LoRaWAN, SIGFOX, NB-IoTなどの、LPWAの特性とビジネスへの可能性 -情報通信総合研究所 岸田氏インタビュー

ここ数年盛り上がりを見せている無線通信技術LPWA(Low Power Wide Area)。代表的なものに、SIGFOX、LoRa、NB-IoTなどがある。

現在では、スマートフォンの通信など電波利用技術の高度化や、通信の大容量化に伴い、5Gに代表される高い周波数帯域の期待が広がっている一方、それほどリッチな通信が必要ないIoT化の現場では、低消費電力・長距離・低コストの無線通信が求められており、その解決策としてLPWAが注目されている。

世界で広がっているSIGFOXやLoRaなどのLPWAを、日本で活用していくにはどうしたら良いか、株式会社 情報通信総合研究所 ICT基盤研究部 上席主任研究員 岸田 重行氏に話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

 
-岸田さんがやられていることを教えてください。

海外も含めモバイル通信周りの調査研究が専門です。普段はスマホ関連のサービスや技術全般を調べたり、関連企業向けのコンサルティングですとか、事業戦略分析なども求められます。

弊社は長く情報通信中心でやってきたので、他のシンクタンクやコンサルティングとは立ち位置が少し違います。もとは電電公社がNTTに民営化されるときに、その前身の組織が分かれて弊社が設立された、という経緯があります。もうずいぶん昔のことですが。

 
-グローバルの流れにも精通しなければいけないという使命もありますか?

そうですね。グローバルといっても、時代とともに求められる話が変わってきます。私が入った当時は、通信でサービスと言ったらだいたい電話ですから、話のほとんどは電話周りで、通信設備をどう増やすかなどの話をしていました。

その後10年以上経ち、時代はスマホになり、サービスも通信そのものだけではなく、レイヤーで言うと下になる通信方式から上になるアプリケーションまで全部、みたいな話で、最近ですと5Gの話も出てくれば、産業向けのIoTも出てきます。やっている中身はずいぶんと変わってきました。

LPWAを日本でどう活用していくべきか -情報通信総合研究所 岸田氏インタビュー
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右:株式会社 情報通信総合研究所 ICT基盤研究部 上席主任研究員 岸田 重行氏

 
-今、ご興味を持たれているのがLPWAだとお伺いしました。

LPWAっていうのは正直なところ、マーケティング用語だと思っています。技術的に新しいものでもなく、むしろ古いです。それが今、IoT時代になり色々な環境が整ってきて、そこにポッとLPWAというものが出てきたら、今までより色々なことができるようになるぞ、しかも安いらしいぞ、ということでみんな使いたいよね、という話です。

 
-例えばスマートシティでしょうか。

スマートシティもそうでしょうね。センサーとクラウドをつなぐことで、見える化などができるようになってきて、多くの人がそれを便利だと気付いてきたということだと思います。

 
-昔の技術をベースにしているけど時代には合っている、という見方をしてもいいものなのでしょうか?

いいと思います。特に通信周り、ICT周りでは、通信ネットワークが新しいから何かが流行る、ということではないと思っています。例えば、iモードはドコモがサービスを企画して作られたわけですが、そこで使われた無線パケットネットワークは、当時のドコモからすると「お荷物」な設備でした。

もちろん「将来はデータ通信の時代がくる」という開発陣の想いもあったでしょうし、そのための技術であったわけですが、実際にはサービスが提供されても、一般ユーザーには高くて使えませんでした。

ですが、iモード導入時にパケット料金を思い切って安くして、それを一つの軸にしてサービスが設計されていきました。もともと使われずに余っていたお荷物なネットワークが、iモード時代には花形になったのです。

今のLPWAは、昔のポケベルみたいなものです。サービスとしては、ポケベルはもう終わっています。「もう誰も使っていないけど、ポケベルのネットワーク技術を持ってきたら、何かIoTができるのではないか」という話ですから、ネットワークの新技術が何か新しいものをけん引するという話に対しては、「そんなことばかりでもないでしょう」という見解です。

 
-ポケベル時代のあのころは、技術的にもそうですが、特殊な認可を持っている人しか使えませんでした。それが今は認可なしでも使えるようになってきていて、帯域が決まっているにしても、そこの帯域で自由にネットワークが組めるということが起きるとは思ってもみませんでした。

商用の通信サービスでは事業免許と周波数免許がセットになったようなものでしたが、一方で、周波数帯域には免許帯域と免許不要帯域があります。免許不要帯域が設定されたわけですが、これはもともとは実験用です。「ISM帯」と言いますが、「Industrial, Scientific, and Medical」のことです。それぞれの試験用・実験用に、帯域を限って免許不要としたわけです。

Wi-Fiなどもそうですが、もとは試験用・実験用から入っていて、「みんなで使っていいですよ」という帯域をどんどん商用に使っている感じです。

LPWAを日本でどう活用していくべきか -情報通信総合研究所 岸田氏インタビュー
株式会社 情報通信総合研究所 ICT基盤研究部 上席主任研究員 岸田 重行氏

 
-もともとはそうじゃなかったのですね。

そうですね。例えば、電子レンジにISM帯が使われています。商品の機能の一つですよね。Wi-Fiは、スマホに搭載されたことですごく使われるようになりました。免許不要帯域のニーズがグッと広がったわけです。LPWAもその流れの中の一つだと思います。

 
-Wi-Fiを例にすると確かにわかりやすいですね。Wi-Fiは認可を取得して家の中に引いているわけではありません。

好きに使ってください、ですよね。それを商売にしましょうとか、そこで全国にネットワークを作りましょうというのは、使う側の知恵や想いとして広がってきたものです。

色々な人があれやこれやとやって、いいもの、新しいものが出てきて、その中にいくつか普及するものが出てきて、世の中がどんどん便利になるという良い流れの一つです。

次ページ:LPWAのユースケース

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