ハードウェア製造大国・台湾政府と協業、アジアから世界を狙う日本のIoTスタートアップ -ハタプロ 伊澤 CEO インタビュー 

株式会社ハタプロは2010年に設立し、日本と台湾の2拠点で活躍しているハードウェアのスタートアップ。

主な事業内容は、IoTプロダクトの自社開発と受託開発、ソフトウェア・ハードウェア両方に詳しくなれるIoT人材を育成する講座も開催しており、さらに、ハードウェアに強い台湾政府の経済産業省公認のインターナショナルパートナーとしても活動している。

スタートアップ企業がハードウェアに乗り出すのは、なかなかハードルが高いと思われがちなのだが、今回はそれを実行している株式会社ハタプロCEO伊澤さんにモノづくりを進めていくうえでの「ホントのところ」を伺った。

 

もともとはWebメディアの会社からスタートした

株式会社ハタプロ 代表取締役CEO
株式会社ハタプロ 代表取締役CEO

 

-会社をスタートしたきっかけを教えてください。

5年前にWebメディアを運営する会社としてスタートしたのですが、そのメディア事業を売却したあと、学生向けのキャリア教育事業や、メディア運営で培ったノウハウを活かして、アプリやウェブサイトの受託開発を行っていました。

ある時クライアントから「インターネットに繋がるハードウェアを作れないか?」という相談を受けたことや、学生向けに講座を展開する中で、モノづくりとの接点が増えたことから、今はウェアラブルやIoTをキーワードにモノづくりを行っています。

 

-開発したプロダクトはどのようなものがありますか?

最近の例でいうと、朝日新聞社さんから依頼いただき、フレキシブル電子ペーパー搭載バッグを開発しました。 ファッションアイテムに適したフレキシブルで電力消費が少なく薄型軽量の新しい電子ペーパーディスプレイを、バッグに組み込み、スマホで簡単にデザインを変えられるウェアラブルデバイスです。その他にも受託では、室内の状態を検知し清潔に保てるデフューザーなどの開発実績があります。

自社プロダクトは、クルマ×IoTに力を入れたいと考え、お守り型IoTデバイス「charm(チャーム)」と、健康寿命というものが重要になると考え「arc toco(アーク・トコ)」というプロダクトを開発しました。

「charm(チャーム)」は、高齢者の運転や体調の傾向をセンサーで検知してクラウドAIが自動で分析し、例えば「去年に比べると今年の方が危ない運転が多い」などの傾向を見守る側にアラートを飛ばしてくれます。「arc toco(アーク・トコ)」も同じように、親の毎日の活動量を自動で分析し、体調の変化を管理してくれるものです。

arc toco(アーク・トコ):IoT親孝行

 

-反響やその後の展開はいかがですか。

自分たちが思っていた以上に反響がありました。大手メーカーからも「良い意味で家電製品らしくないデバイスというのが斬新」というお話もいただきました。データを研究に使いたいという連絡もいくつかいただいております。またこれらの知見を活かして、中古車業界最大手のガリバー・インターナショナル社と一緒に、更にブラッシュアップしたクルマ×IoTプロダクトを開発します。

巨大な流通と販売網・ビッグデータを持つガリバーと手を組むことで、大きなマーケットを一気に攻められるようになるので、「charm(チャーム)」や「arc toco(アーク・トコ)」よりも幅広いターゲット層のポータル的な存在になる新しいデバイスを考えています。

既存の自動車の範囲にこだわりすぎず、センサーの塊である自動車を中心に「社会全体の“ライフスタイル”を変える」新たなIoTプロダクトを、年内に発表する予定です。日本に強みのある分野からイノベーションを起こし、日本発・世界へ広がるプロダクトを出していきたいと考えています。

ハタプロ×ガリバー

 
-御社にはもともとハードウェアのエンジニアが多くいたのでしょうか。

いえ、そういうわけではありません。Web制作の経験のみのエンジニアでも、電子回路の仕組みなど、構造を分解して勉強をしていくとWebに近いものはあるので、自分たちで電子工作レベルから始め、試作品を開発し、量産といった順で覚えていきました。

