テキサス・インスツルメンツ(TI)、ドライバー体験を豊かにする4つの技術トレンド

この記事は、アメリカの半導体開発・製造企業 テキサスインスツルメンツ社が2017年1月に発表したブログの翻訳である。

交通安全を推進する米国の非営利団体、AAA Foundation for Traffic Safetyの調査によると、米国成人ドライバーは一日当たり最大58分を車内で過ごすという。このため、ドライバーが通勤や渋滞に割く車内での時間をより楽しく過ごしたいと思うのは自然なことだ。自動車メーカーは、ドライバー体験を豊かにするために絶えず多くの機能を搭載している。ここでは、触覚的なフィードバック機能のあるタッチスクリーンや、ノブの代替品、スマートガラス、ドライバーへの通知アプリケーションなどの機能について紹介する。

ハプティック・タッチスクリーンを搭載

インフォテインメント用タッチスクリーンには、ボタンを正しく押したかどうかのフィードバックを触覚的に確認できる機能がないものもある。このハプティック・フィードバック機能を内蔵するスクリーンは、ドライバーがセンタースクリーンを見ている総時間を減らすことで、運転中の安全性を高めることができる。タブレットやスマートフォンに見られる一般的なハプティック・フィードバック機能は、まだ十分ではない。フィードバックの強度が、運転中に生じる道路やエンジンの振動に勝る必要があるからだ。

強いフィードバックを得る方法の一つがTIの「DRV251x-Q1」ソレノイド駆動ICファミリのようなソレノイド駆動ICと一つ以上のソレノイドを一緒に使うことであることを、多くのエンジニアは理解している。複数のソレノイドでフィードバック機能を提供することは、リニア共鳴アクチュエータ(LRA)や偏心回転質量(ERM)、圧電素子など代表的なアクチュエータを使うのとは違う。

8インチのインフォテインメント・スクリーンのような大きな質量の物体を押すソレノイドを駆動するためには、大電流の駆動能力を持つデバイスが必要だ。駆動ICの「DRV2511-Q1」は、ソレノイドを充電するのに必要なピーク電流が最大8Aまで供給できる。

図1は、15Vで代表的なソレノイドを駆動するのに必要な電流を示しているが、そのピーク電流は2A。動かす物体の重さにもよるが、ソレノイドは最大6A以上のピーク充電電流が求められる。

テキサス・インスツルメンツ(TI)、ドライバー体験を豊かにする4つの技術トレンド
図1 ソレノイドの加速グラフ(加速度)=5.85G/div、電流=2A/div、電圧=5V/div

ノブの代替

従来のノブを新しいハプティック対応デバイスに置き換えると、自動車メーカーはクルマのダッシュボードの寿命を延ばしながら、費用を節約することができる。TIはCESにおいて、ノブを構成する機械的な部品の代わりにハプティックなフィードバック機能を搭載できるデモを展示した。このソリューションもまた、ソレノイドとその駆動ICの「DRV251x-Q1」 ファミリを使っている。

TIは、容量式タッチセンサをノブのデザインに搭載して、ハプティック・ノブ用のフィードバック・ループ機能を完成させるリファレンス・デザインを開発している。ノブは固定されたままだが、ユーザーがノブの周りを指でスライドさせるにつれ、ソレノイドが起動し、シャープなクリック感を提供。このフィードバック機能のおかげで、機械式ノブと寸分変わらない印象になる。図2は、3Dプリンタで作った試作ノブの表面と裏面の様子。

テキサス・インスツルメンツ(TI)、ドライバー体験を豊かにする4つの技術トレンド
図2 3Dプリンタで作ったソレノイド・ノブ

スマートガラス

クルマのウィンドウの色の調整においても、技術革新が起きている。ガラス材料の進展と共に、電気の技術でもって、ウィンドウの色の調整が可能となった。高電圧ピエゾ・ドライバを使えば、ドライバーは時間帯や気分に合わせて、ガラスの色の濃さを調整できるようになる。「DRV2700」ピエゾ・ドライバは、USB電力レベルを供給しながら色付きのスマートガラスに必要な高電圧を出力する。

この「DRV2700」は、105Vpを出力する昇圧コンバータを集積し、静止時の電流は24mA。マイコンと併用すれば、「DRV2700」は明るい状態から暗い状態へ色を変えられるカスタム仕様のガラスを提供します(図3)。スマートガラスのこのアプリケーションは、ドライバーがカンカン照りの日にクルマを置いたままにした際に、フロントガラスを暗くしておくことができるようになる。

テキサス・インスツルメンツ(TI)、ドライバー体験を豊かにする4つの技術トレンド
図3 色を変えたガラスの比較画像

ドライバーへの通知機能

ドライバーへの通知機能も広く搭載されるようになった。これらの通知機能はハンドルや運転座席で見られ、ほかのクルマが死角に入った時や、予期せずレーンを越えた時にドライバーに警告する。通常、強力なERMが強い振動感のあるハプティック・フィードバックを生成する。「DRV2605L-Q1」は、ERMを駆動し、様々な効果を出す波形ライブラリを集積している。これにより、音や振動が次第に大きくなったり、断続的であったり、長さが異なったりといった、柔軟性に富んだ通知方法でドライバーに警告する。

TIのデモカー「EvoCar」(図4)では、座席とハンドルに搭載した様々な通知機能を紹介している。

テキサス・インスツルメンツ(TI)、ドライバー体験を豊かにする4つの技術トレンド
図4  TIのEvoCar

これまで4つの異なる特徴を述べてきたが、TIはドライバー体験に基づいて、より多くのことをドライバーが得られるように、開発を続けている。ノブの交換コストを下げたり、製品寿命を延ばしたり、あるいはドライバーのプライバシー保護を強化するためのスマートガラスの搭載など、新しい車載アプリケーションの設計のためのソリューションを提供している。

ソース、画像提供:Texas Instruments Blog

【関連リンク】
テキサス・インスツルメンツ(TI)
AAA Foundation for Traffic Safety

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日10-20本の新着ニュースを公開しております。 また、デジタル社会に必要な視点を養う、DIGITIDEという特集コンテンツも毎日投稿しております。

そこで、週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • DXに関する最新ニュース
  • 曜日代わりのデジタル社会の潮流を知る『DIGITIDE』
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なDX手法などDXノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録