を得ましょう、という『ソリューションプロバイダー』です。

ただ、それだけだと通常のソリューションプロバイダーと変わりがないので、『IoTのイネーブラー』という言葉を使ってますけど、いわゆる我々は技術に立脚した会社なので、色々な研究開発に投資をし、そういった技術を生かしてNECの強み、通信に強いということであったり、セキュリティに力を入れているプロバイダーとしてお客様のお手伝いをしております。

また、社会とか産業に役立つようなことを自分たちでも仕掛けています。

これらの活動、つまり共に社会価値を創造するというのが『オーケストレーター』です。

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IoTNEWS代表 小泉

 

―具体的にどういった取り組みをされているのでしょうか?

山田 NECにとってIoTは、ポッと出てきた考え方ではなくて、M2Mだったりセンサーを繋ぐものだったりで、例えばシンガポールの実証実験や、海底ケーブルの中にセンサーを埋め込んで地震のアラートの情報を取ること、アルゼンチンのティグレ市というところで2人乗りの監視をカメラが50台ほど設置されて地上からとらえて画像解析をしている経験など豊富にあります。

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―多岐にわたる実績があるのですね。他に力を入れられている分野はありますか?

山田 もう一つの柱としてセキュリティを力を入れています。

IoTのシステムを大規模に作る時にセキュリティについては非常に難しいところがあります。サイバーアタックが世界の色々なところで起きるんですが、様々な機器に埋め込まれている800万以上のセンサーから発生する情報を、リアルタイムに受け取っています。情報量としては、1日あたり200テラバイト程度ですが、それを分析して、機器に対処法をフィードバックしています。

 

―エンドポイントにある機器のセキュリティはIoTの世界ではとても大きな課題になるといわれているのですが、すでにそういう活動をされているのですね

山田 IoTというと、インダストリー4.0の部分は立ち上がりが顕著ですが、NECは社会全体をみているので、コンシューマの領域と、インダストリーの領域、パブリックの領域というあたりでもIoTがつかえるのではないかと考えています。そういったソリューションがいくつもあって、具体的な事例がいくつもあります。

例えば、画像認識です。画像の認識技術を使って捉えるというのが、NECの特徴です。顔認識の技術などの独自の画像認識技術を使った、小売業におけるVIPを識別できるソリューションがあります。

他にも、カメラでとらえた商品の画像とあらかじめ登録した商品の画像を照合したりできるソリューションなどもあります。これで、瞬時に複数の品目・数量のものを特定したり、商品の過不足をチェックすることができるのです。

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-確かに画像を軸に検品処理をやるというのは面白いですね。以前、RFタグで検品をするソリューションがでましたが、価格の問題があってうまく普及していません。

山田 品川の方にショールームがあって、画像ソリューションのデモがあります。例えば、ネジがひとつひとつ番号がついているんですが、それが同じものなのか、個体識別は難しい。それを画像認識で何番の部品かわかるのです。

 

-これは、大幅な検品に関する人件費の削減に貢献しますね。

山田 例えば、旅行会社のパンフレットの微小な修正などは、人が検品すると見過ごすことが多いのですが、画像認識の精度だと確実に間違いを見つけることができます。

 

-土砂災害検知も興味深いですね。

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通常は温度から湿度から振動から様々なセンサーを設置する必要があり、「これから地滑りが起きるぞ」というのを見極めなければいけないのですが、NECは土の水分量だけで、土砂斜面崩壊の予測を高精度に算出しています。センサーの種類をたくさん置かなくていいのでコストを圧縮することができます。実際、実験のレベルでは10~40分後に斜面崩壊が発生しました。

また、豊島区で災害時にどういう道が混雑するかという状況が、画像認識で人の固まり状況がわかるというようなソリューションもあります。

 

-防災全般についてはどうですか?

山田 仙台で国際防災会議という世界会議が行われています。災害が多い国というのは日本やアジア、しかも沿海地域が多いのです。非常に不幸なことではありますけど、多くの死者が出てしまうのは水害が多くて、そういったところに防災や減災というのを先進国である日本が主導して、対策を考えてみましょうという考えがあり、そこにIoTの考え方で生かせるのではないか、我々の価値が発揮できるのではないか、と思っています。

あと、水の漏水の管理です。例えば、ロンドンと東京は全くちがって、水が漏れまくっています。

飲める水は、世の中にある水のうちのたった1%しかないと言われています。実は、日本は水を輸入している国でして、もったいないという文化もありますし、非常に整備された、東京なども整備されていい環境なんですが、実際は世界でみると漏れまくっていて、貴重な水の奪い合いになってます。

水というのは水ストレスといって、国連も注目していて、とても今インパクトのある人類全体の課題としてありますので、そこに水のマネジメントをきちんとやっていくということに着目しています。

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鈴木 ソリューションでいうと、先ほど山田が申し上げたようなコンシューマー向けのものではなくて、社会インフラで使っていただくからには常に正しく動いて可用性が高いというのはかならず求められますので、そういうアーキテクチャを検討しています。

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すべてのソリューションは、この5層モデルで統一をしており、各層で新しい技術が出てきたら、各レイヤーでその新しい技術を吸収して、他のところには変更なくシステム全体が進化できるようにしています。

センサー変わりました、デバイス変わりました、といって毎回全部直すのはすごく大変ですし。

 

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コーポレートマーケティングの鈴木さん

 

-この図でいうと、IoTにおけるセンサー間の近距離無線のプロトコルってあまり決まってないと思うのですが、どこかで決めないといけないけどプレイヤーが多すぎて折り合いがつかないですね。

