東京・品川にて開催されたAWS Summit Tokyo 2017 Day2に行われた旭硝子(AGC) 浅沼 勉氏による講演「クラウドで変わる。インフラ・データセンター・組織のありかた」についてレポートを行う。
旭硝子は建築用板ガラス・自動車用加工ガラスの世界シェア1位、1日に生産するガラスの面積はバチカン市国3つ分にもなるという世界最大手のガラス会社だ。
このような老舗ともいえる製造企業はクラウドへのシステム移行をどのように行い、企業内の部署の役割はどのように変わったのだろうか。
ネガティブな思想に基づいた標準化
旭硝子は基幹システムをAWS上に移行し、運用をしているが子会社や関連会社が10社以上存在し、部署によって利用しているシステムが違うということもあり、様々なシステムがAWS上に載っている。
そのため標準化を厳格に行わないと様々な仕様が入り乱れ、システム間の情報の互換性やセキュリティレベルが担保できないという問題が起こりうる。そして、文書などで守るべき仕様やシステム標準を定めたとしても、それが本当に守られるとは限らない。そういったある意味ネガティブともとれる考えの下、旭硝子では「ALCHEMY」という社内でのAWSシステム構築サービスを展開し、その上に自社の基幹システムを構築する形態を取っている。
AWSではなくALCHEMYとして運用
基本となるアカウント権限やセキュリティ設定などを各システムでできないように「ALCHEMY」1アカウントに集約を行っている。もし必要がある場合は社内のAWSインフラチームにEXCELファイルに所定の記述を行い申請を行う。
汎用性とクラウドの利点のトレードオフ
セキュリティに大きくかかわる部分の変更を行う場合にはEXCELファイルでの申請が必要であり浅沼氏が言うように「ダサい」方式をあえて取っている。ただしこの方式を取ることによって基本システムが変わることは無いため各システムの連携がとりやすく、AWSへのシステム移行が容易になり拡散性が向上している。
当然デメリットが無いわけではなく、AWSの使える機能に制約が出ることからAWSの機能は十全には使うことができず、最新のAWSサービスを即時にシステムに利用するといったことは難しくなっている。
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コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中