[第8回]オリンピックはIoTにとって起爆剤になるのか?

Wearable Techというイベントで、ビッグネームがそろう中、「ウェアラブルで日本は、何を発信するのか?」というテーマでのパネルディスカッションが行われた。

議論は、2020年東京オリンピックを控える今、ウェアラブルという枠にとらわれず、IoT全体をどう発信していくべきか?という内容にまで広がった。

【登壇者】

慶應義塾大学大学院 夏野剛 氏
ネットイヤーグループ 石黒不二代 氏
スポーツディレクター 室伏公治 氏
東京五輪組織委員会 舘剛司 氏
モデレーター 上路健介 氏
モデレーター 湯川鶴章 氏

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夏野剛
夏野剛氏

 

夏野氏は開口一番、「1年半前に同じWearable Techのイベントが開催された際、日本にとって、IoT(ウェアラブル)は、チャンスだと言っていた市場だが、時間がたった今振り返ると、ウェアラブルの世界ではアップルウォッチが話題になり市場を拡大したが、そこには、セイコーやカシオが名を連ねていないことを指摘、それは『日本のメーカーがモノはつくれるが、サービスが作れないからだ』」と結論付けた。

 

石黒不二代 氏
石黒不二代 氏

 

また、石黒氏は、「インターネットでは日本は世界に負けたけど、モノにインターネットが入ってくるということで期待をしているし、オリンピックというタイミングで日本のスポーツ界から発信していくということはできるのではないか」と続いた。

 

舘剛司 氏
舘剛司 氏

 

そんな中、五輪組織委員会の舘氏は、「スポーツのウェアラブル技術への期待、測定・収集、可視化・分析、競技者、観戦者といった情報の真ん中にスポーツ版ビッグデータが蓄積されてきている。このデータをどう活用していくかが重要だ」とした。

 

IoT時代のスポーツは、アスリート・コーチの周りに、科学者や医師・トレーナーがアスリートの状態をデータ分析してくれる。しかし、彼らはスポーツの専門家ではない。

 

そこで、その情報を「スポーツアナリスト」が二次的に分析してコーチやアスリートにアドバイスする。データは、メディア・コメンテーターやファン・観戦者が可視化された情報をもとに評価したり、楽しんだりすることができる、という考えを示した。

 

ウェアラブルに対する期待としては、日常をスポーツ(ゲーム)にもできることなど、まだこれからどんどんビジネスが生まれるのではないか。オリンピックを前に、パッケージとしての新しい価値を見せたい。とも述べた。

 

例えば、競技に関してはアスリートの個別データが分析され、マイナー選手であっても注目することができるということだという。

 

室伏公治 氏
室伏公治 氏

 

さらに、海外からの反応としては、オリンピックで日本では何がみれるんだろう?という期待があるはずだ。そんな中、国や東京都などが全体としてサービス設計をした上で、様々な店舗や施設に落ちていくような施策を実施することが重要だと論じられた。

そもそも都市をIoT化するのには、無料wifiの整備と、パスワードがなくても利用できる海外レベルの利用環境を整えることから始まるのではないか?というような根本的な話題も上った。

 

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2020年にむけて、こういう構想を持っていて、こんなすごい体験が待っているという説明がされ、それについてどう発信していくのか、こういう観点でも発信していった方がいいのではないか、という点が議論がされるものだと期待していたが、残念ながらそういう展開にはならなかった。

もう数年に迫ったオリンピック。この段階で、IoT化のビジョンが明確に示されず、ウェアラブル技術によって取得できた生体データをアスリートやコーチ、エンターテイメントで活用する、という話だけだったことが残念だった。

 

競技に関しては、360°カメラやドローンを駆使した、これまで見たことのない映像がみれ、街には曲がる液晶などを活用して、駅などの大きな壁一面に注目の試合がみれる、などイメージが湧く施策が紹介されたり、海外から来る観光客や日本のスポーツファンがスムーズに競技場間を移動できたり、スポーツだけでなく観光や買い物も楽しめるといった都市設計のビジョンもぜひ聞きたいと思った。

 

最初に議論が必要なのは、「なにが体験できるか?」であって、「どういう技術を使ってなにをするか?」ではない。それが、冒頭に夏野氏が述べていた、「日本はモノは作れるけど、サービスは作れない」ということの根本ではなかろうか?

 

スマートシティのモデル都市としての東京を印象付けるには格好のタイミングで、大きな都市基盤の改造も受け入れやすい状態であるにもかかわらず、ビッグピクチャーが描かれていないように感じられる今、日本国全体の有識者、IoT技術者を集めるでもして取り組まないと、もう間に合わないのではないかとすら感じた。

 

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