例えば、試作品の段階で必要な知識は、大きく分けて7つの項目があります。それは、1.電気の知識、2.部品の知識、3.道具の使い方、4.部品と道具の調達方法、5.プログラムの知識、6.PC環境の準備、7.ICへプログラムする知識なのですが、1つ1つ順を追って考えれば、覚えやすいです。

試作品の段階で必要な7つの知識
試作品の段階で必要な7つの知識

 

ICへプログラムする知識については、プロトタイプ制作の段階ではC言語ではなくても作ることができるものがありますが、製品版となるとまだまだC言語が主流です。

覚えることが多いようにも見えますが、基本的なことは1か月ほどで学べると思います。また、実際にモノを作るエンジニアでなくても、ディレクターなどモノづくりに関わるならば、コミュニケーションする人や企業が増えるので、知識は深堀りした方が、連携も取れ速度や無駄なコストも発生しないのでいいと思います。

 

IoTNEWS代表 小泉耕二
IoTNEWS代表 小泉耕二

 

足を使って、少しずつパートナー会社を増やしていった

 
-ハタプロさんでは基板の回路設計もされるのでしょうか。

基本的には自社で設計し、バッテリーなど専門性が高いものは0から作るのは非常に難しいので得意なパートナー企業にお願いしています。またディスプレイなどの部材は主に台湾から調達しています。

 
-パートナー会社はどうやって探していらっしゃいますか。

何か裏技があるわけではなく、とにかく足を使って探しまわっています。

大手企業の下請けなど、いい技術を持っている企業は地方にあることが多いので、立上げ当初はよく地方をまわっていました。泥臭いですが人に会いに行き、さらに紹介していただいてというのを繰り返しました。こんなにIoTが盛り上がる前の当時では、僕のようなバックグラウンドの違う人間が、モノづくりをやるというのが珍しかったようで、不思議がられたのですが、親身になってくださいました。

大きい会社でも、思い切って飛び込むと「今回はうちでは難しいけど、別の企業を紹介するよ」などと言って他社を紹介してくださいました。FacebookなどのSNSを利用していない方も多いので、直接あって信頼関係を得るために、事前準備はきちんと行い、フォローも電話やメールで行いました。

 
-実際の「モノ」を作るというのは、Web制作などと違って設計後は修正がかけにくいですし、頻繁に確認ができません。発注通りに仕上がっているのかなど不安なこともあると思うのですが、どうやって「この工場に発注しよう」と決めますか?

コミュニケーションをとる中で、どんな方だったり、どのくらい真剣に対応してくださる方だったりで考えます。そして、いいお付き合いをしていると「今回はどうしても」というムリに対して事情を理解して対応してくださいます。言葉にするとすごくチープになってしまうのですが、最初は大変でしたが人の繋がりが大事だと思っています。

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-台湾も同じでしょうか。

弊社の場合は特殊かもしれないのですが、台湾の経済産業省と工業技術研究院という国のハードウェアの産業を推進している大きい研究機関がパートナーになっているので、「工業技術研究院の紹介できました」というと話を聞いてくれやすく、どちらかというと日本より台湾の方が開拓しやすい状況です。台湾はハードウェア大国ということもあり、技術も進んでいるので情報を得るのにも適しています。

 
-お墨付きがあるというわけですね。しばらく景気が悪かったので、工場も少し手があいて対応しれくれるのかもしれません。今、日本の工場はチャンスかもしれませんね。

ところで、台湾の政府の方々とのきっかけはどのようにして作られたのですか。

きっかけは3~4年前なのですが、以前行っていたWebメディア関連について台湾で記者会見を開いた時に、台湾政府の方がたまたま来てくださり知り合いました。その後、彼らから「台湾の起業家育成の戦略を立てるために、日本の起業家の取材をしたいのでアテンドしてほしい」という依頼があり、丁寧に対応をしました。

