「経産省スマートファクトリー実証事業のご紹介」〜AIとPC制御により既設設備を活かす産業IoT ーIoT Conference 2017レポート⑤

ドイツ機械メーカーのTrumpf社の取り組み

機械メーカーであるドイツのTrumpf社は、顧客の予知保全サービスの要望に応じて、顧客のデータを収集し、OPCを使った予知保全用の仕組みの提供を始めている。

ショップフロアからゲートウェイを集め、ファイアウォール内でオフィスネットワークにデータを送信する。そこから社内で機器データを監視することもできるし、必要に応じてデータをクラウドにあげることが可能である。

予防保全を誰がやるかに関しては、ノウハウを持っている機器メーカーがやるのがもっと効率的だ。その場合、必要なデータを収集し、クラウドにあげるとともに、機械メーカーへのアクセス権を与える。

OPCで接続できたら、他社の機器にも予防保全サービスの提供が可能である。この同サービスは日本で今年中に展開される予定だ。

アップルストアのような産業用アプリケーションプラットフォーム AXOOM

Trumpfグループのスタートアップ企業、AXOOMはアップルストアのような産業用のアプリケーションストアをクラウドプラットホームの上で展開しており、現在20社の50種類ほどのアプリケーションを提供している。

例として、NCコンバーターがあげられた。NCプログラムは機械を動かすために必要なプログラムで、メーカーごとに方言があるため、他社のメーカーでそのままプログラムを使えないことが多い。そこで、同アプリを使えば、月々120ユーロ/サブスクリープションベースで様々な機器をコンバートできるようになるというものだ。

従来は、自社でモノを作るために、生産技術を高め、効率を高め、最終的に作ったものをマネタイズするという流れだった。しかし、現在はモノを売るだけではなくて、ノウハウそのものをパッケージ化して、AXOOMのようなプラットホーム上で売り出すことは「ノウハウの外販化」と言えるし、スマートファクトリー世界で大チャンスになるだろう。

その時に重要となるのは、暗黙知をどういうふうに 形式知にしていくかというところだ。

ここで川野氏が野中郁次郎氏の「知識創造スパイラル」という組織内のナレッジマネージメントモデルを紹介した。

製造業現場のナレッジマネージメントにおいて、一番重要なのは技能継承、現場の改善、技能そのものの向上や、設計のノウハウ、機械設定や調整という。ノウハウを継承し、高めていくのは現場の力である。

今まではノウハウを継承するには著しい時間がかかっていたが、IoTの世界でノウハウをきちんとセンシングとデータ化することによってコスト削減、機能の向上、見える化が実現される。

しかし、見える化だけが足りないため、因果関係そのものをモデル化する必要があり、相関関係を統計的・理論的にモデル化するためのプロセスが必要になる。限界コスト化など、いずれできなかったことが、高い演算能力やクラウドサービスのおかげで実現してきている。

この取り組みが成功すると、油のにおいの変化によって予防保全を行うアプリや、一発目から良品を製造できる設計アプリ、人によるティーチングの必要ないバラつみピッキングアプリの開発などが可能になる。

また、従来海外に工場を立ち上げる際、匠の技術者を現場に派遣しなければならなかったが、現在は立ち上げをリモートでサポートすることができるようになっている。

つまり、暗黙知をデジタル化するによって設備の有効活用も増え、人材の体系的な育成が可能になり、さらに現場を改善できるという。このサイクルは現在までどんな製造業の企業でも回してきたが、このサイクルを加速化させたいことに関して、深層学習と深層強化学習、つまり人工知能技術(AI)という技術が注目されているのだと述べた。

このような技術用途としては、素形材加工装置、産業ロボットなど、扱いそのものに匠の技能というものが求められる分野では無限の可能性があると川野氏は述べた。

次ページは、「経産省スマートファクトリー実証事業 駿河精機のスマートファクトリー事例」を紹介する

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