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プリント基板の革命を起こしたP板.com 後藤COOインタビュー

IoTデバイスを作ろうと思ったら、まず基板が必要だ。

小型のボードコンピュータ「Raspberry Pi」などを活用し試作品を作ることも多いが、量産となると多くの場合はサイズやコスト面の問題から、基板をオリジナルで作る必要が出てくる。

今回は、プリント基板を低価格で販売している、株式会社ピーバンドットコムの取締役COO 後藤康進さんにお話を伺った。

 

左:株式会社ピーバンドットコムの取締役COO 後藤康進さん/右:IoTNEWS代表小泉耕二
左:株式会社ピーバンドットコムの取締役COO 後藤康進さん/右:IoTNEWS代表小泉耕二

-どういった背景でこの会社を立ち上げられたのでしょうか。

我々の経営スローガンに「開発環境をイノベーションする」というのがあります。エンジニアの開発環境をイノベーションするサービス、情報、ノウハウを発信していきたいという想いがあり、その一つがP板.comという、プリント基板をネットで安く買えるというサービスになります。
-2002年というと、モノづくりといってもまだ黎明期だったと思うのですが、さまざまな製造業の会社とお付き合いがあったのでしょうか。

もともとは、弊社代表がFA・金型部品をカタログ販売する「ミスミ」その社内ベンチャーで、半導体のネット通販をやっていた時期があったのですが、ミスミの代表が変わり、ベンチャー的な部署が廃止になりました。

そのあとに、代表はフリーランスで活動していたのですが、「これから基板のネット市場がくる」という調査をしていたのが、やめてしまうのはもったいないということで当時のメンバーと立ち上げたのが今の会社になります。

 

株式会社ピーバンドットコム取締役COO 後藤康進さん
株式会社ピーバンドットコム取締役COO 後藤康進さん

-このご時世になるのを予見して始められたのですね。

そうですね。現状はBtoBがメインで、9割は法人のお客様です。

-ビジネスドメインとしては、大量生産というよりは試作フェーズでのご対応をされているということでしょうか。

はい。お客様の1番のメリットは、プリント基板にかかる初期コストがかからないことです。製品へ最終的に組み込まれる基板は何回も試作を繰り返すものなので、そのたびにイニシャルコストがかかってしまうと、どんどん製品に費用が乗ってしまうという悩みがあり、弊社はそこに目をつけました。
-プリント基板のイニシャルコストがかからないのは、画期的だと思いますが、大丈夫なのでしょうか。

様々な意味での大丈夫ですか?というご質問だと思いますが(笑)、品質に問題はありません。

実際には「かからない」というわけではなく、お客様が求める基板の寸法と枚数を掛けた面積分が全体のイニシャル代から割り出され最適な一式価格として見積算出している、ということなのです。

 

IoTNEWS代表小泉耕二
IoTNEWS代表小泉耕二

-部品1個1個の値段ではなくて、面積なのですね。

はい。従来の「一つの案件に対して一つのイニシャル(基板製造に必要なフィルムや製版)を準備する」のではなく、”異種面付工法”によって他の案件同士を並べて(面付け)製造することで、イニシャルコストがかからない一式価格での料金体系を実現することが出来ました。

なお、案件ごとに回路は異なりますので、色々な基板をただ単純に並べてしまうので、すぐに品質不良を引き起こしてしまいます。それぞれの最小導体幅/間隙、残銅率、穴数、アニュアリング、レジスト、シルクなど様々な項目から、我々独自の品質ノウハウに基づき、より歩留まり向上と電気特性が最適となるように製造しています。

-結果的にコスト効率がよくなるということですね。BtoBですと、基板がどういうものかわかっている方を相手にお仕事されていると思います。一方で初心者向けの取り組みもされているようですが、どのようなことをやっていらっしゃるのでしょうか。

まさにそれは我々のスローガンであるエンジニアの皆さまの「開発環境をイノベーションする」に繋がります。単なる基板を提供するだけではなく、広く情報や技術ノウハウを配信してモノづくりする人たちを広げていきたいというのが根底にあります。

例えば、講師をお招きし技術セミナーや、電気CADの講習、基板設計ノウハウをご紹介する講習会などを定期開催したり、Facebookやメルマガ等でもそういったノウハウをオープンに配信しています。色々なきっかけでお客様のイノベーションにつなげていきたいと考えています。

また、エンジニアの方はCADや回路図で描いたものが、そのまま出来上がってくるというイメージをしがちなのですが、実際の基板製造では物理的な制約をかなり受けやすいのです。

例えば、プリント基板の導体パターンは、銅が一面に貼られた状態の板(銅張積層板)から不要な部分を溶かしていくことで形成されます。そこで、配線パターンを曲げる際、直角に設計されてしまうと、その箇所に銅を溶かすエッチング液が溜まってしまい、オーバーエッジング(パターン細り)や場合によっては使用中に断線してしまうなどの不良に繋がってしまいます。そのため、円弧や面取りで徐々に配線を曲げていくなどの工夫が必要となります。

そういった生の製造現場から出るノウハウは、これまで工場側で保持し、あまり出そうとはしませんでした。そこを我々はオープンにしていくことで市場全体が広がり、みんながモノづくりできるようになればいいかなと思っています。

 

プリント基板の革命を起こしたP板
-Webエンジニアがハードを作りたいと思った時に、ラズベリーパイなどある程度作られた基板を使うことが多いのですが、基板そのものを1から作るという発想にはなかなか至らないことも多いようです。

そこもけっこうテーマなのです。以前は「電子工作コンテスト」といって、秋葉原にいるギークな人たちを集めて電子工作のお披露目オフ会的なものを実施していました。最近はメイカーズ・革命のブームもあって、モノを作って市場に広めていきたいという人が多いので、そういう人の集まる場として「GUGEN(グゲン)」を立ち上げました。GUGENはモノを具現化するというところからきています。

今年で3年目になるのですが、昨年にはハッカソンがブームになっていて、我々もかなり取り入れました。モノを作りたい人が週末に集まって、その場でプロトタイプを作っていく、というアイデアが生まれる場の提供を積極的に実施してきました。

ただ実際には、芸術的な1点モノが作られることが多く、それを量産していくとなるとお手上げの状態で、弊社に「どうしたらいいですか」と相談がきます。しかもクラウドファンディングで資金を集めた後だったりするのですが、そこに対してどうすればいいかというのはなかなか難しいと感じています。

P板.comには現状3万人ほどのユーザー登録があるのですが、モノづくりができるエンジニアさんや、モノづくりをしたい人たちが集まっているので、そういう方たちをつなぐプラットフォームになれたらいいなと思っています。
-クラウドファンディングに出す前に、御社に相談するという流れができるといいですね。今後、IoTが広がっていく中で、御社が登場する機会が増えていくと思いますが、どういうポジションに行きたいというのはありますか。

モノづくりをしたい人たちの登竜門という場になっていければいいなと思います。基板というのは、開発環境をイノベーションするひとつの道具であって、他にも色々やっていきたいと思っています。

-本日はありがとうございました。

 

ソフトウェアと違い、ハードウェアを世に送り出すというのは、多くのステップがあり、知識がないとつまずいてしまうことも多い。IoTデバイスを量産したいと思った時には、まず相談してみよう。

【関連リンク】
P板.com
GUGEN

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