設備同士をリアルタイムに繋ぐ「EtherCAT」 ─アドバネットインタビュー

今回取材を行ったアドバネットは、ゲートウェイ、クラウドプラットフォームとEtherCATソリューションの提供を行っている。今回、株式会社アドバネット IoT Business Unit Accounting Manager 福島哲哉氏、プリセールス FAEマネージャー 右谷仁孝氏に同社が提供しているEtherCATソリューションのお話を伺った。

─早速ですがこのEtherCATソリューションについて教えてください。

弊社の標準品の一つである、Intel様のAtomプロセッサを搭載した小型の組込ボードから構成されるBOX型コンピュータに、PCI Expressのアドインカードを挿してEtherCATマスター通信を実現しています。EtherCATは産業イーサネットであるオープン・プロトコルの一つであり、様々な機器制御が出来ることが特長としてありますので、各ベンダー様にロックインすることなく、各社それぞれの工場で使われているセンサーやモーターをつないで制御をしています。

黄色いケーブルがいわゆるカテゴリー5で、事務所にあるような普通のインターネットのケーブルです。本構成にて、約100Mbpsが出ています。工場のCANやデバイスネットでは製品の画像検査を行う場合に帯域が足りません。そこでレーテンシーを小さくしたり、通信速度を早くしたり、リアルタイムに処理をしながら生産性を上げたいという要望にマッチするのが、このEtherCATというコントロールオペレーションテクノロジーになります。

弊社のマスターカードからデータパケットが約250マイクロセックの速さで送信されています。一般的な工場では精々1,000マイクロセックなので、このパケットを4回やりとりしたとしても、まだリアルタイムの中に納まります。当然、どこかが遅いとそこがボトムネックになりますので、最近では動きの誤差をナノセック単位で抑えるというのがトレンドになっています。

弊社製品の特徴としては二つあります。一つ目はデッドタイムを作らないために、リング状にケーブルを繋いでいます。リング状にすることで何かの拍子にケーブルが切れてしまってもラインは止まりません。二つ目は論理的なアドレスをマスターにて認識をしているため、どの機器間でケーブルが切断されているのかも把握できます。2箇所でケーブルが切れるということがない限り制御は止まらないので、ある程度の余裕をもってケーブルの交換を行うことができます。

─それぞれの機器も相当早くならないと速度が活かせない感じがしますね。

昔のようにソフトなどEtherCATのスレーブ外で処理をすると間に合いません。スレーブ機器においては、ハードウェアでロジックを構成しパケットをすぐ隣に流すようにしています。モーターが動いている間や止めている間にロスが出てしまうことでデータに齟齬が出ないように、ある程度インテリジェントな処理が必要になります。

─そこを司っているのが通信ボードなのですね。

EtherCAT通信のもう一つの特長として、フィードバック制御があります。一例として、CMOSカメラのモジュールに使われる半導体製造工場には前工程、後工程がありますが、この製造工程において、機器からフィードバックをもらうと生産効率が飛躍的に向上するメリットがあります。

つまり、製品を生産しつつ、リアルタイムで品質のトレンドカーブを描けるんです。モーター制御でモジュールを作った時にどういった形の電流波形でステージを制御しているとか、リモート運転をしているか等のフィードバックができます。そしてログデータを比べると前工程、例えば半導体であればいわゆるガス注入等ですが、その深さや温度データを取ると、後工程では必ず検査で落ちるというトレンドが出てきます。

前工程のこのタイミングの、この電流値が出てるからダメなんだと。リアルタイム処理の良いところは、前工程でのトレンドカーブを把握することで、後工程ではNGと事前に判断ができるということです。最終検査には歩留まりの良いものだけが残るので、基本的に100%に近いチップが取れる。工場全体の生産効率がUPし、結果として安くて品質の高い半導体製品を提供できるため、産業市場全体が潤うという大きな話になってきます。

