総務省は、日本における戦略的な宇宙利用分野のイノベーションの創出をめざして、ICTを活用した宇宙利用のイノベーションがもたらす新たな社会像やその実現方策等を検討するため「宇宙×ICTに関する懇談会」第三回を1月25日に開催した。
背景
これまで政府主導で進められることがほとんどだった宇宙事業において、最近では民間企業の参入も見られるようになってきた。2016年10月に日本でも宇宙関連二法案(宇宙活動法及び衛星リモートセンシング法)が可決され、民間企業による衛星打ち上げや衛星から撮影したデータの商業利用などを行うための法整備が進められている。
また、日本政府による宇宙産業の活性化を目的とした、いわゆる「宇宙産業ビジョン」の検討が進められており、戦略的な宇宙利用分野のイノベーションの創出をめざし、ICTを活用した宇宙利用のイノベーションがもたらす新たな社会像やその実現方策等を検討するために本懇談会は実施されている。
IoTにおける通信衛星の役割
・海上の船舶や航空機などの地上系ネットワークでカバーできない場所に展開されたセンサーからのデータ収集
・地上系ネットワークでカバーできない場所に存在するドローンや航空機などへの制御信号伝送
・観測衛星からのデータ伝送
通信衛星を用いたIoTサービスの動向
現状のIoTサービスにおいて、地上系ネットワークと比較すると、衛星通信が果たしている役割は今は大きくないが、2025年には2015年の倍以上の市場規模になるという予測もある。また、商用分野では輸送や貨物での収益が伸びるとの予測がなされている。
現在の衛星経由のM2M/IoTサービスでは、L帯およびKu帯という周波数範囲を用いたシステムが主流となっている。
L帯でのIoTサービスの例としては、航海用電子海図、油田、鉄道、道路等のインフラ監視、スマートメーター、気象環境モニタリングなどがあげられる、Ku帯では航空機、コネクティッドカー、石油&ガスなどの主としてデータ伝送量が大きい分野で使用されている。
船舶のIoT化に関する国内外の取組
日本政府の取り組み
国土交通省は、海上ブロードバンド通信の発展を背景に、船舶・船舶機器のインターネット化(IoT)やビッグデータ解析を活用し、船舶の安全性向上を実現するために船舶・船舶機器やシステムの研究開発から導入までの促進を行っている。このための法的な枠組みを整備し、研究開発に関する計画の策定を支援(定額補助)するとともに、研究開発の実施を支援(補助率上限1/2)することにより、船舶の運航段階における生産性革命(i-Shipping)を目指している。
フィンランド政府の取り組み
フィンランド政府は、世界初の無人の船舶自動航行システムを実現と、2025年までに新たなビジネス・エコシステムの形成のための包括的プロジェクトを立ち上げを目指している。またその実現のために英国ロールスロイスやICT企業等、約60社と提携をしており、 運輸通信省が無人航行試験の海域調査や試験運行環境の提供などを担当し、フィンランド技術庁が自律的運航のエコシステムの発展に必要な技術革新プロジェクトへの資金提供を担当している。
今後の研究課題
・広範な海洋域に分散する電力リソースが少なく出力の弱い多数のセンサーからのデータ収集技術
・広範な海洋域・空域を対象とするU/Lで10Mbps以上のブロードバンド通信技術
・無人航空機(UAV)用衛星通信技術の制度化と国際標準化
・大容量になる衛星からの地球観測データ伝送技術
・惑星、小惑星帯を対象とした超遠距離通信技術
出典:「宇宙×ICTに関する懇談会(第3回)」を加工して作成
【関連リンク】
・総務省
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コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中