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クルマの情報を取得する「あとづけIoTデバイス」で自動車保険料が安くなる スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー

多くのスタートアップ企業は、IoTデバイスを作ったら「利用者に直接販売する」ことをまずイメージするだろう。

どういう店舗で販売してもらうのか、もしくはネット通販で販売するのかなど、販売チャネルを考えたりするかもしれない。しかし、既存企業の悩みを解決しつつIoTデバイスをキーとしてビジネスモデルを作りこむことで事業化を実現したサービスがある。

今回は、「後付IoTデバイスをクルマにつけるだけで、保険料が安くなる」、というビジネスモデルを実現する、SmartDriveというデバイスを開発した、株式会社スマートドライブCEOの北川烈さんにお話を伺った。

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
SmartDriveデバイス

 

SmartDriveは運転履歴や運転診断、ガソリン使用料がわかるIoTデバイスだが、北川CEOは「このデバイスだけではきっと、利用者は自分で購入しないだろう」という判断を早々に下した。これはきっとIoTに参入したい企業の参考になるだろう。

 

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
左:株式会社スマートドライブCEO北川烈さん/右:IoTNEWS代表小泉耕二

 

-御社はどういったサービスを展開しているのでしょうか。

今ほとんどの車には整備用のポートついているのですが、そこにシガーソケットみたいな穴がありまして、そこにつけるマッチ箱みたいな小さなデバイス「SmartDrive」の販売と、そこでデータを収集解析して、スマートフォンやWebで可視化するというサービスを展開しています。

-SDKも提供されているし、車検のようなサービスとしても可能ということで、ひとつの決まったサービスを考えられているというよりは、昔でいうITテレマティクスの情報をIoTによってクラウド化していこうとしているように見えます。

そもそもIoTやインダストリー4.0の本質というのは、こういうセンサーデータをクラウド化して、色んなサービスと連携する、コネクテッドにしていくものだと思っています。

車でいうと、購入したあとに一番お金がかかり、保険、整備、駐車場、ガソリンなど年間40万円ほどかかると言われています。また、保険でいうと、年齢、性別で保険料が決まってしまうし、車検は、乗ってようが乗っていまいが2年に1回だったり、無駄が多く個人に最適化されていないと思っていましたので、そこをまず最適化をしていくということをしています。

もう少し抽象的に見ていくと、車がインターネットに繋がるということは、人々の家と繋がって、家に近づいてくると、勝手にエアコンがつくということであったり、道路と通信をして道路状況を把握するなど、車以外と繋がるというのが、あるべき姿だと思うので、そこを我々がデータの収集と解析をするだけではなくて、色々なサービスをつけていったり、解析しやすい基盤として提供するというようなことを行っています。
データの収集、解析だけではなくて、サービス化というところにフォーカスしているのが、特徴です。

 

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
株式会社スマートドライブCEO北川烈さん

-消費者にメリットがあるサービスまで考えられているわけですね。

「安全に運転していると保険料が下がる」という保険というのが、一番わかりすいですし、年間7~10万円かかるものが数万円落ちるだけでも、大きなコストインパクトだと思います。

-サービスの着眼点が素晴らしいと思います。なぜこのサービスを始めようと思ったのでしょうか。

かなり前のお話になるのですが、きっかけは、私はもともと文系の学部だったのですが、海外の理系の大学へ留学していたとき、大きなカルチャーショックを受けたことです。本当の意味で、研究者のようにゼロイチで何かを生み出して20年後の世界を創るという人たちには勝てないな、と委縮した時がありました。

とはいっても彼らが働きやすい環境を作るとか、彼らが持ってきた世界観を早く持ってくるということはできるのではないかと。大きく変わっていく産業で、自分でしかできないことをやりたい、そして大きく変わっていく産業って何だろうと考えた時に、電気自動車、自動走行車、テレマティクス含め、自動車業界はこれからどんどん変わっていくだろう、と予想しました。

留学していたときの知人が、今テスラやGoogleで働いていて、自動走行車や電気自動車を作っているのですが、2年ほど前に実際に乗せてもらう機会がありまして、実際に乗ってみると「これは本当に未来だな」と腹落ちしました。自分の中で「こういう世界がくるんだな」というのがイメージできたのが一番大きいですね。

この事業をはじめたきっかけとしては、車というのは、スマホみたいにどんどんサイクルが新しくなっていくものではなく、平均で7.5年の買い替えサイクルがかかるものですので、急に自動走行車が世の中に登場しても、すぐ移るわけではなく、じわじわ移るということを考えると、直近は今ある車を賢くしていくアプローチが大事です。

そう考えていた時、海外で類似のサービスを作り始めているベンチャーが出始めていて、デバイスを消費者に販売していました。これを私が言うのもなんですが、数万円でデバイスを購入して自分の運転をみて楽しむという人は多くないのかなと思ったのです。

保険に入るとタダで送られてきてつけておくと保険料が安くなる、追加で自分の運転が見ることができたり、整備などのほかのサービスが受けられる、というのだと、爆発的に普及するのかなと思いこの事業がスタートしました。

-シリコンバレーに行って実際見てみると、未来は決して未来じゃないというのが感じられますよね。サービスがリアルなのがいいと思います。サービスインはこれからでしょうか。

はい、サービスインはこれからになります。保険自体が安くなるというのは来年以降ですが、データ自体はもう収集しているので、活用は進んでいます。今年中にもっと多くの方々に利用していただく予定です。

-このデバイスは軽いですよね。電源モジュールが入っていて通信するとなるともっと大きいものを想像していました。

 