─単純ですがやはり早さは大切ですね。

リアルタイム処理がボードで完結しているので、CPU負荷がほとんど0なんです。

─これは御社の特徴的な技術なのでしょうか?。

これまでのフィールドバスでのソリューション提供で培ってきた技術力と、新しいEtherCAT技術の良いところを集約したものとなります。

もうひとつの使用例では教習所などにあるドライブシミュレーターになります。ハンドルとアクセルからの入力をCPUで処理して、アクセルを踏み込んだら座席に押し付けられる感覚を再現したりするのですが、どうしてもタイムラグが出るんです。人間というのは非常に繊細なセンサーと言えるので、シミュレーター酔いをしてしまいます。そこで弊社のインテリジェント型EtherCATボードを適用することで、今までのハイエンドなCPUを搭載したサーバを使用しなくても、リアルタイム処理ができるシミュレーターが構築できたとお客様から伺っております。

─EtherCATが入るまで、ケーブルはもともと普通のLANなどでやっていたところが多いのでしょうか?

CANプロトコルを用いて制御されているケースが多いです。しかし、昨今データ数量が増加傾向にあるのと、施設設備のエコ化が検討されはじめ、基幹部分の通信をより良いものに替えてゆこうという風潮があります。

その場合に、今まで使用していたアプリケーションやエッジ側のセンサーを含めて全て新しいものに替えることは勇気のいることですので、当該部分は既存を使用し基幹部分をというのが理想形となります。これに上手くマッチしているのが、『EtherCAT』となります。

EtherCATは、プロファイルとしてCoE:CAN Over EtherCATが可能ですので、上位と下位層で使用していたCANプロトコル通信を扱うことができ、理想形にマッチしたソリューション提供が可能となります。 その他にも、機能安全(FSoE)、ファイルアクセス(FoE)等々もサポートしており、半導体製造装置ベンダーにはベストな産業イーサネット・プロトコルと言えます。

トヨタ自動車様が昨夏に「EtherCATを採用する」というプレスがベッコフ社から発表されて以来、市場でもさらに脚光を浴びており、弊社でもEtherCATのお問い合わせを頂く件数が増えてきております。

その中には、「そもそもEtherCATとは?」というお問い合わせも多くあり、弊社としては、当該部分をお客様にてクリアーにして頂く為に「EtherCAT評価キット」(EtherCATマスター+スレーブ+ソフトウェア込)をお手頃価格でご提供させて頂いております。手順書もご準備しておりますので、例えば1~10までステップごとに演習頂けたら、EtehrCAT通信を用いての通信手法・制御を体感頂けるようになっております。

また、当該評価キットをベースとして、お客様にてアプリケーションの改版や追加を簡単に出来るような工夫もしておりますので、EtherCAT通信が確立した評価環境をベースに実際のユースケースに近いところまで発展させて頂く事も可能です。

 
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こちらの動態デモは、実際の工場内を簡素化したモデルケースとなります。
EtherCATプロトコルでパナソニック社製ACサーボ・モーターの2軸同期制御、各社様のアナログ・デジタルセンサーをリアルタイム(数十から数百バイトのデータを250uSでサイクリック通信)制御を行っております。この部分がOT(Operational Technology)となります。

また、IT(Information Technology)の部分が、モーター駆動の電流センシングや機能安全(IoT)の制御となります。モーター制御時のサーボ電流をアナログ信号で取得し、デジタルに変更(ADC)し、その信号を弊社のIoTゲートウエイ(ReliaGATE 10-11)で集約し、クラウド(Everyware Cloud)にて蓄積、遠隔からデータの可視化を実施しております。

弊社で提供しておりますソリューションとしては、このITとOTを融合した IT&OT Synergy Platformとなります。

 
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─なるほど。今後のビジョンをお聞かせいただけますか。

IT,OTと分断されているイメージがまだまだ市場では見受けられますが、近い将来像として、ITとOTが融合した形になると考えます。その場合に、OTだけ、ITだけではトータル・ソリューション提供にはならず、お客様の困りコトを解決するのは難しくなります。

お客様の困りコトを弊社が提供するソリューションにてお客様を笑顔にする事を旗印に『IT&OT Synergy Platform』のソリューション構築に今後も力を注いでゆきたいと思います。その結果として、よりスマートな次世代産業における引き立て役のベンダーとなっていれば、最幸であると思っております。

 
 
後編となる、休まず働く工場のためのゲートウェイ/ Everywhere Cloud ─ユーロテックインタビューは1月25日(水)アップ予定

【関連リンク】
ユーロテック(EUROTECH)
アドバネット(Advanet)

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