鈴木 レイヤーで機能をきることによって、エンドとのプロトコルの管理を図の近距離ネットワークという層でやろうとしているので、そうすると、下がかわっても、近距離ネットワーク層の下の部分ところだけを変更すればいいのです。そうするとクラウド側にのってるアプリケーションをデバイスのプロトコルの変更を気にしなくてもずっと使い続けることができるというコンセプトです。

これまで出しているソリューションも、このアーキテクチャでリリースしているので、技術が進化しても使い続けることができます。

 

山田 通信の規格で、5Gという規格があるんですが、その規格の中で「標準化」をNECは働きかけていまして、いわゆるこの下の矢印がたくさんついている近距離ネットワークの層、ここの通信量がとても多いのですが、この規格にNECが採択された仕様に基づくと、通信量を減らすこともできるのです。

この層は、制御信号が行き来してますので、それをぐっと圧縮して、通信の負荷を減らす、というのはNECから提案して、標準化で採択してもらっています。

 

鈴木 我々独自のプロトコルとか、独自のAPIをご提供するのではなく、できるだけ標準化の部分にのせていって、広く使っていただくことで、お客様には自由な選択の幅をご提供するのがポリシーとなっています。

 

-大手の通信キャリアは、広域ネットワークの方をみがちなので、近距離ネットワークのことは海外のベンチャーと組んだり、というアプローチが多いんですよね。

なかなかIoT全体をサポートできるような通信規格の話にはなかなかならなくて、もうちょっと全体でみてくれる人はいないのかと思ってたんですけど、御社みたいな会社が働きかけていらっしゃるんですね。

山田 通信の世界では、近距離のネットワークも5Gも入っているんですよ。その中での通信規格というものを標準化の中に取り込んでいきたい。

 

-5Gの規格自体がまだはっきりしていないですよね。

山田 規格については、ドラフトの段階でどんどん出していきます。通信の新しい方式とか良い方式を普及していくことは私どもの通信の研究機関を中心に、ヨーロッパにも研究所あるんですが、そこで働きかけています。

 

―ヨーロッパではベルギーなど、実際にスマートシティなどの実証実験をさかんやっているので、ヨーロッパで色々決まっちゃうのはわかるような気がします。

山田 ある種モノづくりの世界では、オールジャパンというのも大事なのかなとおもっていて、日本のモノづくりをひとつの産業全体として盛り立てていくのは、日本としての危機感もあると思います。

「バリューチェーンイノベーション」といっているんですが、モノづくりの中でIoTを使っていくということで、モノづくりの拠点となる工場、そのあとに出荷したり、部品を調達したりなどのプロセス全体が進化します。

IoTの世界ですと。最新のソフトウェアにバージョンアップされているとか、常にコネクティッドな状態で、私どももICTの機器をお客様にお納めしたりしますので、そのセンサーが何か故障の兆しを検知すれば、お伝えして部品を交換する、という使い方もあります。お客様に納品したら終わりというわけではなく、その商品を魅力的な状態を保ったり、価値をあげていくモノづくりの改革なのです。

これをモノづくりの改革、この考え方をひろく皆さまと共有し、研究会のようなものを立ち上げたりして、賛同していただいている企業様と一緒に研究に取り組んだり、というオーケストレーターの役割も果たしたいと考えております。

 

―GEのジェットエンジンの例などをみると、保守という名目で、エンジンの状況や燃費の状態をつぶさに検知し、常に最新・最高の状態にもっていくことで、競合他社をシャットアウトする、成果が出た分をレベニューシェアする、という動きもあると思うのですが、これからは、IoTによってビジネス自体も変わっていくのかもしれないですね。

山田 難しい話になるかもしれませんが、データがたくさん集まると、データがより価値のあるデータを生むということがあります。それのポテンシャルを秘めているのがIoTの世界です。

鈴木 例えば、NECには異種混合学習技術というものがあるのですが、「全然違うデータ形式のものを分析して、マッチングする」という技術を持っています。この分析によって新たなる価値を生み出すのではないかと期待しています。

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※異種混合学習技術とは、例えば施設毎の過去の電力消費量や天候、カレンダー・イベントなど、全く形式の違う膨大なデータを分析して価値のある結論を導きだす技術のこと。例では、学習の結果に基づいて今後の電力需要予測を30分単位で予測するというものだ。

 

-インターネット上では、Googleの検索技術がこの取り組みに近くて、様々な情報を解析して消費者に答えだけ見せることで体験できますよね。この技術は独自で作られているんですか?

鈴木 はい、弊社の研究所の研究結果です。

山田 末端のセンサー類からデータが吸いあがってきて異種混合学習という機会学習の処理を済ませると、相関が出てきます。例えば気温が何度あがったらアイスクリームがこれだけ売れますというような例があります。

-どんどん進化してリアルタイムな分析ができてきているのですね。最近はバッチ処理も減ってきていて、すべてのことをリアルタイムで処理するというような基幹業務システムとなる時代も近いですね。

 

——

メーカーであり、ICTのインテグレータという側面も持っているNEC。そのIoTの取り組みは当然のことながら広範囲だ。モノを作る、価値が出るためのソリューションを提供する。そのソリューションを提供する中でも、なるべく将来にわたる無駄がでない構造を考え推進する。通信規格も独自路線に走らず、標準化の推進も行う・・・。と、必要なことは全方位で取り組んでいるのがよく分かった。

技術を追求するだけでは、IoTの社会はやってこない。あくまで、技術をどう活用するか?を考え、実現していくことが大事だ。

こういった総合ソリューション企業の存在が、バラバラに散らばっているIoTの技術をまさに、オーケストレーションしていくのかもしれない。

今後も個別のサービスや技術がNECからでてくるのが楽しみだ。

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