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
SmartDriveデバイス

 

仕組みとしては一度、このデバイスに情報が溜まって、それがスマートフォンにBluetoothで飛んで、そこからクラウドに上がっています。最初にBluetoothのペアリングをしていただければ、あとはバックグランドで動きますので、スマホは持って乗るだけで大丈夫です。

これは8世代目なのですが、最初はもっと大きいものでした。このサイズになってからも、3回ほど中身を改善しており、企業努力を重ねています。

そして、中の基盤も、もともと2枚だったのですが、現状では1枚になっています。ここまでのものにするのには2年近くかかっています。細かい点でいうと、この製品の中にはGPSは入っておらず、スマホのGPSを使っています。通信モジュールもスマホのものを使っています。Gセンサーなどもスマホのものを使えるので、デバイス自体をかなり安く小さくできるということになっています。

時間でいうと、48時間分のドライブデータが溜まるようになっていて、スマホを1回くらい持ち忘れても問題なく次に乗った時にデータを収集するようになっています。48時間分は製品がデータを保持します。

-このデバイスはもっと小さくしていくのでしょうか。それともオールインワンにしていくのでしょうか。

この中でできることを増やすと、サーバーが軽くなります。今、サーバーの中でやっている学習を、SmartDriveデバイスの中でやってしまうということができるので、SmartDriveデバイスとクライアントであるiOSとクラウドを一気通貫で最適化していくという取り組みを、intelさんと進めており、今年の5月に東京ビックサイトにて共同で展示をさせて頂きました。

-SmartDriveは車のどこに設置するのでしょうか。

多くの車はハンドルの下になります。海外に車を輸出するときに、ガスの排出量などの把握が問題になっていて、正確に情報を取るためにポート部分は統一規格になっているので、だいたいどの車にもつけることができます。

ただ、メーカーによっては、細かい部分ではサポートされていないものもあります。そこは我々のノウハウで、1,000車種規模で実際の自動車に装着し 、解析して、この車からはこのようにやれば取れるという情報を集めている段階です。

 

 

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
IoTNEWS代表小泉耕二

-セキュリティ面についてはいかがでしょうか。

セキュリティ面についてはかなり気にしています。Amazonなどで検索すると中国製などの安価なデバイスが購入できて、そういうものですと車のハッキングなどの用途に使えるのですが、我々の場合は一切できないようにしています。

やはり、車が何かあると困るので、なんでもできるようにしてしまうと、危ない面もあるのでハードウェアの構造上制限してしまうなど、その他にもセキュリティには最善の注意を払っています。

-今後検討されているサービスはありますか。

我々は2つのドメインがありまして、保険など一般のお客様が使うところで、ここに関していうと保険以外にも整備だったり、ガソリンが減ってきた段階で近くのガソリンスタンドを通知するサービスだったり、お母さんが危ない運転をしていないか子どもがチェックするなどです。

この人はこのエリアに住んでいてゴルフ場にたくさん行っているから、ゴルフ場のクーポンを出してあげようとか、これだけ安全に運転している人だったら、買い替えの際に安くしてあげようとか、もう少し個人の属性に合わせたサービスができるのではないかと思っています。

もうひとつは、日本で走る車はトラックや営業車などの商用車が多く走っているので、そこは面白い領域かなと思っています。従業員の方がどういう働き方をしているかや、危険な運転をしていないかであったり、車を乗られる頻度が多いと思うので、故障する前に事前に把握してあげる、というようなサービスだったりを考えています。

少し先の話でいうと、ルートの最適化ということで、運送物流の最適化というところ、そこから集まってきたデータをオープン化して渋滞情報や、ここで急ブレーキが多いなどの情報を、ビッグデータにしていく、というコンシューマーとエンタープライズが2つ分かれて検討しています。

アクサ損害保険さんがが最初のパートナーとなり、今後もパートナー企業を増やしていく予定です。

 

IoTで車と保険業界に飛び込んだ、スマートドライブ CEO 北川氏インタビュー
-物流効率は大きな問題ですし、エネルギー資源も最適化されていきますね。

物流効率の最適化というところに貢献したいなと思いつつも、一社一社入っていってコンサル的に入って解決していくというのは、我々の事業ドメインではないので、コンサルタントの方が使うデータを安価に高精度なデータを集めて、解析しやすい形でお渡しするという、インフラの部分になれればいいなと思っていますので、協業していきたい領域です。

-本日はありがとうございました。

 

まとめ

  • スマートドライブは、後付IoTデバイスだが、単に消費者に売っても売れないのではないか?と考えたところを、クルマを買うと初めに必ず申し込む任意保険の流れの中で、利用者にもメリット(保険料が安くなる)のあるサービスモデルを作った
  • クルマの安全を考慮して、セキュリティ面に配慮している
  • クルマにドングルがつき、様々なデータをクラウドで集める中で、さらに付加価値の高いサービスを展開しようとしている
  • 個人向けの保険だけでなく、法人向けの保険サービスへの展開も視野にいれると、この装置は物流効率の最適化など法人向けのサービスも視野にいれている

モノを作ってみた、プロトタイプが好評だった、という域を超えて、実社会の中で使われるサービスのレベルまで持って行っているスマートドライブ社。

コネクテッド・カーの分野は、自動車企業も含め多くの企業がしのぎを削っているが、まだ通信仕様やセキュリティの担保に関して国際標準化が進んでいる途中でもある。そんななか、実用レベルのサービスをいち早く立ち上げ、実データを扱いながらこういった標準化への対応をすすめていけるというのは大きなアドバンテージだと思われる。

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