GSMAのLPWA、野生生物保護プロジェクトを支援、セント・アンドリューズ大学がアザラシ追跡用スマートタグを開発中

セント・アンドリューズ大学海洋哺乳類研究ユニット(SMRU)は、ゼニガタアザラシの動きを追跡・監視し、その個体数減少について調査するために、狭帯域IoT(NB-IoT)技術を利用したスマートテレメトリータグを開発中だ。NB-IoTは、GSMAのモバイルIoTイニシアチブが標準化した省電力広域(LPWA)技術で、気候変動を監視する上で役立つ海中データを収集して、新たに登場している“海のインターネット”で基礎的な役割を果たすことになるという。

SMRUが開発中の新しいセンサーは、アザラシに危害を加えることなく取り付けられ、位置や潜水深度といったアザラシの行動のほか、水温、塩分、そしてゆくゆくは水中音響など、詳細なデータを記録する。省電力機器や認可周波数帯でのネットワークは、より小型で負担の少ない、効率的な追跡タグを実現し、野生生物の追跡を飛躍的に向上することができるという。

SMRUは年内に、新しいNB-IoT対応海洋タグの試験運用を実施する予定。2016年にSMRUは機械間(M2M)技術を使い、スコットランドのオークニー諸島に生息するゼニガタアザラシから、分析用の情報を収集した。モバイルIoTネットワークは、モバイルのカバー範囲を拡大できる可能性を秘めており、内蔵機器モジュールが従来のセルラー技術に依存した機器と比べて、より長いバッテリー寿命を提供する。

またNB-IoT技術は、さまざまな統治機関の世界海洋データを整理・調整するユネスコのプログラム、全球海洋観測システム(GOOS)を支えるためにも利用できる。NB-IoTを、海洋の水温や塩分について情報収集を行う省電力センサーやデータ中継チャンネルといった手段で活用し、気候変動の監視で役立てることができる。

そのようにしてNB-IoTで収集したデータを、その他の海洋監視システムから得たデータと組み合わせて標準化し、世界の海洋に関する正確な情報を科学者や海洋学者に提供できる。また動物にスマートタグを取り付ければ、科学者はそうした動物の移動やダイビングの能力を利用して、遠く離れた海洋や深海部を調査できる。

セント・アンドリューズ大学海洋哺乳類研究ユニットのバーニー・マッコーネル博士は、次のように語っています。「NB-IoT技術は、私たちの研究の未来を担っています。M2M技術を使った、これまでの研究の成功を踏み台に、より詳しいデータをはるかに効率的に収集できるようになるからです。海洋・水生動物を含む多数の種が、危機に瀕しています。NB-IoTは、動物に関する情報をグローバルに伝送する上で理想的です。その情報は、世界中の野生生物保護の取り組みに情報を提供して役立つ、重要データを提供できます。」

スコットランド政府は、スコットランド東岸と北部諸島のアザラシが、過去10年間に70パーセント減少していることを受けて、生息数の深刻な減少の理由を調査するよう、SMRUに働きかけた。気候変動により、動物の生息環境が世界各地で影響を受けており、食物連鎖と生物多様性に支障をきたしている。まだ調査中だが、アザラシが減少している理由として、食糧不足、病気、ハイイロアザラシの侵略、シャチによる捕食、有害藻類ブルームによる中毒などが考えられるという。危機に瀕しているアザラシが、海のどこで捕食しているかを発見できれば、重要な手掛かりになる。

LPWAネットワークは、低データ転送速度で長いバッテリー駆動時間を必要とし、たいてい遠隔地で長期間にわたって無人で運用されるM2Mアプリケーション向けに設計されたIoT。産業資産の追跡、安全監視、水道/ガスの検針、スマートグリッド、都市駐車場、自動販売機、街灯など、幅広い用途で利用される。GSMAのモバイルIoTイニシアチブは、認可周波数帯でLPWAソリューションの商業提供を促進することを目的としている。

こうしたライセンス標準により、通信事業者は既存のモバイルネットワークのアップグレードにおいて、LTEネットワークではLTE-Mを使用して最適化を行いつつ、NB-IoTでは2Gと4Gの両帯域を利用できる。現在、世界のモバイル通信事業者、OEM、チップセット企業、モジュール企業、インフラ企業の30社から支持されている。GSMAのモバイルIoTイニシアチブは、世界の複数地域で試験運用を行い、今年後半には完全な商用ソリューションを提供するという。

【関連リンク】
セント・アンドリューズ大学(University of St Andrews)
GSMアソシエーション(GSMA)

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