先日、「M2M/IoTカンファレンス」が御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された。
その中のセミナー、日本アイ・ビー・エム株式会社 アナリティクス事業部 テクニカル・リード 土屋 敦 氏の「IoTからいかにしてビジネス価値を生み出すか?- IoT 最新技術解説 -」によると、以前はユビキタスという言葉もあったように、IoTというのは全く新しいコンセプトではないが、IoTという考え方が再度フォーカスされるようになったのは、つながるモノが爆発的に増加していることをあげた。そして今、IoTをどうビジネスに生かすかと考えている人も多いとした。
コネクテッドカーや、スマートシティ、スマートホームなどがあるが、データを集めてどうするか。データの収集が目的ではなく、データを活用し有効活用するのが目的なのだが、データを集めただけで足踏みしているということが、実際に多くの現場で見受けられるという。
IBMサービスの活用事例として、パワーボートレースの例の紹介があった。Silver Fox社とIBMが共同開発したもので、リアルタイムでレース中のボートのデータを集め、即時にクラウドに吸い上げリアルタイムで解析し、エンジンの異常などをボートに乗っているレーサーに送り返して教えているという。
ノンエンジニアでも、簡単に利用できるBluemix
そして、複雑のようにも見えるかもしれないが、このようにIoTをはじめるハードルは高くないと続け、IBMのBluemixを活用すると、プログラミング、コーディングなどができないノンエンジニアのビジネス部門の人でも、簡単にドラッグ&ドロップで操作できる仕組みを提供している、とアピールした。
では、データを集めてくるセンサーデバイスはどうするか。市販されているラズベリーパイなどを購入すれば、温度や湿度、振動などが取れる。センサーデバイスがない場合は、スマホでも代用することができるという。次に、こういったデバイスから、すでに内包されているプロトコルがあるので、MQTTを利用し、クラウドに情報を乗せる。クラウドに乗せれば、APIを介し、可視化される、ということがハードル低くできるようになっている。
というように、ハッカソンなどでもすぐに作ることができるし、商用のシステムでも耐えうる構成になっているので、さきほどのパワーボートのように使うこともできる。
事例紹介
その他の事例として、サンフランシスコの鉄道会社「BART社」の運行管理のレガシーアプリケーションを現場の駅員等のためにBluemixでモバイル化。通常6か月かかるところを15日で完成したという。このアプリで、電車の位置情報や、気候情報をリアルタイムで収集し、モバイルアプリで配布している。センサーを利用しているものではないが、短時間でできるものとしての例であった。
さらに、今注目されているのは、ロケーション情報を活用してマーケティングに生かすことだという。
例として、今年のToul de France2015を挙げた。これは、自転車にGPSのセンサーをつけて、リアルタイムで選手がどこに走っていて、次の区間に何位でつきそうかという将来の予測をするものだ。
IBMは、リアルタイムの情報を集め、分析し予測する、というような仕組みはスポーツ以外にも取り組んでいる。カナダのオンタリオ工科大学のユースケースで、予定より早く生まれてきた赤ちゃんの染症による死亡率が高いことを軽減できないか、ということを研究している。
心電図、心拍数などをリアルタイムに集め、データベースに入れて、何時間後に分析をして医者が診るのでは遅いという。医療の分野は、入ってきたデータを分析して異常があればヒトが気づく前に、教えてあげたい。
赤ちゃんが感染症にかかっているかをどう分析するかというと、あらかじめ統計解析ソフトウェアでモデルを作り、リアルタイムに反映させることをやっているという。心拍数が統計的な平均値より下がったので「異常」とする単純な判断もあれば、より精度を高めるために、心拍数と酸素飽和度(SPO2)の相関関係が正常ではなくなった、ということを今入ってくるデータから判断して、相関がくずれた瞬間にリアルタイムにアラートをあげるという仕組みを作りこんでいる。
この仕組みで、通常ヒトが異常だと気付くより、最大24時間前に異変を検知し、死亡率を30%低減させる結果になったという。
この事例は、例えば、製造現場の故障予測にも応用することができる。考え方ひとつで色々なアイディアを実現できる。
Watson活用事例
IoTとWatsonの関係を繋ぐ事例も公開された。
IBMはテニスのウィンブルドンのデータ収集、分析、配信を担当し、今年もIBMがSlam Tracker(スラムトラッカー)と呼ばれるをシステムを構築している。
いわゆるテニスの試合のセカンドスクリーンのアプリケーションだ。具体的には、iPadに試合の状況はどうなってるかということをリアルタイムに送ってくれる。
スラムトラッカーでは、バーチャートがあり、それぞれのテニスプレーヤーの過去戦歴、勝率、内容を見て、こういう状況になれば、こちらの選手が優位になるだろう、などを予想していく。試合の時々の状況によって、どちらの選手が有利に進めているか可視化するもので、試合結果を予測するものではない。
裏側の具体的な動きは、例えば、センターコートにはボールをトラッキングするセンサー、スピードをはかるセンサーが入っており、サーブが入ったかどうかをリアルタイムで収集解析して、クラウドで分析をし、全世界のiPadアプリケーションに送っている。
Watsonに通じるのは、Watsonと試合のデータを組み合わせ、iPadを見ているユーザーがウィンブルドンのテニスに関する質問を投げると答える、という部分だ。Watsonに質問をすると、過去に起きた、もしくは今起きている統計的な知識の答えと、一般的な質問の答えをくれる。
例えば、なぜウィンブルドンの試合に出ている選手はみんな白いユニフォームを着ているのか、今出ている選手の平均スピードは、などを聞くとWatsonが教えてくれるという。
結論として、センサーでデータを集めて分析をしてアクションに繋げる、というのはどの業界においても考え方は同じだと締めくくった。
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