それが評価されたのか、信頼が積み重なっていったという流れです。台湾も日本も一人ひとり誠実に対応していると信頼を得ることができ、土台ができてきます。

 
-言語は英語でしょうか。

はい、政府の方々とのコミュニケーションは英語です。しかし、台湾の地方に行くと英語が通じないことが多いので、中国語ができるスタッフも雇っていますし、僕や他のスタッフも中国語を話せるようにスクールに通うなどして日々勉強しています。

 
-足を運んで誰かのために一生懸命動くことは、結果だけ見ると「そうだよね」となりがちですが、実際にやろうとすると大変だと思います。

テクニックなどはないのですが、地道にやることをやっていくのが大事だと思っています。

モノづくりはチームワークが重要なので、IoTというのは根が真面目な日本人に向いているのではないかと思います。インターネットの世界はどちらかというとテクニックに走りがちでしたが、モノづくりとなると日本人の根が真面目という点が活かしやすいと思っています。

 

IoTハードウェアの製造プロセスは、23ステップ

台湾政府と繋がりを持つIoTハードウェアスタートアップ 株式会社ハタプロ 伊澤CEO インタビュー

 

-御社のような会社がどんどん出てきて、みんなで協力しながら大きくなって、日本を代表する大手メーカーになってほしいなと思います。次に、実際の製造のプロセスを教えていただけますか。

大きく分けると、プロトタイプ開発期間と量産期間の2つがあり、細かく分けると製品化までは23ステップあります。この流れについては、色々な方に教えていただいたり本を読んだり、実際に開発している中で身につけました。なるべく早く作れる体制ができるように、といつも考えています。

 
-趣味で活動している方々は、販売されている基板を購入し、本やネットを読みながら開発してることが多いと聞きました。趣味で開発するという世界から、工業的なプロトタイプの生産の間には何があると思われていますか。

 

設計の思想が違うと思います。量産を見据えたプロトタイプ製造の時は「これがいかにユーザーに受け入れられるか」「技術的なハードルや改良点を見つけ出す」という検証をするためのものなので、いかに早く作るかという点が重要になります。

量産時はコストの問題もあり、試作で作ったものをそのまま量産することはあまりなく、安くて性能の良い小型な部材を調達する必要があります。そして、不良品をいかに減らすか、長く使えるか、という点を重視する必要があります。

 
-ある程度色々なことができる基板と、0から作る基板ですとどちらの方がコストは抑えられますか?

場合によります。弊社の場合ですと、他で多めに調達した基板を利用することもありますが、基本的には専用に回路設計をして組み込んでいく流れです。またアッセンブリの工程では別の工場にお願いする場合もあります。

 

-長い道のりでつまずくところはありますか?

最近は特につまずかないのですが、最初の頃は試作で作ったものがそのまま量産できると思っていたらそうではなかったので、つまずきました。最近ではパートナー企業も増えてきて、例えばバッテリーだとどこの会社さんがよいなどがわかってきたので、スムーズになってきました。以前はIoT製造についてはなんでも受けていたのですが、最近では特化した部分にシフトしてきています。

 
-耐久テストや認可の申請はどうしていますか?

技適のプロなども仲間にいますが、場合によっては専門家に頼んでいます。それぞれの得意分野を分けてモノづくりをしています。

 
-これから「IoTの道へ進みたい」という方にメッセージをお願いします。

わからないなりになんとかもがいて動いてカタチにできました。大変ですが楽しいです。IoTというとハードルを高く感じてしまったりするかもしれませんが、ビジネスとして行うならば、ユーザー目線であったり、どう発展性を持たせていくのかなど、これまでのフレームワークと変わらないところも多いです。ぜひ一緒に次の時代を作っていきましょう。

 
-ありがとうございました。

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IoTの製品を世に送り出すには、企画から設計、プロトタイプ開発、量産、販売などと広範囲の仲間づくりが必須だ。

ハタプロの強みは、技術はもちろんのこと、人との繋がりを大事にしていくこと、地道に足を使って開拓していくということだと感じた。言うのは簡単だが、実際にやるのはとても大変だったことだろう。

趣味でIoTデバイスを作っている方々や、これからIoTスタートアップを立ち上げようとする方は、ぜひ量産までのプロセスを知ったうえで、世界にリリースしていってほしい。

 

【関連リンク】
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